水川青話 by Yuko Kato

時事ネタやエンタテインメントなどの話題を。タイトルは勝海舟の「氷川清話」のもじりです。

・ネタバレ満載 Sherlock S4 The Six Thatchers感想(1)

2017-01-09 01:49:42 | BBC「SHERLOCK」&Benedict Cumberbatch

 (ドラマの内容を何の遠慮もなくあけすけに、あからさまに書いてます)

 

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 いきなり各論から。

○ まずホームズ原作とのつながりで言うと、タイトルだけでなくメインプロットのかなりの部分が「六つのナポレオン」にちなんでいる。またこれは途中で気づいたんだけど、というか犬のトビーが出てくるのは撮影中から知ってたので早々に気づくべきだったんだけど、この「シャーロック」世界で「四つの署名」の物語は実はまだ終わっていない。なので、かなり「四つの署名」がらみのことが出てくる。あと最後で気づいてぐっとくるのが、「黄色い顔」とのつながり。

○ ちなみに「六つのナポレオン」というと、「暑い日にバターにパセリが沈み込んだ深さ」で事件を解決したという事件の話が出てきて、それはS3前の番外編「Many Happy Returns」の「被害者のアイスクリームコーンにチョコレートのかけらがどれだけ沈み込んだのか」の元ネタ。そして私のtwitter裏アカウントの名前「parsleyinbutter」もここから。

○ では冒頭から。青くて水の中で魚がうごめいている(そして何度も繰り返される)この映像が、いきなり なんとなく「スカイフォール」っぽい。そして作中あちこちで、海や魚のモチーフが繰り返される。

○ 公式映像の改ざんによって無罪放免になる前に、お偉いさんにお小言を言われる「凧みたいにハイ」なシャーロック。そのラリってるぷりは笑えるけど、政府記録がこうやって改ざんされるって、よく考えると怖い。まさにpost-truth。以下、このエピソードは2016年4月撮影開始なんだけど、2017年1月の今の世界状況(主にアメリカの政治状況)に呼応することがいろいろあって、なんとも言えない気持ちに(私がことさらそういうことに敏感になってるのは、紛れもないとはいえ)。

○ MI6の場面で私は、「お! Marcia Warrenだ!」といきなり驚き。イアン・マケレンとデレク・ジャコビのITV「Vicious」のペネロピー役で大好きな女優さんなので。

(そしてさらに役者蘊蓄を続けるなら、この部屋にいる5人とも、ローリーと共演もしくは同じ番組に出演してるんだよなー。Marcia WarrenはThe Long Walk to Finchleyで。Sir EdwinのSimon KunzはCount Arthur Strongで。Lindsay DuncanはThe Hollow CrownやBlack Mirror、Count Arthur Strongで。マークはThe First Men in the Moonで、そしてベネディクトは言うまでもなくThe Imitation Gameで。そんなせいもあって、Marcia Warrenを目にして、なんか無駄に期待をしてしまったんだけど、それはさておき)

○ 「Love」=Lady Smallwoodだとして、Antarctica、Langdale、Porlockは誰と誰と誰なんだろう。南極=マイクロフト、だと寒々しくて笑える。

 由来だけでいえば、Porlockは原作「恐怖の谷」に出てくるモリアーティの部下(「恐怖の谷」が今後大きく関わってくるのでは、とこの詳しいファンの方は主張しているなあ)。Langdaleは原作「三破風館」(Three Gables)に出てくる情報屋Langdale Pikeからかな。

○ ここでわざわざシャーロックが、“What’s your name?” と問いかけて、“…vi…  Vivian”と彼女に注目させる演出が、結果的には意味があったのね。

○ Quaversと言い、このginger nutsと言い、スナック好きなシャーロック。

○ 次々と事件の細切れが矢継ぎ早に飛び交う、毎度の前半の定番。原作とのリンクについてはこちらのtumblrアカウントがとても詳しい。

○ ヴィクター・ハザリーさんが親指を失うのはもちろん、原作「技師の親指」。

○ 「The Duplicate Men」についてホームズが「It’s never twins」と言ってるのは、「The Abominable Bride」とのリンク。

