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アニメ映画「この世界の片隅に」本来アニメーションというものは、ひとりで全部作ることができるものです。

2016年12月11日 | 映画批評

本来アニメーションというものは、ひとりで全部作ることができるものです。
芸術系のアニメーションでは、ひとりで作成されたものがいっぱいあります


2016年12月11日 日曜日

戦前の広島の繁華街。実写ででは再現が難しい。「この世界の片隅に」より


「本来は、アニメは1人で作れるものです」 アニメーション映画「この世界の片隅に」片渕須直監督(後編) 12月9日 松浦晋也

すずさんは、そこで生きている

片渕:僕は、映画を観てくれる人にとって、すずさんという人が実際にそこにいたかのように感じられることが大切だと考えてこの映画を作りました。すずさんみたいな普通の人の上に、大量の爆弾が降ってくることがどれだけ恐ろしいか。すずさんという、ぼおっとしていて頼りなくて、そしておよそ戦闘的じゃない人の上に、爆弾が落ちてくる……。

 すずさんという人の実在感があって、はじめて当時起きていた戦争という事象のある側面――すずさんが体験する範囲内での戦争のありよう――を、映画を観ていただける方々に感じてもらえるのではないかと考えました。

実際に戦争を体験した方々は、どうしてもつらかったとか、痛かったとか、死にそうになったとか、周囲でどんどん死んでいったとか、強烈な記憶から語っていきますから、それら強烈な記憶の周囲にあった日常はなかなか語られることがないですよね。『戦争中の暮しの記録』(暮しの手帖社刊)という記念碑的な本がありますが、どんな服を着たとか、毎日何を食べたとか、どんなサイクルで生活していたかとかを、一次資料を積み上げて映画として再現したのは「この世界の片隅に」が初めてではないかと思います。

片渕記憶としてそんなに残らない、普通の日々の風景ですね。その日々の所作を描いてこそ、空襲の描写も体験として観てもらえるのではないかと考えたんです。

実際に呉の空襲を体験した方は、この映画にどのような感想を持ったのか、もう聞いていますか。

片渕:まだなんです。ただ、当時、大人として空襲を体験した方はもうほとんどいません。今ご存命で、映画の感想を述べることができる方は当時は子どもで、それだけ見えている世界が小さかったわけですから、どんな感想を持たれるかわからないところではありますね。

 子どもの頃に呉に住んでいた方が「あの当時の呉は本当にこうだったのよ」とつぶやかれたという話はツィッターで見ました。映画冒頭の広島・中島本町もそうなんですが、当たり前に子どもの頃に過ごしていた街の風景は、皆さんの記憶には残っているみたいですね。

 日常の生活の意味をもう一度思いだそうということで僕らはこういう映画の作り方をしたわけで、当時を体験した人に生活を思いだしてもらえたということは、大変うれしいことです。

冒頭の広島・中島本町のシーンでは、当時の理髪店の建物だけではなく、そこに住んでいた人達も登場させていますね。NHKがこのことを取り上げたので有名になりましたが。

片渕:濵井(はまい)理髪館ですね。広島には原爆戦没者慰霊施設というのがあって、原爆で亡くなった方の遺影を集めているんです。だから、中島本町のどこにどんな方がいて、どんな顔だったかが分かるんですよ。それを利用させてもらいました。実在していた方を登場させたからといって、そんなに労力をかけたわけではないです。でも、ちょっと自分達が行動すればそこに住んでおられた方のお顔が分かるのだから、その皆さんを描いたほうがいいと考えたんです。

大量生産のための分業を乗り越えて

ここからは、アニメーションの作り方や表現についてお聞きしたいと思います。片渕さんの経歴を拝見すると、脚本から撮影、編集、音響に至るまでアニメーション制作プロセスの一通りを職人的に経験した上で、監督という仕事をしておられるようです。このことは、ご自身の作品作りにどのように関係しているでしょうか。

片渕本来アニメーションというものは、ひとりで全部作ることができるものです。

 芸術系のアニメーションでは、ひとりで作成されたものがいっぱいあります。商業的に長尺のアニメを生産していくために、高度な分業が行われていますが、その場合は全体を見渡すポジションとして監督という職業が存在します。そもそも、映画の監督は、全体の作業に通暁していて、どの段階の作業であってもチェックして質を担保していく立場です。ですから、自分が全体を経験しているということは、特別なこととは思わないです。

 映画監督でも、例えばスティーブン・ソダーバーグは自分でカメラマンをやったりしています。米国の場合は、職能別の組合があってなかなか兼業できないようになっていますが、でも、これはチャップリンみたいに演技もできれば作曲もできるという人が出てくると、おかしなことになりますよね。自分は、兼業できるなら兼業してもいいじゃないかと考えています。

 今、アニメーションの世界もデジタル作業が増えてきていて、従来の分業のテリトリーがデジタル化によって変化しつつあるところです。彩色をやっている人も、撮影をやっている人も、同じパソコンで同じソフトを使っているというようなことが起きているんです。(後略)



(私のコメント)

最近はアニメ映画のヒット作が連発していますが、「君の名は。」や「声の形」や「この世界の片隅に」など、日本のアニメ映画は大豊作だ。特に「君の名は。」は興行収入が日本だけでも既に200億円を超えていますが、中国では1週間で50億円の興行収入を上げている。世界で総額はいくらくらいになるのだろうか?

