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ネタバレ必至で読み解く主観的映画批評の日々!

千と千尋の神隠し

2008-08-13 17:51:48 | 映画(さ)
評価点:63点/2001年/日本

監督・脚本:宮崎駿

宮崎監督のアニメ映画。様々な記録を打ち立てた話題作。

新たな土地に転居してきた千尋の家族は、道に迷いトンネルの入り口に行き着いた。
恐る恐る入っていくとそこは不思議の世界が広がっていた…。

▼以下はネタバレあり▼

ものすごい記録を打ち立てたため恐らく、知らない人はいないほどの認知度だろう。
そして大体観に行った人の話を聞くと「良かった」「感動した」という声が多いようだ。
でも僕は断固この映画を批判する。
僕には全く感動できなかったし、宮崎映画特有の「重さ」や「深さ」「巧さ」を感じなかった。

理由の一つは、千尋というキャラがあまりにも前半描かれないからだ。
彼女の成長が物語の軸になっているのだから、彼女の態度や言動の変化がかなり重要になってくる。
にもかかわらずイキナリ神の国に迷い込むので、キャラクター不明のまま物語が展開していく。
「今時の少女」という宮崎監督の意図はわかるが、それが象徴されているシーンが欠落している。
車の中で不機嫌な顔をしている千尋という描き方だけでは不十分である。

次に問題視するのは、神の国での出来事である。なんとなく説教臭い。
神々が千尋と様々に関わってくるが、いかにも紋切り型、ステレオ・タイプのキャラクターであり驚きがない。
非常に薄っぺらい人間性。
そこから派生するエピソードも感動を呼び起こすほどではない。

そして物語の最終的な落ちであるハクの正体。
これに至っては全く予想通りで期待はずれもいいところである。
ものすごい謎を秘めている割には大したことがない。

世界観や音楽、映像は確かに綺麗。けれどそれで勝負する時代は終った。
絵がきれいといってもそれだけでは感動できない。
面白い神が登場したからといってそれだけで良しとできない。

この映画が完成度が低いと僕が考える理由はそこだ。
巧さがない。
かつて「風の谷」でみせたような脚色する技量や、設定をわずかな時間で理解させる場面展開。
そうした巧さが全く感じられない。

「伝えたい意図」を過剰に意識したとも感じる。
つまり「おにぎり」に象徴されているように、あらゆるシーンや設定に意味を与えすぎたのだ。
このシーンはこうだからこう。という理由を考えすぎたように思う。
もちろん、そうした製作者側の意図は重要だけれど、そうした事は、観客が勝手に考えればいい事で、
率先してそれを説明し出すと、それは蛇足でしかない。
全てにおいて利己的といえばいいのだろうか。
意図的に造られすぎて物語の揺れや深さを損なっていると言えばいいだろうのか。
全てが、あざといのである。

「おにぎり」=「生きる価値の確認」という構図は、観客にはまず捉えられるものではない。
そんな重たい意味を持たせたいなら、食べ物を粗末にするような、千尋の言動を最初に描いておくべきだ。
それをDVDの特典にして改めて説明する理由がどこにあるのだろう。

そもそもこの映画には商業的な背景が見え隠れする。
「もののけ」で「商品化できるようなキャラ」がいなかったために、この映画では可愛い系のキャラが頻出する。
俳優を声優として使っている点も同様だ。
そういう映画の商業性が、この映画の限界を表しているのだろう。
またそれが見事に当たった為に売れたのだろう。

僕はジブリの作品にそんな「ぬるい」ものを求めない。
この作品は、記録には残るけれど「風の谷」のように、伝説的な印象は人々に与えられなかっただろう。

(2002/07/24執筆)

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