○「The Circus Torso」の由来は分からないけど、ディモック警部補がS1E2「The Blind Banker」以来、久々の登場。

○ 「The Canary Trainer」とは「ブラック・ピーター」に出てくる「語られない事件」のひとつで、「悪名高いカナリア調教師のウィルソン」のこと。

 さらに実は「The Canary Trainer」とは、ニコラス・マイヤーによるホームズ・パスティーシュの題。ニコラス・マイヤーとはスタトレ2と6の監督で、かつ(私の大好きな)ホームズもの「The Seven Percent Solution」の作者。モファティスが今まで、ニコラス・マイヤーや「Seven Percent~」に言及するのを私は見聞きしていないんだけど、「The Abominable Bride」はもしかするとあれが念頭に?と思うところがいろいろあったので、ちょっとにやり。

 

○「The Cardiac Arrest」の原作リンクは分からないけど、「cardiac arrest=心停止」という通常の意味に「arrest=逮捕」を引っ掛けた言葉遊びだと思う。

 ○ ジョンの「You can’t arrest a jellyfish!(クラゲは逮捕できないから!)」はおそらく、原作「獅子のたてがみ」なんでしょうね。そしてサセックスの海辺まで捜査に行ってたから、電波が悪くて59回の着信記録が……。

○ この車内の陣痛シーンが、まさか終盤の撃たれたあとの場面に呼応するなんて……。

○ ハドソンさん「私が撮るといつもちゃんと撮れないのよね」 モリー(失敗写真をなにげに削除)「またやってみましょう」

○ 「女の子の名前じゃないから!」はつまり、シャーロックはしつこく「シャーロック」を提案していたってこと?

○ このロージーちゃんのgodparents選びや洗礼式の様子から、「godmother」や「godfather」が決して「名付け親」の意味ではないっていうのが、よく分かるんじゃないかな。名前はあくまでもジョンとメアリーがつけてる。ジョンが説明してるように、親に万一の事があった場合に代わりに子供の面倒を見るのが、godparentの役割。

 だから終盤、ロージーをモリーが抱いてでてくるのも、godmotherだから、という部分もあるのかなと。

○ 「別の匂いを消す為にペンキを塗り直したんだ」は原作「隠居絵具師」。この少し後に出てくる「溺死したと思ったら肺から砂が」とか「サウナで凍死した女性」とか、チャーリー・ウェルズバラの死に方とか、なんか一貫して、偽装・目くらましが共通テーマのような気が……。考え過ぎか。

○ ホプキンス警部補が「the black pearl of the Borgias」盗難事件担当。これがまず「六つのナポレオン」へのリンク。そして実は今回のred herringだった。「モリアーティーも興味をもっていたようだ」とこのあとでマイクロフトが言うから、なおのこと。でも結局は見つからず。

○ 定番の「You see but you do not observe(君は見ているが観察していないんだよ)」を言う相手のワトソンが、そのワトソンだとはね。ジョンじゃなく「ワトソン」と呼びかけてるのが、ミソ。

○ バスの中の女性。これがベネディクトの「ハムレット」のオフィーリアだったシャーン・ブルックスなんだけど、髪型と、特にアイラインの引き方でこうも印象が違うとは。最初すぐには分からなかったよ。

 ちなみに降りたバス停の周りの様子が後半でよく見えて、Kennington Roadから後方にLambeth North Stationがはっきり見える。一方の「六つのナポレオン」では、像の小売店と2つ目の像が割られた医師宅が、ケニントン通りにある。ジョンが乗ってるバスは、そのケニントン通りを西に進む路線で、ジョンはLambeth North駅の前で降りる。

(さらにちなみに、このケニントンの辺りはローリーの地元なんだけど、それはまた別の話)

 「六つのナポレオン」にそうやって、テムズの南側が登場するので、今回このLambeth Northのほか、Southwark(サザーク)のTrinity Church Square、そして観光名所のBorough Market(バラ市場)と、主に観劇のためにあの界隈にいることの多い私にはなじみのある場所が次々と出てきて、とても楽しかった。

