外国で一時的個人的無目的に暮らすということは

猫と酒とアルジャジーラな日々

・シリアでビールを飲む(5)~その他のビール~   

2009-10-08 21:27:33 | シリア
個人的には、瓶ビールが苦手なため(重いし、落としたら割れるから)、アル・マーザを買うことはめったにありません。バラダについては言及するまでもないでしょう。私は家では缶ビール派です。シリアで流通している缶ビールは色々あります。エジプト産の「マイスター(名前の意味は明白ですね)」はしっかりした濃い味で、日本のビールに近い気がして好きだし、同じくエジプト産「ステッラ(イタリア語で‘星’の意)」もブルー地に黄色い星マークの缶が愛らしく、爽やかな軽い喉ごしで悪くない。トルコ産「エフェス(トルコの都市の名前)」も飲みやすくていける。ハイネケンやコロナのようにメジャーな国際ビールも普通に買えますが、値段は中東産のビールよりも高めです。その他にもヨルダン産の「パンダ」(パンダマークの缶が可愛いがあまりおいしくない)や「BEAR」(白熊マーク、これもまずい)など色々あります。

私は、ビールを心の底から愛するわりに、その製造法や分類に無頓着なたちで、ビールには「金色・茶色・黒」があり、「アルコール度が5%程度のものと、もっと強いもの」があるようだ、という原始的なレベルの認識しかしていません。ここで挙げたものはすべて「金色でアルコール度が5%程度」の、つまりごく一般的なビールです。だってそれ以外のビールにはあまり興味が持てないんですもの。

問題は、最近(2009年夏以降)ビールの値上げが行われたことです。夏前からどの酒屋からもマイスターやエフェスたちが姿を消し、おかしいぞ困ったぞ私は一体何を飲めば良いの?と途方にくれていたら、夏が終わってから再登場し、喜んだのもつかの間、しっかり値段が上がっていたのでした。中味もパッケージもそのままなのに。前はたいていの缶ビールが(500ml、これがこの地域のスタンダード)50リラ(約100円)で買えたのに、それが60リラ、ないしは75リラに上がってしまったのです。ほんとうに、人生はかなしいことでいっぱいです。幸いなことに私の行きつけの店には、まだ50リラで買えるビールが置いてあります。デンマーク産のビール(名前は覚えていない)とヨルダン産の「フィラデルフィア(ヨルダンの古名に由来するらしい)」です。このため、最近ではこの2種をもっぱら飲んでいます。ちなみに日本のビールで私が好きなのは、(1)恵比寿、(2)サッポロ黒ラベル、(3)キリンラガーです。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

・シリアでビールを飲む(4)~「バラダ」VS「アル・マーザ」~

2009-10-07 21:23:53 | シリア
シリアではどんなビールが飲まれているのでしょうか。

昨年夏にフィレンツェからダマスカスへ到着した当初、同行した友人のイタリア人男子(彼は前年の夏もダマスカスに短期留学していた)から、
「くれぐれもシリアビールのバラダにだけは近づいてはならぬぞ。かわりにレバノンビールのアル・マーザを飲むがよかろう」という忠告を受けました。さっそく飲み比べてみたのですが、彼は正しかったです。飲食物に関するイタリア人の助言をあなどってはいけませんね。


