アフリカからの難民流入で、再び欧州諸国が「パンク寸前」

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川口 マーン 惠美
 

難民ビジネスの実態

2015年、EUには、トルコ⇒ギリシャ⇒バルカン半島経由で、膨大な数の中東難民が入った(ドイツだけでも89万人)。翌16年、業を煮やしたバルカン半島の国々が次々と国境を閉鎖したため、このルートでやってくる中東難民は急激に減ったが、その代わりにアフリカ大陸から、大量のアフリカ難民が地中海を渡ってくるようになった。

アフリカ難民の多くはサハラ以南の出身で、信じられないような危険を冒してリビアに集結する。リビアは現在、EUを目指すアフリカ難民の巨大な中継地だ。ただし、ここからシチリアまでは300km以上あり、バルカンルートに比べると危険度は高い

難民の出帆地ではすでに何年も前より、難民から有り金を巻き上げては、EUへの入国の手引きをする国際的な犯罪組織が暗躍している。リビアは現在ほぼ無政府状態なので、犯罪組織にとっても難民にとっても、理想的な環境だ

難民は救命ベストをあてがわれ、モーター付の粗末なゴムボートで海に放り出される。もちろん、これで全航行ができるわけではない。リビアの領海を出た辺りで燃料切れとなる。そこで、持たされた衛星電話でSOSを出せば、誰かが助けに来てくれるという運びになっているらしい。

ただ、ボートが沈んだり、SOSが受信されなかったりすると、難民は遭難する。今年になってからの溺死者と行方不明者は、すでに5000人近いといわれている。しかし、いくら危険でもアフリカ難民のEUを目指すモチベーションにはブレーキが掛からない。当然、難民ビジネスも空前の好景気だ。

現在、リビア沖を警備しているのは、リビア海軍、EU諸国よりなるフロンテックス(欧州対外国境管理協力機関)などだが、実は犯罪組織だけでなく、国際NGOの存在も事態を複雑にしている。

犯罪組織とNGOの「連係プレー」

Welt.deのオンラインニュース(7月13日付)によれば、リビア沖には現在、9つのNGO組織に属する12隻の船舶が展開中。ちなみに、そのうち6隻はドイツのNGOだ。

https://www.welt.de/politik/deutschland/article162394787/Rettungseinsaetze-vor-Libyen-muessen-auf-den-Pruefstand.html

NGOの船は、これ以上溺死者が増えないよう、難民ボートが公海へ出たところで待ち受け、救助しては直接イタリアへ運んでいる。夜は難民が迷わないように、サーチライトを点けて誘導しているという(もう1隻やはりNGOの船がいるが、彼らは助けた難民をリビアに戻す)。

このNGOの活動のおかげで、現在、犯罪組織は安心してどんどん難民を送り出せるため、両者の「連係プレー」が難民増加をもたらす結果となっている。それどころか、彼らが実際に連絡を取り合っているという疑いまで浮上した。

ちなみに2016年、地中海ルートで到達したアフリカ難民の数は18万1000人という新記録を打ち立てたが(その90%がリビアから出発)、そのうち40%はNGOの船によって運ばれてきたという。去年から今年にかけては、真冬でさえ難民の数はそれほど減らなかった。

しかし、リビア当局とフロンテックスの方針では、リビア沖で保護した難民はリビアに戻すことになっている。つまり、NGOの活動は妨害行為に当たる。そのうえ、イタリア政府は増え続ける難民の対応に完全に行き詰まっており、EUの難民救助作戦からの離脱、さらには、NGO船に対する寄港許可の取り消しなども検討していると言われる。

ちなみに、現在、イタリア入港の正式許可を持っているのは、「国境なき医師団」とイギリスの老舗NGO「Save the Children」の船だけだそうだ。

しかし、もちろんNGOにはNGOの言い分がある。誰かが救助をしなければ、難民は溺死する。救助した難民をリビアに戻せば、彼らを待ち受けているのは収容所での虐待と拷問だ。そして、たとえそこから無事に抜け出せたとしても、リビアから国外追放されれば、故郷にたどり着くまでに砂漠のどこかで息絶える可能性が高い。

つまり、そういう悲劇を防ぐため、難民はEUに連れてこなければならない。NGOの活動家たちの多くは、難民全員にEUでの居住許可を与えるよう求めている。

列強による「新マーシャルプラン」

難民はすでにEUにとっての大脅威だ。しかも、今のところ、どんな手を使っても流入は止まらない。今年の初めから6月22日までにイタリアに上陸したアフリカ難民が7万19678人。その後も増え続けており、たった1日で7000名が運ばれてきた日さえあった。しかもリビアには、明日にでも海に漕ぎ出そうとチャンスを伺っている人たちが数十万はいると言われる。

そこで去年、困ったEUが編み出したのが、「アフリカ・マーシャルプラン」だ。選抜した幾つかのアフリカ諸国に資金援助を行い、EU企業の投資を促す。それにより現地の景気が向上すれば、人々が難民となって外国に出ていかなくてすむという理屈。

もっとも、それだけなら従来の開発援助とそれほど変わらないが、今回のプランの特色には、難民防止対策が組み込まれていることだ。つまり、援助を受ける国は、難民を出さないよう監視しなければならない。また、出て行った難民がどこかで保護された場合は、引き取る義務もある。それらの義務を怠るとEUからの資金は断たれる。

早い話、EUはアフリカ諸国に、EU国境防衛の一部を代行してもらう算段だ。この計画が、主にドイツの主導で進められている。

アフリカ諸国は人権などの制約が緩いため、EUより「効果的な」難民防止対策を取れる可能性は高い。これがうまくいけば、悲劇がEUの目の前で繰り広げられる機会は減るだろう。しかし、ローマ法王は7月7日、この計画について、「大国の間で難民に対する非常に危険な連合が形成されることを恐れている」と語った。

アフリカ大陸は地下資源が豊富だ。その他、さまざまな開発のポテンシャルも高い。すでに中国の進出が目覚しいが、それに比べてドイツ企業はかなり出遅れており、これから挽回を図りたいところだ。「アフリカ・マーシャルプラン」には、そんなドイツの期待も込められている。

しかし、アフリカに外国資本が投下されれば、外国企業は儲かるかもしれないが、すでに青息吐息の地場産業は決定的な打撃を被りかねない。

ドイツの左派党の議員は、「マーシャルプラン」は、アフリカの「水、通信、エネルギーの民営化計画を含む」と警告している。また、ハンブルクのシンクタンクであるGerman Institute of Global and Area Studiesも、投資という名の買収が住民の土地を奪う可能性を指摘した。

アフリカの人々の生活は貧しい。そして、その貧困は、過去の列強の過酷な支配に帰するところが大きい。かつての英仏はアフリカを暗黒大陸と呼び、好きなように切り分けた。本来なら、そんな歴史の事実を語らずして、アフリカの貧困、ひいては現在の難民問題を解決することは不可能ではないか。

なのに今、それは無視されたまま、アフリカ大陸はふたたび新たな列強の手で切り分けられようとしているようにさえ見える。

2050年、アフリカの人口は現在の2倍になるそうだ(ワシントンのPopulation Reference Bureauの発表)。アフリカ大陸の未来は明るくない。難民は今も地中海で漂っており、解決の目処はまったく見えない。

 
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