  トビーと一緒にバラ市場にたどりついた3人の後ろにはっきり映ってるトリュフ屋さん、よくお世話になります。

○ 221bでのシャーロック、ジョン、レストラードの3人の会話、テンポが小気味良くて、すごく好き。

○ みんなで訪れる最初の現場。サッチャー・ファンの保守党閣僚David Welsboroughを演じるチャールズ・エドワーズは、ダウントンのイーディスの相手のマイケル・グレグソン。出てくるって知らなかったので、「あ!」と。奥さん役のアマンダ・ルートも、(ローリー出演の)「Count Arthur Strong」に出ていた。なので、こうやって次々と英テレビドラマで見知った顔が出てくるから、ついつい期待がですね……。

○ 「受付がどれだけいろいろ気づいてるか知ったらびっくりするよ。なんでも知ってるからね」という、病院受付だったメアリーの言葉が、開始15分で早くも出てくる。

○ 「サッチャー」「首相」を知らないふりしてシャーロックが時間稼ぎしてると、すぐに見抜くジョン。S2E2の「バスカヴィル」でちゃんと、「マギー」て知ってたしね。

○ あるはずのものがない納まりの悪さが気になるシャーロックが言う、「By the pricking of my thumbs…」は、「マクベス」4幕1場の魔女の台詞。「By the pricking of my thumbs, something wicked this way comes」(親指がチクチクして教えてくれるよ、なにか邪悪な物がやってくるよ)と続く。

 この後の「君が直感を信じるのか?」「直感とは、意識が理解できないくらいデータを高速処理した時の現象だ」というやりとりは、私もそうだよなと思う。そしてこの後のマイクロフトに「premonition」(予感か?)と皮肉られ、「世界を覆う網のどこかが揺れたと察知することだ」と答えるのとも通じる。似たようなことは、原作のホームズもこのシャーロックも、随所で言ってる。

○ でもなんかこのチャーリーの死亡事件、タイミングが良すぎてひっかかる。本当に病死なのか?

○ それにしても、サッチャーの像が割られる映像がこうも出てくると、なんか親指がチクチクというか、なんかムズムズするな。現実政治にからめた意味合いを、私の脳が無理にみつけようとしてるというか。

○ 力仕事をしていたから片手が大きい人は、「赤毛連盟」のジェイベズ・ウィルソンさん。ホームズが自分について推理したのを、「なあんだ、何かうまいことやったのかと思ったけど、説明してもらえば、すごい簡単なことでしたね」と軽んじるので、ホームズがイラつくのは、グラナダ版のブレットさんも一緒。

 このウィルソンさんの日本人の元彼女が「Akako」。入れ墨はかすれててよく見えないけど、「あか子」?

 ちなみにこの場面、日本人のモトカノの話が出る前に風船の代わりに登場したジョンが、「ハドソンさんの数独を手伝ってたんだ」と言うあたりも、なんか日本テイスト。

○(18日追記) このあと「グロリア・スコット」を久々に読み返して気づいた。肘の内側に入れ墨があって、それを消そうとしたというのは、あの冒頭に出てくるトレヴァー父についての推理だった。相加、若干「日本」という言葉が出てくるエピソードなので、それで日本人の元彼女か。そしてそうか、この「グロリア・スコット」つながりだから、チビ・シャーロックは「海賊」になりたかったのか……(この点については「The Final Problem」の感想で書きます)。

○ ウィルソンさんに軽んじられてムカついたシャーロックが、超早口でまくしたてる陰謀話は、ある意味で原作「赤毛連盟」風。あれは、ウィルソンさんの質屋を足場に銀行の金庫を狙う話だった。

 そしてここでシャーロックが言う、「薬物でアメリカ大統領を意のままにして、対露先制攻撃を認める核拡散防止条約の改正について投票する国連総会をかく乱し、やがて第三次世界大戦を引き起こそうというモリアーティの陰謀」がでっちあげにしても、昨今の政治状況からしてシャレにならん。これは去年4月撮影なのにね。