最近になってアニメ映画が沢山作られるようになってきたのは、コンピュータソフトの進歩でアニメ映画が作りやすくなってきた事だ。新海誠監督はデビュー作は一人で制作したもので、もともとはゲームソフト会社でオープニングアニメを制作していた人だ。だから元々は映画畑の出身ではない。

日本のアニメの製作費は、せいぜい数億円であり非常に安く作れるのが特徴だ。人数をかけてもせいぜい100人程度の制作陣であり、作品のつどアニメーターなどが集められた。アニメーターと言えば低賃金労働の代名詞にもなっていますが、普通のサラリーマンの半分程度の収入しかならないと言われていました。

アニメ映画は、普通の映画に比べるとお子様向けのものであり、絵を動かすのだから大量の絵を描かねばならず、手間のかかるものだった。だから短編物がほとんどであり、アニメ作品も絵が粗雑であり2Dアニメだから大人の観賞にはあまり向かないものが多かった。テレビアニメなどは口がパクパク動くだけのアニメがほとんどだった。

ところが最近のアニメ映画は、実写と見分けがつかないほどの絵が綺麗になり緻密になっている。「君の名は。」などは実写の画面よりも綺麗な絵になっておりそれが話題を呼んでいる。これらはコンピューター作画ソフトの進歩によるものであり、非常に緻密な絵を簡単に描く事が出来るようになった。

日本のアニメ映画と言えば、スタジオジブリが有名であり、宮崎駿監督はヒット作を連発してきた。今まではアニメ映画と言えばアメリカのディズニーアニメが有名ですが、童話を主題にした子供向けのアニメ作品だった。それに対して日本のアニメで、特に宮崎駿監督の作品は大人の観賞にも耐えるものであり、いわゆる「アニメ映画」を変えてしまった。

コンピューターグラフィックの進歩は、現代では実写と見分けがつかないほどの緻密な絵を動かす事が出来るほどになり、実写映画でも一部は特殊撮影でCGが使われる事が多くなった。これも画像編集ソフトの進歩によるものであり、CGと実写とを組み合わせて映画を作る事も出来るようになった。

このような事からも大人の観賞にも耐えられるようなアニメ映画が作られるようになった要因でもあった。宮崎駿監督のアニメは手書きによるものですが、制作にはコンピュ-ターによる制作が本格化してきて、絵も非常に綺麗に出来るようになった。以前は絵を一枚一枚フイルムにコマ撮りしていた。

ディズニーアニメは、100億円から300億円もかけて一本のアニメ映画を作りますが、日本のアニメは一本が数億円で作られている。それでも興行収入が数億円無ければ赤字になるから、ディズニーのような訳にはいかない。新海監督のの前作の「言の葉の庭」でも1億5千万程度の興行収入だった。

ディズニーの『トイ・ストーリー3』『アナと雪の女王』などは世界で10億ドル(1000億円)もの売上であり、『ズートピア』も既に10億円を超えている。日本国内でも「アナ雪」は200億円を超えていますが、ディズニーアニメも大人の観賞にも耐える作品作りをするようになった。「君の名は。」も日本国内で200億円を超えたから、世界で1000億円を超えるだろうか?

そうなれば、日本のアニメ映画も大変革をもたらすだろう。しかし海外に日本アニメを映画を売り出すには、国境を越えなければならず文化の違いも大きい。宮崎アニメもアメリカではディズニーの圧力で本格上映されたとは言えない待遇を受けている。だからもっぱらDVDで観賞されている。

「君の名は。」も中国で公開されて1週間で50億円もの興行収入を上げましたが、儲けたのは中国の映画配給会社であり、上映興行権は3億円で買われたにすぎない。それだけ海外で収益を上げる事は難しい。DVDに至っては一枚10円以下で海賊版が売られている。

「この世界の片隅に」と言うアニメ映画は、私はまだ見ていないが、これもDVDになってからの観賞になるだろう。しかし予告編などをネットで見る事が出来るが、非常な名作らしい。このような名作が続々作られるようになったのは技術進歩によるものであり、実写映画に比べて安く作る事が出来る。

それで一発当てれば、国内で100億円とか世界で1000億円の興行収入が上げる事も珍しくなくなれば、アニメ映画は宝の山であり、「君の名は。」まさに映画製作の革命であり、映画会社にとってもアニメ映画はこれからの稼ぎ頭になるだろう。


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