水川青話 by Yuko Kato

時事ネタやエンタテインメントなどの話題を。タイトルは勝海舟の「氷川清話」のもじりです。

・なかなかむつかしいのう 着物のTPO

2007-04-06 23:16:21 | きものばなし
最近はつとめて着物関係の雑誌を買わないようにしてます(キリがないので)。

しかし先日、「収納大作戦」という特集タイトルに心引かれて購入したキモノ雑誌がありました。これはもともと「浴衣を夏のおしゃれ着に!」とか「木綿の着物でおでかけ!」とか、そういう、まあ何て言うか、「若い」人向けのキモノ雑誌なので、今まで立ち読みすることはあっても、買うことはなく(おでかけ、と言っても色々だしね。まあとりあえず、木綿の着物で銀座や日本橋やお食事におでかけするのは、なかなか勇気のいることじゃわい)。

申し訳ないけど、女もそれなりの歳をとってくると、それなりの服装をしてないと、ただみっともないか、ただの物知らずかに見えてしまう――というのが、私の考え方なので。

で、お目当ての収納作戦特集は、なかなか参考になったので、買って良かったのですが。

もうひとつの晴れ着特集が、これまたなかなかに、オヤオヤだった。結婚式・披露宴・二次会っていう色々なシチュエーションに、どういう着物の組み合わせならOKか、という企画があって。「きものサロン」とか「美しいキモノ」とか「家庭画報」とかの正統派キモノ雑誌では絶対にありえないだろう、キモノTPOの王道から大きく外れた組み合わせをわざと。ホテルの披露宴に紋なし江戸小紋とか、名古屋帯とか、教会の式に塩瀬の染め帯とか、大柄の小紋とか。

キモノ着ない方には「???」と何がなにやらでしょうが、つまり正統派TPOからは、外れた組み合わせ。そういう組み合わせに、有名キモノスタイリストとか、キモノライターとか、有名着物店店長さんとかが、ひとつひとつ○・△・×をつけていくって企画なんですが。

…………悪いですが、私は全部に「×」つけました。和物のお稽古ごとしてる着物仲間も。いつもお世話になってる呉服屋さんも。

あの雑誌に登場した「ご意見番」のどの方よりも、私たちは着物TPOについては「うるさがた」だというのが判明してしまった。いやはや。

あの雑誌に載ってたような組み合わせで、例示されたシチュエーションに出席したら、必ず、私たちのような小姑みたいなのが、何も言わなくともチラっと目をやり、ハラの中でダメだししてることでしょう。やれやれ。

(ただし、どんなに王道TPOに外れてたとしても、その着ているものが、何らかの形で、新郎新婦にいわくがあるなら全く別の話です。新婦が菜の花が大好きなので、たっての頼みで、季節外れでも菜の花柄を着るとか。新郎が織物職人で、新郎が織ってくれた紬を訪問着にして着ていくとか、そういうのは、話の次元が全く違う)

では、TPOの王道を外れることの何がいけないのかと考えるに、自分が王道を外れていると承知した上であえて「これが私の個性!」と開き直るには、それなりの風格と押し出しの強さが必要なんですよ(有名なのが、「私は桜が好き!」だからと一年中、桜の柄を来ていた宇野千代さんですが)。そうでない人が、TPOを外れて着物を着てると、「この場にふさわしいものをもってないのね、あらまあ」という印象になってしまう。それでも20代までなら、「それでも着物を着てるだけでエライ!」と言ってもらえるけど、30代も半ばを過ぎてそれをやってると、「もってないし、教えてくれる人もいないのね」という感じが先に立ってしまう。

これだからオバサンは小言ばかりで……と言われてしまうのを承知で、でもせっかく着るならチャンと着た方がいいのに、と断言します。まして冠婚葬祭には。友達と遊びに行くだけなら好きなように楽しく着るのが一番だけどね。