英国のEU離脱について 日本にとって よかった

西尾幹二 平成28年6月26日

英国のEU離脱について 

6月25日のニュースを見ながら考えました。今回のイギリスの決定で、離脱派の党首と思しき人物がテレビで万歳をして、イギリスの独立、インディペンデン ト・デイだと叫びました。常識的に考えて、世界を股にかけ支配ばかりして、世界各国から独立を奪っていた国が、自ら「今日は独立の日だ」などと叫んでいる のですから、いったい地球はどうなっているのかと思いました。

今日の段階で日本のメディアはヨーロッパの情勢ばかり言っています。アメリカや中国を含む地球全体の話をほとんどしません。そして英国のEU離脱、すなわ ちEUというグローバリズムの否定、英国ナショナリズムをさも悪いことのようにばかり言っていますが、そうなのでしょうか。・・・日本のメディアがEUというグローバリズム、国境をなくす多文化主義を一方的に良い方向ときめつけて、それに反した英国の決定を頭から間違った方向と定めているからではないでしょうか。必ずしもそうではない、という見方が日本のメディアには欠けています。

今度の一件を端的にアングロサクソン同志の長い戦い、米英戦争の一環と考えてみたいと思います。アメリカとイギリスという国は宿命の兄弟国であり、また宿 命のライバルでもあって、何かというと、どちらか片一方が跳ね上がると、すぐもう片一方が制裁を加えるということを繰り返しています。これはずっと昔から そうで、私が『天皇と原爆』の中でも書いたように、基本的に第二次世界大戦は「アメリカとドイツ」、「アメリカと日本」の戦いであると同時に、実は「アメ リカのイギリス潰しの戦い」でもあった

キャメロン首相とオズボーン財務大臣というのは組んでいて、オズボーンはキャメロンと大の友達・・今の自分の国の力だけでは出来ないので中国の力を借りるという路線に踏み込んで、オズボーンは中国に出かけて行って「ウイグルは中国の領土だ」と言って習近平を喜ばせたりしてやっていたイギリスの勢力

基本的にヨーロッパはどの国も中国が怖くありません。煩くもないので、中国を利用したいという気持ちがつねにあり、そしてロシアが邪魔という気持ち、この 二つがあります。それからドルは出来るだけ落ちた方がいい、ドルの力を削ぎたいという気持ち。これがヨーロッパ人が考えている基本姿勢です

ズルズルと中国経済がおかしなことになっているのが我々には見えているのです。そのズルズルとおかしなことになっている間に人民元が急落するでしょうか ら、そうなる前に何とか自国に取り込もうと、少しでも自分たちの利益になるようなことをしようということを、各国が目の色変えてやっているのです。その先 陣を切ったのがイギリスでした。ご承知のAIIB、アジア・インフラ投資銀行でイギリスが真っ先に協力を申し出たというので、世界を震撼せしめました。そ れは先ほど言った財務大臣オズボーンの計略だったのです。中国の力を使ってシティを復活させたい・・・。中国もシティの金融のノウハウを手に入れた い・・・。

中国共産党党員の要人が金を持ち出している・・アメリカがしっかり監視し始めて、アメリカはこれを許さない、というスタンスになってきた。中国人からするとアメリカではもうダメだ、ということで、中国 共産党の幹部たちはその資金をシティに逃がしたい。香港経由で専ら中国とイギリスは手を結んでいましたので、シティを使って自分たちのお金を逃したい

それを暴露したのがパナマ文書ですよね。それでキャメロンが引っかかったではないですか。ものの見事にアメリカは虎の尾を捕まえた

イギリスは酷いことをやっていたのですよ。タックスヘイヴンというのは、その中心、大元締め、つまり元祖みたいなものはシティです。シティというのは、イ ギリスの女王がシティに入るためにも許可がいるというほどイギリスの中の独立国みたいなものです。つまりローマの中のヴァチカンのような一つの独立国みた いなもので、それくらい権威が高く、しかも中世から続いているわけです そしてそれを経て東インド会社ができて、世界中を搾取した、あの大英帝国の金融の総元締めであって、そしてそれによって皆が脱税などを繰り返した

リーマンショック。自分の不始末で金融がぐちゃぐちゃになって、これを何とかしなければいけない。監視しなければいけない。それからもう一つは、ダブつい たお金がテロリストに回って、イスラム国みたいなテロリスト集団が出てきたから、これを何とか抑えなければいけないということ。この二つの動機からアメリ カは断固取り締まるという方向になりました。そうすると目の色が変わるのはシティです。イギリスはシティによっていま一度大英帝国の夢を・・・、ということですから、これは当然ながらイギリスのシティがアメリカのドル基軸通貨体制の存立を脅かすということになってきます。深刻な対立が生まれていた

それでもアメリカとイギリスが永遠に対立するなどということは無いので、結局イギリスの中の体制が変わってキャメロンが辞めて、きっと親米政権が生まれる でしょう。そして、どうせまたアメリカとイギリスは手を結ぶことでしょう。いずれはウォール街とシティは和解するのです。今度の出来事はその流れの一つで はないか

 そうなると、残ったEUはどうなるでしょうか。先ほども申したようにドイツは頻りに「哀れなイギリスよ、お前たちは泥船に乗ったのか?」と言っているそ うです。メディアも頻りに「可哀想なイギリスよ」とやりたてている。テレビなどがイギリスは明日ダメになってしまう、というようなことをどんどん流してい るそうです。そしてシティがEUから離れていくわけです。そうするとEUは必然的に没落します

だから結局EUはドイツが中心。アメリカとドイツが永遠に仲良くなるとは思えませんし、結局アメリカとイギリスは和解してEUはダメになる。そしてシティはアメリカの管理下に置かれる。アメリカ、というかウォール街がシティの上に立つような構造になるのではないか

少なくとも中国の世界戦略は破綻した・・・。良かった!と思います

 私の短い人生の中でこんなことが沢山はないのです。つまり中国が台頭したのも理解できない。あの最貧国が大きな顔をして、お金で他国を威圧するなどとい うことは5年くらい前までは夢にも考えられなかったということ。そしてあのアメリカがタジタジとして自分で自分を護れなくなっているというのもビックリす る話で、イギリスもおかしくなってきた。おそらくスコットランドが独立するのではないかという気がします。スコットランドがもう一回独立投票をやれば確実 に離れるでしょう。そうするとイギリスという国は無くなるのです。ブリティッシュという概念は無くなってイングランドになる。イングランドになると同時に 大国ではなくなります。何がおこるかというと、おそらく第二次世界大戦の戦勝国としての地位を失う。即ち国連の常任理事国としての地位を継承できなくなる と思います。だってそうでしょう。ブリティッシュ、ブリテン大国がイングランドになったら、これはもう違う国なのですから。そういうことが直ぐにではなく とも必然的に起こりますよね。ブリティッシュ、ブリテン大国がイングランドになったら、これはもう違う国なのですから。そういうことが直ぐにではなくとも必然的に起こりますよね。これでイギリスに片がつくと・・・。明治以来日本の上に覆いかぶさっていた暗雲が私の短い人生の中で一つずつ消えてゆく

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