・「バラダ」~シリア国産ビール

「バラダ」とは唯一のダマスカス産ビールで、その名前はこの古い街を流れる(水があるときは)バラダ川に由来しています。ずんぐりした不恰好な緑色の大瓶に入っており、値段はちょっと覚えていないのですが、他のビールより確実に安かったです。それゆえ財布に余裕がなく、味にこだわりのない普通のシリア人たちはバラダを買っていくようです。
一口飲んでみると、今まで飲んだどのビールとも違う、なんだか不思議な味がしました。妙に酸っぱいんです。モルトのコクがなくて、喉ごしがビールらしくないんです。普通のビールをコップに注いで、日なたにしばらく置いといたような味、とでも言いましょうか。白く泡が立って金色をしていて、ビールと呼ばれているけれども、実はこれはビールとは違う飲み物なのでは、という考えがふとよぎりました。
シリア在住欧米人たちはこのシリア国産ビールをペストのように避けており、レストランなどでビールを注文する際も、決してバラダを持ってこないように、とあらかじめウエイターに念押ししたりしています。バラダをおいしいと言う欧米人を私は一人しか知りません。彼は私の元同居人のフランス人男子(共同アパートを5人でシェアしていた)で、当惑する私を尻目に、「え、なんで?これおいしいよ」といって涼しい顔でぐいぐい飲んでいました。フランス人の味覚に疑問が生まれた瞬間です。
ちなみにシリア国産ビールとしては、もうひとつアレッポ製の「アッシャルク(アラビア語で‘東’の意)」があります。アレッポの、アルメニア人が経営するカフェ・レストランで一度だけ飲みましたが、「モルトを多めに入れた、酸味控えめのバラダ」という感じでした。つまりバラダよりは大分まし。


・「アル・マーザ」~レバノン産ビール

   お隣の国レバノンからやってきた「アル・マーザ(アラビア語で‘ダイヤモンド’の意)」は、バラダと正反対の評判を誇っています。だいたいレバノン産だというだけで、もう安心感があります。美味しいもの、気の効いたものは全てレバノンからやってくるという噂もあります。シリアと違って資本主義が発達しているせいでしょう。このビールはスリムで優美な緑色の小瓶に入っていて、なんとなく「ビールの王女様」と呼びたくなるような外観だし、中味もこの印象を決して裏切りません。しっかりしたコクがあり、キレのいいシャープな喉ごしで、「ああ、わたしは今ビールを飲んでいるのね」という本能的(?)な喜びを与えてくれるのです。バラダをペストのように避ける人たちは、このアル・マーザの敬虔な信者であることが多いです。アル・マーザの悪口を言う人に出会ったことは未だかつてありません。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

シリアでビールを飲む(3)~私の行きつけの酒屋~

2009-10-05 02:04:59 | シリア
私が通常お酒を購入する店は、マルジェ広場付近のビジネスホテル街にあります(私がいつもマルジェ広場周辺をうろうろしているのがもうお分かりですね)。お店といっても小さくてドアもなんにもない、ささやかな空間です。通りに面して、大人の胸くらいの高さに小さなカウンターがあり、その向こう側には狭いスペースを隔てて、壁一面に様々な種類のお酒が優雅に並んでおり、通りかかる人々(敬虔なムスリム以外)を激しく誘惑します。昼間はたいてい口数の少ないハードボイルドな親父が店番をしており、夜になると彼の息子たち2人が交代します。この親父は口数は少ないものの、口を開くと真顔で冗談を言うので油断できません。夏のすごく暑い日に、「キイファック(調子はどう)?」と訊いたら、無表情のまま「バルド(寒い)」と返したりするのです。こっちが笑うと、彼も初めてにやりと笑います。その優しい笑顔がハート鷲掴み! というほどではありませんが、いい味を出していることは確かです。
ここでお酒を買うと、黒いポリ袋を二重にして入れてくれます。外から見ても中味が分からないように気を遣ってくれているのです。ムスリム多数派の国の酒屋ならではの気配りですね。そういえば日本のコンビニでは、生理用ナプキンを買ったとき、中味が外から見えないように別途紙袋に入れてくれたなあ。ちなみに親父はキリスト教徒です。シリアの酒屋はたいがいキリスト教徒が経営しているような気がします。
最近私は引っ越したので、この親父の店からは遠くなったのですが、新しい家は、宗教色が煮しめたように濃いムスリム地区・ルクナッディーンにあり、徒歩圏内にまだ酒屋が見つからないので(存在するかどうかも怪しい)、いまだにバスに乗って買いに行っています。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

