外国で一時的個人的無目的に暮らすということは

猫と酒とアルジャジーラな日々

うちの猫の出産(10) 歩行編

2013-08-10 17:09:45 | ヨルダン(猫中心)


私が居間で寝るようになってから、ファーティハは少し落ち着いた様子だった。
そしてそれと同時に、子猫の成長もだんだん佳境に入ってきた。

生後3週間目に入ると、子猫たちは毛虫のようにもぞもぞと歩き始め、時折隠れ場所から出てくるようになった。
ふと気がつくとソファーとソファーの合間に姿を現して、ピカピカ光る黒い丸ボタンのような目でこちらを見上げていたりする。
そして私と目が合うと、「ああ、しまったあ!見つかっちゃった~!!」とでも言いたげな表情をして、またソファーの下に隠れるという具合だった。
私が凶暴な巨人に見えたのか?
失礼しちゃうわね・・・。

歩き始めた当初は、1、2歩前進しては尻餅をつき、また果敢に立ち上がってヨロヨロ進んではすぐ転ぶという調子だった。
小さな身体でこの地球の重力に懸命に戦いを挑んでいるが、全然勝てないという感じの見事なヨロヨロっぷり。
まだ足の筋肉がふにゃふにゃだったのだろう。
それでも七転び八起きでがんばっているうちに、数日後には随分まともに歩けるようになった。
それに伴い、ファーティハも授乳をソファーの外で行うことが多くなった。
おかげで、その様子を間近に観察することができ、非常に興味深い。

ファーティハはまずソファーの下に向かって、「みゃ~、みゃ~(ごはんですよ)!」と声をかけて、子猫たちを呼び集めた。
それから子猫たちのお尻をなめ、ついでにざっと全身をなめてやってから、本格的に授乳。
なるほど、このようにしておしっこやウンチを吸い取っていたのですね。
中には片隅で眠りこけて姿を見せない子もいた。
するとファーティハは、「あら?数が足りないわ。どこにいるのかしら?」と、心配そうな表情を見せるのだった。
そんなときは、私の出番。
ソファーの下に手を突っ込んだりして、無理やり連行し、ちゃんとミルクが飲めるように取り計らう。
及ばずながら、子育ての助太刀である。

生後4週間目あたりに、うちに泊まりに来た友達は、床をうろちょろしている子猫をつまみ上げてソファーの上にのっけ、反応を見て遊んでいた。
最初の頃子猫たちはパニックを起こし、「みゅっ・・・みゅう~!」と、か細い悲鳴をあげて助けを求めていた(そしてファーティハがすっ飛んできて、救出したりしていた)が、3、4日もするとすっかり平気になり、ソファーからソファーへ渡り歩いたり、自分で床に飛び降りたりできるようになった。
同じ日に生まれた兄弟とはいえ、5匹の間には体格差や性格の違いがあり、超ビビリの子もいれば、冒険家タイプの子もいた。
やつらは大体いつもお互いにちょっかいをかけあい、毛玉のように絡まり合って過ごしていたが、中に1匹、常に単独行動したがる子が目を引いた。
体格は他の兄弟より小さいのに、独立心が旺盛なのだ。
猫なのに、一匹狼。

子猫たちが自由に動き回れるようになった頃合を見計らって、私は居間で寝るのを終了し、夜は寝室に引っ込む暮らしに戻った。
もう他の猫が侵入しても、それなりに自衛できるだろうと判断したのだ。
それに、こんなに活発に活動されては、おちおち寝ていられない。
なにしろ、やつらはもう自力でソファーによじ登れるのだ。

結局10日間、居間で寝る暮らしを続けたことになる。
後で思い返してみると、この頃が私とファーティハの最も幸福な蜜月期間だったと思う。
睡眠不足ではあったけれど、ファーティハと密に連携を取り、子猫たちの成長を見届ける喜びがあった。


歩行開始 (絨毯が薄汚いのには、気が付かないフリをしていただけるとありがたいです)



ソファーの下から出てきた子猫たち (ソファーがボロいのにも、気が付かないフリをしていただけると・・・)



授乳のために点呼を取るファーティハ



突然ソファーの上に乗せられ、当惑している子



取っ組み合いをしていてもラブリー。さすが子猫である

コメント
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