水川青話 by Yuko Kato

時事ネタやエンタテインメントなどの話題を。タイトルは勝海舟の「氷川清話」のもじりです。

コービー裁判、検察が訴え取り下げ コービーは謝罪

2004-09-02 13:07:09 | ニュースあれこれ
おおおお。原告が民事提訴した時から、こんなことになるんじゃないかって気配はちらほらあったけど、やっぱり……。

NBAロサンゼルス・レイカーズのスーパースター、コービー・ブライアントが去年、ひざの故障の治療のため訪れていたコロラドのホテルで当時19歳の女性従業員を暴行したとして、強姦罪で訴えられていた、あの件のこと。

CNNによると、コロラド州イーグル郡裁判所で緊急に開かれた公判で1日、検察は「原告がもうこれ以上は続けられないと話している、それのみを理由に、本件公訴を取り下げる」と宣言。長らくブライアント被告だったコービーは、これで刑事罰には問われないことになった。

結局、コービーが彼女を強姦したのかは、刑法的にはうやむやに。

でもコービー側の弁護人は(本人は欠席)、「彼女に謝りたい」とするコービーのコメントを読み上げた。ちょっと興味深いので、長いけどほぼ全訳。

コービーいわく。「この件に関わった女性に、直接謝りたい。あの夜の自分の行動と、それによって彼女が過去1年間苦しめられてきた結果について、彼女に謝りたい。この1年は自分自身にとって非常に困難なものだったが、彼女が堪えなくてはならなかった苦しみはどれほどのものだったか、想像するしかできない。

「さらに、彼女の両親や家族、ならびに私の家族や友人、支援してくれる人たち、そしてコロラド・イーグルの市民の皆さんに、謝りたい。

「明確にしておきたいのは、私は彼女の動機を疑っていないということだ。彼女に金銭は支払っていない。彼女は、私のこの声明を民事裁判において、私に不利な証拠として使用しないと、約束してくれた。

「二人の間に起きたことは同意のもとでのことだったと、私は心から信じているが、彼女は当時も今も、そうは思っていなかったことが、今となっては理解できる。

「何カ月にもわたって明かされてきた内容を検討し、彼女の弁護人や彼女本人が証言する内容を聞いて、彼女が本心から、あの出来事に同意していなかったと確信しているのだと、理解するよになった。

「この声明を発表した今、この件のある一面は終わりを迎えたが、別の側面がまだ残っていると充分に承知している。私を訴える民事訴訟が続行するのは、理解している。この件のその側面は、当事者同士が直接に決着させることであって、コロラド州の人々をこれ以上、財政的にも心理的にも圧迫することはない」



………………なるほど。つまり、見解の相違ってことですね。「え、いやがってたの? いいって言ったと思ったのに」ってことすか……。

女性が「ノー」と言った時点で強姦が成立するって判例がどっかにあったような気がするけど、本件の被害女性は「ノー」と言ったんでしょうか。

もし被害女性のこれまでの証言が本当なら、コービーは抵抗する女性を椅子だかベッドだかにうつぶせに押さえつけて、首を両手で絞めながら、ことを致したそうな。もしそれが、会ったばかりのゆきずりの相手と「合意のもとで」セックスする形としてアリなんだとしたら……なんだか貧しいセックス観だよな……。

…………なんだかなあ…………。

コービーが今後もプレーし続けるってのは、それはもちろん、とても嬉しいことなんだけど。女性としては…………なんだかなあ…………です。

この件で、(その性行為を強要されたって直接的な被害以外にも)彼女はすさまじいいわゆるセカンド・レイプにあってるわけで。ネットに個人情報をがんがんさらされただけじゃなく、裁判所側が(誤って、だそうだ)彼女の個人情報を公式サイトに載せちゃったり、事件直後の診察記録を病院が(誤って、だそうだ)コービー側の弁護士に渡しちゃったり。そして弁護側は、彼女が性的にふしだらな人物で、コービーとの一件の直前直後にも複数の男性と関係していたって、法廷で立証する方針だったし。さらに彼女に、薬物摂取が原因の自殺未遂歴があるってことも、法廷で使う方針で(しかも、それがこうやって私が知ってるぐらいに、事前に情報として漏れてるし)。ともかく、彼女からしたら(仮に万が一、そもそもコービーの部屋に入った時点でなんらかの思いがあったとしても)、かなり踏んだり蹴ったりな1年間だったと思う。

裁判所に対する不信感を主張していた原告側が、民事提訴に踏み切ったのは8月10日。刑事訴訟が進行中の民事提訴はきわめて珍しいので、この時点ですでに、刑事の訴えは取り下げるんじゃないかと取りざたされていた。

そして、その通りになったわけだ。

ともかく、コービーの年収は確か、30億円を下らないはず。訴訟にもちこむまでもなく、和解金として彼女が一生暮らせるだけの金額は、あっさり払えるはずだし、そうなるんだろうな。


実に高い、一晩の火遊び代だ。

作家とか俳優とか、表現者そのものはその表現(芸)と切り離して、作品のみを評価すると同じ。スーパー・アスリートも、その類い稀なるプレーと、本人の人間性は切り離して評価しなくてはならないってことか。あのマイケル・ジョーダンだって、現役中はほとんどいっさい女性関係のスキャンダルは表沙汰にならなかったけど、やっぱり引退したらぼこぼこ出てきたし。そういうのと無縁でいられるような立場や環境に、あの人たちはないってことなのか。

いやな理解だけど、世間に対してオトナになるって、こういうことかも。