○ ジョンが「idée fixe(強迫観念)」と、その表現を使って繰り返すのは原作どおり。

○ 上でも書いたけど、猟犬トビーが出てくるということはつまり、「四つの署名」はまだ終わっていない。

○ そして開始30分で「離婚には早すぎるかな」とジョン。これを初めとして、あれやこれやの場面や台詞が重たくてね。マーティンとアマンダが既に撮影時点で別れてると知った今となっては。

○ オーメンとエクソシストの違いにこだわるジョン。そういうところが君のこだわりポイントだったとは意外だ。anti-ChristとDevilが同じってことはあり得ないって、そう?

○ オーメン、エクソシストと来て、「E」さんの「Vampire」に続く。原作的には「サセックスの吸血鬼」というのもあったけど。

○ スーパーハッカー、クレイグ君の言う「Ostalgie、ostalgi」とは、Ost=東へのノスタルジー、つまり東独時代、共産主義時代を懐かしむという風潮。そして、サッチャーやレーガンをやたら英雄視する風潮というのは本当に奇妙なくらい、特にレーガンについては強くて、あの時代をよく覚えてる世代の人間としては昨今の共和党はいったいなんなんだと……(閑話休題)。

 で、ここで「サッチャーは今じゃナポレオンみたいで」と、「ナポレオン」という単語を放り込んだのは良かったね。

 ちなみに、原作のトビーはLambeth のPinchin LaneでMr Shermanに飼われてる。クレイグの後ろに「Pinchin Lane」の道路標識が。

 サッチャー像を作ったジョージア・トビリシのGelder Co.は、原作ではロンドン・イーストエンドのStepneyにある工房。

 サッチャー像を買ったのは、Welsborough、Hassan, Barnicot, Orrie Harker, レディングのJack Sandeford。ナポレオン像を買ったのは、Morse Hudson, Dr. Barnicot, Horace Harker, Josiah Brown, レディングのMr. Sandeford. 

 

○ 海と水のモチーフが繰り返されるレディングのサンドフォード邸のプール。やってくるAjayを演じるSacha Dhawan(サーシャ・ダワン)は「History Boys」の初代Aktharで、「The Lady in the Van」にも出演。BBC「The Mystery of Edwin Drood」ではローリーとも共演。

○ 「ボルジアの黒真珠」が出てくるのかと思いきや……A.G.R.A. 「四つの署名」はまだ終わってない。

○ モロッコ・マラケシュでAjayがメアリーを襲う場面で、裏切られて拷問されて云々と語ってる様子から、「あーこれって、(四つの署名の)ジョナサン・スモールだ!」と気づいた。あと「曲がった男」のヘンリー・ウッドもちょっと入ってる。「アレックスは拷問されて死んだ」、「背中を折られた音が今でも聞こえる」というので、「背中を折る」モチーフは入ってるし。

 メアリーが初めて「エイジェイ」と呼ぶのを聞いた時、「A.J.」、つまり「Jはジョナサン」かと思ったんだけど、Ajayなのね?

○ そしてAjayの部屋、アフガニスタンから帰還したばかりの当時のジョンの部屋に似てる……。 

○ トビリシのクーデターの場面。この大使の顔にものすごく見覚えがあって、冒頭から見知った役者さんが次々と出て来ていただけに、「誰だ、誰だ」とすごく気になって場面に集中できなかった。調べてびっくり! Blackadderファンなら知っている、Bobだ、Bob! Bobことケイトだ! ガブリエル・グライスターという女優さん。気づいて思わず興奮してしまった。

○ A.G.R.A.は、Alex(アレックス)、Gabriel(ゲイブリエル)、Rosamund(ロザムンド)、Ajay(エイジェイ)。

○ Redbeard再び。海賊帽をかぶった男の子の後ろを歩く、少し大きい男の子がマイクロフト? しかしこれは誰視点の記憶なんだ。

 ○ 繰り返し出てくる「死を逃れようとした男」の話。マイクロフトいわく、子供のシャーロックはサマラではなくスマトラへ逃げるように話を変えて、そこで海賊に……。ちなみに、ホームズ・ファンにとってスマトラと言えば「大ネズミ」なわけですが、来週に備えて「瀕死の探偵」を読み直して気づいた。悪役カルヴァートン・スミスはスマトラから病原菌を持ち帰って来たのね。