シリアでビールを飲む(2)~家の外でビールを飲む~ 

2009-10-05 02:03:09 | シリア
個人宅、ホテルの自室以外の場所でビールを飲むのは、幾分難易度が高いと言えましょう。ダマスカスでは、キリスト教地区のレストランやカフェテリアで普通に飲めます。それ以外の地区でも高級ホテルのレストランやバーには確実にアルコール飲料が置いてありますし、観光客目当てのお洒落なレストランなどでも、お酒が楽しめるところがありますが、いずれにせよ値段はもちろん高めです。ダマスカス以外の都市についても同じことが言えると思います。
しかし、お洒落なお店なんかには出来るだけ足を踏み入れたくないわ、私はオヤジ率の高い、こきたない安居酒屋が好きなのよ!という人は(私のこと)どうすればよいのでしょうか。ダマスカスの中心地、新市街のマルジェ広場脇には「カルナック」という飲み屋があって、明るいうちからミックスナッツをつまみにビールが飲め(缶のまま出てくる)、客層も、暑苦しいアラブのオヤジが9割以上を占め、大雑把な内装も好ましい、感じのよいお店だったのですが、今年(2009年)の5月に久しぶりに行ってみたら、改装されて値段が上がり、それに反比例して客層のオヤジ率は下がり、若者向けの流行の音楽をガンガン鳴らす、比較的お洒落な店に成り下がっていました。人生はかなしいことでいっぱい。旧市街のバーブ・シャルキー(東門)の付近にも、すごく狭くてむさ苦しい飲み屋があるのですが、なぜかまだ足を踏み入れたことがありません。いつか行かなくてはならないとは思うのですが。
   私のささやかな夢は、マルジェ広場に隣接した公園で、昼下がりに芝生に座ってビールを飲んでくつろぐことですが、これを実行したら一体どんなことになるのか、想像するのがこわいです。思いつくのは、①警察に連行されて数日拘禁されるが、日本大使館の尽力により無罪放免 ②即刻国外退去 ③警察は出てこないが、周囲の人々に石を投げられる、などです。案外なにも起こらないのかもしれませんけどね。外国で一時的に暮らしていて困るのは、「やってもよいこと」と、「出来ればやらないほうが賢明なこと」、そして「やったら身が破滅すること」の判断が上手くつかないことです。そのため、石橋を叩きもせずにすごすごと引き返し、大人しく自宅で飲むことになりがちなのです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

シリアでビールを飲む(1)~酒屋でビールを購入する~

2009-10-05 01:58:47 | シリア
純白の泡の帽子をふんわりかぶった、黄金色に輝くあの美しい飲み物は、シリアの熱い砂漠に良く似合うと思いませんか。富士には月見草が良く似合うのと同じことですね。

シリアはムスリムが大多数を占める国ですが、幸いなことにアルコールの販売は認められており、ビールを買うのは比較的簡単です。特に首都のダマスカスでは、キリスト教地区に行けば酒屋が軒を連ねているし、それ以外の地区でも、非常に敬虔なムスリム地区以外であれば、真面目に探せば見つかります。求めるものは与えられるのです。ダマスカス以外の土地を旅する際は、酒屋探しに結構骨を折ることになりますが、ラッタキアやタルトゥースなどの海岸沿いの開放的な都市ではすぐに見つかりますし、それ以外の街でも、キリスト教会の近くをうろつくなどすれば大抵なんとかなります。最近では酒屋のありそうな界隈の匂いを嗅ぎ分ける特殊能力が少しずつ身についてきました。ただし、ちょっと街を離れて田舎に踏み込んだら、酒屋など一生見つかりません。田舎は禁酒ゾーンです。私はビールを諦め、ワインやウイスキーなど、ぬるくても飲める酒をペットボトルに入れて携帯することにしています(瓶だと重いから)。人生、時には妥協も下準備も必要ですね。
コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする