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グローバルとローカルの経済圏を区別せずにその施策を考えて、日本経済は停滞してしまっていた。

2014年10月26日 | 経済

グローバルとローカルの経済圏を区別せずにその施策を考えて
いたため、格差問題が生じ、日本経済は停滞してしまっていた。


2014年10月26日 日曜日

なぜローカル経済から日本は甦るのか  富山和彦(著)

グローバルとローカルの経済圏を区別せずにその施策を考えていたため、格差問題が生じ、日本経済は停滞してしまっていた。
グローバル企業がいくら稼いでも、日本経済全体の占有率は3割にすぎない。雇用にいたっては、2割程度である。残り7割のローカル経済圏が復活してこそ、初めて成長軌道に乗ることができる。
内容例を挙げると、◎「GとL」を理解すれば格差問題の実相も見えてくる ◎日本のグローバルプレーヤーが長期的に後退してきた本当の理由 ◎大企業と中小企業ではなくグローバルとローカルで分ける ◎ほとんどの産業がローカル経済圏のプレーヤー ◎「コト」消費の時代の到来で「GもLも」戦略に追い風が吹き始めた等々
そして、今、労働市場で人類史上発の巨大なパラダイムシフトが起きている、と著者は主張する。GDPや企業の売上が緩やかに減少していく中で、極度の人手不足が起こっているのだ。
日本経済復活へのシナリオを明らかにする一冊。


(カスタマーレビュー)

ローカル市場では数年前から、「不況なのに人手が足りない」という従来型の経済学では説明することができない事態が起きている。
ローカル市場は公共性の高いサービス産業が多く、地域密着型であるため、景気に左右されにくく、比較的安定している。
その一方で新規参入が難しく、健全な競争がされにくいため、生産性が低くなりがちであり、賃金もあがりにくい。
ローカル経済の特徴を活かしながらも、競争原理を働かせるにはどうしたらよいか。
著者がリアルな現場の知見から導き出した処方箋には説得力があり、多くの指針を与えてくれる。
日本経済の「今」を知り、そして「何をなすべきか」を決断するために、全ての経済人に手にとって欲しい必読の書である。



人手不足対策の本丸は「何もしないこと」 10月26日 Wedge

編集部:最近、人手不足が話題になっていますが、冨山さんは近著『なぜローカル経済から日本は甦るのか』(PHP新書)のなかで「地方のサービス産業の労働市場においては、5年ほど前からこの傾向が表れていた」と書かれていますね。

冨山和彦:地方経済の現場では、売上高が前年比横ばいかマイナスであるにもかかわらず、人手が猛烈に足りないという現象が起きています。

 東京よりも地方のほうが高齢化と生産労働人口の減少が先に進んでいます。私ども経営共創基盤は100%出資の子会社として、東北・北関東地方のバス・タクシー会社を束ねるみちのりホールディングスの経営に携わっていますが、6、7年前からずっと運転士は足りません。でも、バスの乗客数の減少は止まってきています。軽自動車を運転していた人が年を取って公共交通機関に帰ってくるんですね。医療や介護でも似たことが起きています。小売でも、いま例えば東北地方で大型店舗をやろうとすると、最大の制約は店員確保です。

 バス会社は労働集約産業で、人の頭数で供給が決まります。一方で、お客さんは年少人口と老齢人口が中心。人はリタイヤしてから亡くなるまでに20年ほどありますから、この間はもっぱら消費人口として生きます。生産労働人口は常に先行して減るので、需要に供給が追いつかない状態がこういう産業領域では起きやすい。

原田泰:非常に興味深いですね。一般的に言って、人口は減っているけれども働ける人はもっと減っている。だから人手不足が生じる。ただ、この一般論が正しいとすると、1990年代後半くらいからそういう人口構成になっているので、この20年間人手不足が顕在化しなかったのはなぜかとなる。

 これは、介護であれば理由は明らかで、サービスの料金が決まっているからです。人手不足であっても賃金を上げられない。この20年間ずっとベースの経済が良くなかったですから、他の業種で少し景気が良くなればそこで労働力が吸収されてしまう。だから人手不足が顕在化しなかった。

 つまり、賃金による調整メカニズムが働いていないんですね。バスも規制業種です。路線は一度獲得したら返上しなくてよい既得権だから、隣のバス会社が攻め入ることは難しい。経済効率が悪い状況が温存されてしまう。

冨山:バス事業は、停留所の変更、ダイヤ改正、整備効率改善など、生産性を上げる余地がたくさんあるんですね。意外と注目されてませんが、サービス産業は企業間の生産性格差がものすごく激しい。完全競争状態とは言えない構図になっています。