○ 機内で。メアリーがなぜユダヤ系アメリカ人のおばちゃんに変装したのかよく分からないなあ(あれは多分、典型的なユダヤ系おばちゃんの発音をわざとらしく真似してる)。しかも、ああやって変装して騒ぎを起こして入れ替わるって、何の為なのか。 

○ こちらによるとこの船名がノルウェー語で「まだらの紐」なのだそうです。

○ でも、まったくランダムにさいころ振って決めた行き先に、偽の身分証が隠してあったのか……。

○ ちなみに偽パスポートの名前、「Gabrielle」は、モファティスが大好きな「The Private Life of Sherlock Holmes」のアイリーン・アドラー的な女性キャラの名前。Ashdownは、その彼女とホームズが夫婦役を偽装した時に名乗る名前。

○ マラケシュで。メアリーが「What the ....!」と言うのをシャーロックが「子供がいるんだから」と遮って「F#$k」を言わせないのは、アメリカ放映など世界市場に配慮してのことでしょうなあ(笑)。UK放送だけだったら無問題だから。

○ マラケシュで。自分が「A.G.R.A.」の「R」で、名前は「Rosamund Mary」(ファーストネームとミドルネームかな)だとジョンに説明するメアリー。

 ずっと「メアリー」が好きだったからメアリーを名乗ったと言う「I always liked Mary」というその言葉に、ジョンが「Yeah, me too」と返すのが切ないダブルミーニング。「メアリーという名前が僕も好き」という元の意味に、「僕もメアリーが好きだった」という意味をかぶせてると思うので。

○ しつこいけど、「That’s what couples are supposed to do… work things through(カップルってそうするはずだろ。問題は話し合って解決するんじゃないのか)」っていうのが、役者2人が別れた後の撮影だと思うとなあ……。

○ そして実はジョンはこんなことしてました……のくだり。上で書いたように、降りたバス停はLambeth North駅の前。今は2月半ばまでエレベーター改修のため閉鎖中。バス停にはトビー・ジョーンズことCulverton Smithのポスター。「He’s backなんとかかんとか   It’s murderなんとかかんとか」って。

 ちなみにトビー・ジョーンズのお父さんフレディー・ジョーンズは、グラナダ版「ウィステリア荘」のInspector Baynes役だったと今回ちょっと調べて初めて知った。ついでに言えば、若き日のグランサム伯ことヒュー・ボネヴィルが、グラナダ版「瀕死の探偵」のヴィクター・ヤングだったと、これも今回初めて知った。

○ 秘密の合い言葉はAmmoなのか、Amoなのか。Amo=Loveで、Love=レイディ・スモールウッドで、上司のふりをしたヴィヴィアンが偽の指令を出して大使を殺させたと、そういうこと?  

○ 疑いをいっさい否認するLady Smallwoodを前にしたマイクロフト、こんなに「わからん……」って顔をするのは珍しい。

○ そしてヴォークソール橋から南岸へと走るシャーロック。MI6に走り込んで、ヴィヴィアンの居場所を聞いてマイクロフトに相談して、それで水族館に? 水族館は閉館5分前と言ってるから、あの時点で午後5時55分か。

○ シャーロック「But then I could never resist a touch of the dramatic」(でもどうしても少しドラマチックな演出をしたくなるんで)は、「海軍条約」(I never can resist a touch of the dramatic)より。 

○ 引退スパイがコーンウォールにちょっとしたコテージを手に入れるって、ル・カレを念頭においてない?

○ ジョンはタクシーから誰を呼んだの? レストラード? 

