MVCメディカルベンチャー会議

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第21回MVC特別セミナー

2015年03月17日 | MVC特例会

神戸薬科大学 薬学臨床教育センター 沼田千賀子氏をお迎えし、「がんサバイバーが世界を変える」というテーマについて講演いただきました。

(1)医療の進歩により“5年生存率”が上がり、“がんを抱えながら社会生活を送る人”が増えています。私自身、10年前に乳がんとなりました。その治療中に、がんをどう治すかではなく、がんを抱えながら自分らしくどう生きるかが大きなテーマになると感じました。

(2)がんサバイバーとは、がんを経験し生き残っているという人を指すのではなく、がんと診断された後、今を自分らしく生きようとする人たちを指すアメリカ発の考え方です。

(3)私は2005年に乳がんと診断され、それを受け入れられない中、なぜ、がんになる人とならない人がいるのか、がんの必然性、社会的存在意義など考えました。
手術をする決断が出来ず、自分自身が納得するまで、治療せずにがんと対話をするという道を選びました。

(4)がんと対話をするための手段として選んだのが、ハンブレチア(通称ビジョン・クエスト)です。ハンブレチアとはインディアンの大人になるための通過成人の儀礼で、ひとり山にこもり、三日三晩飲まず食わずの中、自分の役割・人生の目的は何かを自分自身や自然と向き合い考えるというもので、それにより、自分の中に押し込めていた感情を解放することができ、気持ちに余裕を持てるようなりました。

(5)がんと対話するという考えに至ったのは、がん診断は、顕微鏡を通して、がん細胞を見るだけで本当のことはわからない。がんと対話をしなければ、正しい判断ができない。と言ったある病理の先生の言葉がきっかけでした。手術前にもがんと対話をしました。



(6)手術後は化学療法を行いました。副作用の脱毛はただ髪が抜け落ちるだけでなく、頭皮が薄くなり痛痒い状態が続き、ウィッグを止める時には激痛が走ります。脱毛には患者の苦しみや葛藤が隠れているということや患者ひとりひとりが持っているストーリーを理解する大切さを学びました。

(7)がんを発症した後、再発する人と完治に向かう人の違いは生き方を変えたかどうかではないでしょうか。自分自身がもう少し頑張って生きてみようと思う事が出来れば、それが、がんの完治と言って良いのではないかと思います。

(8)現在、生きることの根本的な意味を考える患者とがんの発症と成長に哲学的な意味を見出そうとする人の対話の場として「がん哲学外来」というものがあります。それと同じように、患者やその家族、医療従事者が集まり、がんについて情報交換ができるメディカルカフェという場をつくる活動もあります。

(9)これからの医療は、死と向き合うことを避けるのではなく、死と向き合うことで生きる意味や喜びを感じるサポートを行うことが重要ではないかと考えます。

(10)がんサバイバーの方や私自身がん患者になった経験を通じて、がんとは人生のレッスンではないかということです。がんになったことで、自分の人生を見つめ直し、周囲に対する感謝の気持ちを今まで以上に持つようになりました。がんは本当の自分を取り戻すきっかけとなるものではないでしょうか。

(11) 21世紀は、本当の自分を取り戻し、自分の役割や何がしたいかを考えていく時代だと思います。人生における自分の役割を見つけたがんサバイバーたちの生き方は、21世紀を生きる人たちを感化する力があると私は考えます。



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