 ローカル経済圏の産業は、GDPや雇用のおよそ7割を占めています。この経済圏の特性は、「密度の経済性」が効くことです。例えば、岩手県の路線バス会社と宮城県の路線バス会社はまったく競争関係にありません。隣の県のバス会社の生産性が高くても乗れませんから。もちろん路線という規制があることもありますが、いろいろな設備を所有し地域に密着した事業者が既に存在すると、それをひっくり返すのはとても大変なんです。

 これは規制業種ではない小売業でも同じで、例えばコンビニエンスストアではドミナント戦略がモノを言う。生産性だけで競争が起きているわけではないんですね。それに加えて規制があると、効率の良い企業と効率の悪い企業が共存することが起きます。

人手不足倒産は実は良いこと

原田:最終的には、本当にバスの運転士が足りなければ、賃金が上がり、企業は倒産します。人手不足倒産です。そこで、生産性の高い企業がこの企業を安く買収すれば、経済全体の一人あたり生産性が高まります。少ない運転士でも効率良く運行できる会社が運営するわけだから。

 こういう調整が起きていけば、日本全体の生産性は高まっていき、サービスも良くなります。人手不足倒産が起きて、雇用と仕事が生産性の高いところへ移動することを妨げてはいけない。人手不足倒産は実は良いことです。

 有効求人倍率など雇用情勢を見ると、地方は都市部よりも良くありませんが、このところ上がってきています。気になるのは東北地方です。建設分野に復興需要という特殊要因があって、生産性の低い公共工事に人を取ってしまっている。冨山さんの言う人手不足が今後もっと顕在化しますので、無駄な公共事業を減らすべきです。

冨山:経済が本来の調整メカニズムを発揮して、本来起こるべき雇用の移動や企業の新陳代謝を妨げないようにしなければなりません。

 これは何も規制だけではありません。規制以外にも多くの阻害要因があります。金融円滑化法もそうだし、保証協会融資も雇用調整助成金もそう。密度の経済性が効いているところに、政府がさらに介入してミルク補給をしてしまっています。

 経済が良くなってきたんだったら、人工的な安全装置は外していったらどうですか? というのが私の提案です。人手不足が顕在化してきた今の状態であれば、外しても社会的な副作用はないはずです。

 日本経済の状態がいまより悪く、現実問題として有効求人倍率が低かった時代は、企業を潰さないという安全装置も社会政策として意義はあったかと思いますが、いまは経済に雇用吸収力が出てきて政策的ウィンドウが開いているのだから、本来の市場経済の機能を活用したら良い。

原田:かつては低生産性部門でも残さざるを得なかったのは失業者問題があったから。いまはそういう問題が解消されつつあるのだから、無理に企業を残さなくても、生産性の高い企業が残ればそれこそが成長戦略になる。

 何かやるのが成長戦略ではなく、やめること、やらないことが成長戦略だということですね。

アベノミクスでチャンスが訪れた

編:なぜいま雇用吸収力が出てきたのでしょうか。人口論なのか金融緩和なのかどちらでしょうか。

原田:両方ありますが、重要なのはアベノミクスでしょう。人口構成の変化から長期的には人手不足になる可能性があった。過去20年間、一部の規制部門では起きていたが、全体では起きていなかった。いま全体に広がりつつあるのはアベノミクス効果です。

冨山:アベノミクスは第1の矢、第2の矢まで素晴らしかったと思います。デフレ経済は低血圧のようなものでしたから。それを目覚めさせて本来の力に引き上げ、需給ギャップが埋まってきました。でも、第3の矢になったときに、先祖返りした印象があります。

 加工貿易立国の幻想にとらわれたままのターゲッティングポリシーなどはやめて、もっと市場経済をスマートに使うという方向に舵を切るべきです。

編:冨山さんは近著のなかで、ケインズ経済学も新古典派経済学も、ずっと供給過剰と需要不足、つまり労働力が余っている状況に対する政策を議論してきたから、人手不足の時代にはどちらからも解を見出しにくいと指摘されています。市場経済を使うというのはまさに新古典派ではないのですか?

冨山:新古典派の感覚にずれを感じるのは、現実の調整過程に時間がかかる産業があるからです。自由な競争に任せれば市場プレイヤーの合理的選択でお気楽に調整されると思ってしまうと、調整過程において、絶望工場とかブラック企業が跳梁してしまう。本来淘汰されるべき悪貨がしばらく残るんですね。すると、ツアーバスの事故のようなことが起きるわけです。

 タクシーも同じですね。規制緩和すると事件が起きて、規制緩和はけしからんと揺り戻しが起きる。この20年、緩和しては戻り、というのを繰り返してきた気がします

 これは、レギュレーションデザインの問題です。ツアーバスで言えば、国土交通省の安全監査の問題。規制緩和して一気にツアーバス会社が数千社増えたときに、監査する人員が増えなかったらどうなるか。全体のカバー率を考えて、大きなバス会社だけ監査に入る。隅っこの小さな会社はお目こぼしになって、事件が起きてしまう。

原田:少し前に『ダンダリン』という労働基準監督署の監督官のドラマがありました。段田凛という女性監督官だけ規則通り真面目に仕事をするんですね。逆に言えば、みんながお目こぼし行政をやっているからドラマになる。

 非現実的な規制があって、それを現場の人が適当にごまかしながらやって、なんとか世の中が動く。日本の行政はそういう仕組みになっています。

冨山:今こそ、スマートな規制に変えるチャンスです。労働市場で賃金が上がり始めているから、中小企業を保護するミルク補給をやめて倒産しても、人手不足だから労働者は失業しない。

原田:人手不足になっていないと、合理的な政策は実行できません。失業者がいっぱいいるときに、中小企業の保護政策をやめることは政治的にできない。しかし安倍首相が大胆な金融緩和をしたから、人手不足になった。政策転換のチャンスでしょうね。

冨山:生産労働人口が減るのだから、潜在成長力はそれにつれ下がっていく。どう対応するかが最大の課題です。

 そのためには一人あたりの生産性をいかに上げていくかというのが最重要。全体のGDPは減っても、一人あたりの生産性が上がることで、所得が増え、完全雇用の状態が達成される。そうすれば幸福感がある。好況不況というGDPに結びついた概念では捉えられなくなっていくと思います。

 一人あたりの生産性をどう上げていくかというのが、アベノミクスの勝負どころだと思いますね。


(私のコメント)

いま地方で何が起きているかと言うと、労働人口の引退による人手不足なのだそうです。若い労働者はみんな都会に行ってしまって運転士や販売店員や医療や介護でも人手不足なのだそうです。人手不足なら賃金を上げて募集すればいいのでしょうが、規制があって上げられない。

ならば規制を撤廃して賃金を上げさせて、賃上げに耐えられない所は廃業すればいい。賃上げに耐えられる企業が廃業したところを買収して生産性を上げて行くべきなのでしょう。医療や介護なども健康保険などの制約があるから料金は規制されていますが、医師不足や看護師不足は規制があるからだ。

バスやタクシーやトラックの運転手も人手不足だそうですが、大型運転免許を持った若い人がいない。あるいはそういった仕事をやりたがらない。ならば賃金を上げれば若い人でもやる人は出て来るだろう。この20年間はデフレ不況で安さを売りにした商売が流行りましたが、アベノミクスが流れを変えてきた。

都会でも「すき家」や「ヤマダ電機」といったブラック企業が業績を拡大してきましたが、低賃金や長時間労働で従業員に負担を求めつつ業績を拡大する事が出来た。ブラック企業は辞めて行く人も多いが人手はいくらでもいたからそんな事が出来た。しかしアベノミクスで流れは変わった。

本来ならば人手不足が賃金の上昇をもたらす筈ですが、アルバイトなどの賃金は上がったが民間の全体の実質賃金は下がり続けている。これではGDPの拡大は見込めない。これからは賃金の上昇に耐えられるところが生き残り低賃金で人手不足になって倒産するところが淘汰される。

地方でも少子高齢化が一層進んでいますが、必要最低限のインフラや公共施設は必要であり、バスの運転手や病院の医師や看護師や介護施設の介護士などの需要はある。それらの現役の労働者がいなくなれば若い労働者に置き換えなければなりませんが地方ではなかなか人手不足で集められないようだ。

建設業などでは人手不足は起きていましたが、高齢化に伴う引退した労働者の需要があるのに供給は減る一方だ。今までは車を運転していた人も高齢化でバスやタクシーを利用するようになる。さらには病院通いや介護施設に入る人も多くなる。このように需要と供給のバランスが変化しているのに、業者保護のための賃金規制があって賃上げが出来ない。

政府の基本政策も、業者保護から規制を緩和して競争を促して生産性のいいところが生き残って行くようにすべきなのだろう。人手不足なのに実質賃金が低下している事は、円安や消費税増税などが影響しているのでしょう。

人手不足が常態化すると業者保護よりも自由競争でサービス競争を促して、サービスの良いところは賃金を高くして人を集めてやっていけるが、生産性の悪いところは賃金を上げられず人手不足で倒産するようになる。記事にもあるように「規制があると、効率の良い企業と効率の悪い企業が共存することが起きます。」

高度成長時代は慢性的な人手不足だったから、毎年賃金が上がり生産性も上がっていましたが、低成長になると就職難になって賃金も頭打ちになって公務員給与だけが上がって行った。人手不足と言うと政界からは外人労働者の受け入れを言うようになる。そうなるとブラック企業も生き残るようになりマイナスだ。

しかし自由競争による生産性の向上には時間がかかりなかなか成果が現れない。人手不足が慢性的な状況になれば、賃金を上げられる会社は残り、賃上げが出来ない会社は人手不足倒産になる。しかし外人労働者が入って来るとそのような調整が出来なくなり、国内の生産性は悪化する。


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