○ 「ウィグモア街の郵便局前の舗装をはがして工事している」「土が靴についている」云々は、「四つの署名」でホームズがワトソンに。

○ 「自分の方が周囲より遥かに優秀なのにずっと下に扱われてきたので復讐した」という動機のミステリーや事件、ドンピシャが思いつかないんだけど、ありそうだ。

○ ……このね……誰かをかばって代わりに撃たれるという、この強力なお約束が……。 

○ そしてジョンが怒りをいきなりシャーロックにぶつける理由、その心理はいろいろと分析・解釈はできるのだけど、とりあえず、シャーロックがヴィヴィアンを嘲笑して挑発する様子はジョンは見てないよね?

○ 3匹の猫はどうなったかな……。バーミーズ2匹とトーティ(さび)ちゃん。

○ カウンセラーのエラは、毎回オフィスが違う……。 

○ マイクロフトの冷蔵庫。周りの壁になぜ壁紙が貼っていないのかはともかく、「Reigate Square」のテイクアウト・メニューは「Reigate Squire」(ライゲートの地主)のもじり。その下にある「13th」の意味はわからず。

 けれども電話で呼び出したのが……「Sherrinford」って! 噂通り、いよいよ「3人目のホームズ兄弟」が出てくるの?  

 ちなみに「シェリンフォード」というのは、ドイルが「Sherlock」という名前にたどり着く前に候補としていた名前の一つで、後に有名な「ホームズ伝記」を書いたシャーロキアンのWilliam Baring-Gouldがその「伝記」で、3人兄弟の一番上ということにして以来、「兄弟説」がファンの間で定着したもの。

 S3「His Last Vow」の最後(今回の冒頭にも出てくる)でマイクロフトはこのシェリンフォードになにかひどいことをしたみたいな口ぶりだったけど、はてさて。

 

○ 221bでシャーロックがハドソンさんに、「Work is the best antidote to sorrow」(仕事こそ悲しみには一番の特効薬ですよ」と。これは「空き屋事件」でホームズがワトソンに言ったこと。ホームズの「空白期間」にワトソンがメアリーを亡くしたのではないかというのが通説。

 

○ ハドソンさんにシャーロック、「僕がちょっと思い上がり過ぎてるとか、ちょっと調子に乗りすぎてる、自信満々すぎると思ったら、ただ『ノーブリー』とだけ僕に言ってくれますか。そうしてくれると、とてもありがたい」というこの言葉は、「黄色い顔」で推理をすっかり間違ったホームズがワトソンに言う言葉が由来。原作では、これほど痛切な意味は伴っていない。ただし「黄色い顔」も、「自分の過去を隠して結婚した女性」の物語。 

 「六つのナポレオン」はともかく、「黄色い顔」がこんなに大事なモチーフになるとは知らなかったので、もうずっと長いこと読んでなかった。なので「Norbury」という固有名詞が最初に出て来たときに気づかなかったんだけど、何かはひっかかってた。この「なんかひっかかる」というのが、まさに「by the pricking of my thumbs」。シャーロックが言うintuition。自分のメモリの中で情報が完全には検索はできていないんだけど、何かがヒットしてpingってアラートが上がってる状態なんだよなあと、気がついたときにつくづく思った。

 

そしてこの「黄色い顔」を読み直して気づいたんだけど、大団円で夫が妻にかける「僕はとても良い男というわけではないけれども、エフィー、君が思っているよりは良い男なんだよ」(I am not a very good man, Effie, but I think that I am a better one than you have given me credit for being)という言葉、これこそ、マラケシュでジョンがメアリーに言う、「Mary, I may not be a very good man, but I think I’m a bit better than you give me credit for」(メアリー、僕はとても良い男じゃないかもしれないけど、君が思っているよりは少しはましなんだよ)」という言葉の原典。

 

「黄色い顔」での台詞はとても優しい言葉なんだけど、ジョンの言葉は「E」とのあれこれが裏にあって、もっと複雑(so many lies….)……。この切なさを引きずりつつ、「The Lying Detective」へGo!

 

 

(と、ここまで各論。総論的なことをこねくり回してるのはこちら