4月某日
なりゆきで猫を飼い始めたものの、初めての経験なので分からないことだらけだ。
エサの分量はどのくらいが適当か、缶詰のツナには塩分が含まれているが大丈夫なのか、蚊取りマットを使用すると猫も死んじゃったりしないか、床掃除に洗剤を使わないほうがいいのかなど、不安材料は多様である。
私にとって一番の問題は、居間の窓(網戸)の処置だ。
「開けるべきか、それとも閉めるべきか、それが問題だ」的に延々と悩んだ挙句、次のような結論を出した。
(1) 私が家にいる間は基本的に閉めておき、猫が出入りしたがったときだけ開けてやる。
(2) 在宅中でも夜眠っている間は、猫が自由に出来るように窓を開けておく。ただし、私は寝室のドアを閉めて引きこもる。
(3) 外出するときは猫を外に追い出して窓を閉め、帰宅した時にまた家に入れてやる。
毎朝家から締め出される猫は非常に気の毒だが、他にいい方法を思いつかなかったのだ。
できるなら私も猫に合鍵を渡してあげて、自由に出入りさせてあげたいのだが、あの手じゃ鍵が握れないもんね。
4月某日
猫を飼い始めたと友達に言うと、名前はつけたかと聞かれる。
そういえば、名前を付けることは思いつかなかった。
2日ほど思案した上、「ファーティハ」と名付ける。
正式には「ファーティハ・シュッバーク。」
これはアラビア語で「窓を開ける者」と言う意味である。
なにしろこの猫は窓を開けてうちに入ってきたのだ。
「このヒトは窓を開けると同時に、私の心も開けてしまったのね~」と、ちょっと感傷的な気分になる。
これってもしや、恋かしら?
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