パナマ文書で何が本当に暴露され、誰がもっとも損をしたか   英国のシティの国際的な地位低下は不可避的となってしまった。

宮崎正弘の国際ニュース・早読み

書評

 パナマ文書で何が本当に暴露され、誰がもっとも損をしたか
  英国のシティの国際的な地位低下は不可避的となってしまった。

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渡邊哲也『パナマ文書』(徳間書店)
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 「パナマ文書」が世界のメディアにリークされて以来、世界の金持ちと金融関係者をを震撼させた。とくに中国は慌てた。
この「パナマ文書」の成り立ち、オフショア市場の仕組み、世界的影響の広がりと、中国、露西亜を含む「大富豪」たちの逃避先は次はどこへ向かうか。あるいは次の投機対象に変化があるのか。
とりわけ日本にいかなる悪影響があるかを緊急にまとめたのが本書だが、その早業と情報量と、まとめる技量に脱帽である。
とくに甚大な影響があるのはロンドンのシティである。
シティは周知のように英国内の「自治領」であり、治外法権の扱いを受けている。「国内国」とも言える。
女王陛下がシテイお出かけになるときはロンドン市長の許可が必要である。
七 つの海に君臨した英国が世界の植民地経営を円滑化させるために法治の及ばない特区をつくって、世界支配の金融の中枢機能を果たさせてきた。したがって世界 のオフショア市場のモデルであり、EU離脱を決めた英国にとって、一番の悪影響がでることは火を見るよりも明らかだろう。
上海、香港、シンガポールはこうした大英帝国の金融植民地の出先としても機能し、なかでも香港では香港上海銀行とチャータード銀行が香港ドルの発券銀行でもあった。
「そ して、そのような地域の法律は、基本的にイギリスの法律と法制度にあわせており、またそのなかでもイギリスの自治領においては、枢密院勅令によりイギリス の外務省により立法はコントロールされている。だから現在もオフショア金融センター、あるいはタックヘイブン」(86p)の元締めとなるわけだ。
 ところがキャメロン政権で親中派のオズボーンが財務相となると、英国は米国ドル基軸体制に風穴を開けようとして中国と組む。
 「アメリカのドル支配体制を弱体化させ、中国の影響力を高める」という野望に基づいてAIIBを創設した中国に「オズボーンはアメリカの当て馬として中国を利用し、あわよくばイギリスによる金融支配を復活させようと目論んだ」
 と渡邉氏は言う。
 だから15年三月、アメリカを裏切るかたちでオズボーンは中国の提唱していたAIIBへ参加を決めて、ワシントン、東京をすっかり怒らせる。
 ところが、オズボーンの試みたAIIBは不発に終わりそうな上、なんと英国がEU離脱を決めて、オズボーンの政権奪取は遠のいた。キャメロンは九月までに辞任するが、後継首相はオズボーンではない。対中政策がどう変わるかも未知数となった。
 したがってオズボーン後継を規定の方針と思っていた北京政府もすっかり慌てたが、その因のひとつが、このパナマ文書の激震によるのである。

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