近世ヨーロッパは、中世の封建主義、教会を中心とする社会体制から個人を解放する意識が強まるにつれ、人々が社会や個人のあり方について模索し始める時期と言えます。
そして、古代ローマ時代の学問や芸術の復興によって、古代ローマ時代にあった人間らしい、世俗的な世界を再現していく運動(ルネッサンス)が始まりました。
近世のヨーロッパは、もっぱら教会建築に力が注がれていた中世とは対象的に、公共施設、宮殿、邸宅等多様な用途の建物が建設されました。
特にイタリアの都市フィレンツェは学問、芸術が奨励され、結果、建築、美術、芸術の傑作が集まったと言っても過言ではありません。
左の写真はフィレンツェのサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂ですが、ブログ開始した日の記事 「歴史のおもしろさ」 に記述しましたブルネッスキがその象徴ともいえる美しいドームを設計しました。
商業を通じて資産家は莫大な富を得ました。
資産家は、建築家、芸術家たちのパトロンとなり、彼らが模索する創作願望を実現する推進力にもなりました。
対外的に反映したイタリアの商業都市ヴェネツィアには、ルネッサンス様式の邸宅が多く残っており、左は、現在ではホテルとして利用されているヴェンドラミン邸(1481年)です。
ルネッサンス時代の建物の多くは、外部に向かって古代のオーダーを使用する事で古典的な威厳と秩序を保ち、内部は個人の為に開放性、快適性を重視する空間作りがなされたました。
オーダーは、建物をいかに視覚的に美しく仕上げるか、古代ギリシャ時代に考案された比例体系です。
つまり、縦横比、材料、装飾のボリュームなどを、建築家それぞれが美しいと考える比例理論に基づき、より美しい建物の創造を目指し切磋琢磨した時代でもありました。
中世ヨーロッパでは、親方が建築生産を一手に担う方式でしたが、近世からは、設計者と施工者の分離も明確になってきます。
そして、画家、彫刻家などの芸術家が活躍し始める事で、都市に彩り、華やかさがもたらされます。
いわば、社会が近代、現代に向けてより高度化していく過程の中で、分業の考え方が芽生え始めた時期とも言えます。
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