蛍のひとりごと

徒然に、心に浮かんでくる地唄のお話を、気ままに綴ってみるのも楽しそう、、、

菊棚月清大検校  『生き生きて地唄旅』

2005年05月01日 | 地唄箏曲よもやま
『生き生きて地唄旅~大検校が語る伝承の世界~』(なにわ塾叢書)
というご本を今、読み終えさせていただきました。
地唄箏曲演奏家の菊棚月清大検校さまの聞書きをまとめたご本でございます。



     菊棚月清大検校。信じられない存在である。
     誰も知らない古曲や秘曲を含め、地唄を何百曲伝承しているのか。
     ご本人にも、お弟子さんにも、誰にも分らない。・・・・・(略)


     菊棚月清大検校。 
     曲数、正統性、貴重さ、その認識はお持ちのようである。
     それなのに、これを誇ろうとか、これで有名になろうとか、
     これを金にしようとか、そういう意識が一切ないのである。・・・・・(略)
 

     菊棚月清大検校。本当に地唄がお好きだったのだ。
     教えられたままを覚えられ、それ以上のことは考える余地も
     暇も何もなかったようだ。・・・・・(略)




この本のコーディネーターをなさった高木浩志氏のまえがきにはこのように書かれてございます。

素敵なお言葉ばかりが散りばめられ、どこを取り上げてどう申し上げたらよろしいものやら私には分りません。平成九年に90歳のお誕生日を迎えられた大検校さまの語られるさりげないお言葉のひとつひとつに、プッと吹き出したり、ハッとしたり、頷いたり、ジーンとしたりさせていただきながら、何とも気持ちが良くて爽やかで、そして最後に、しみじみと熱い想いが残りました。



     「父がよく言いました。
     『あんたなぁ、一生懸命やるのはええけど、
     ええ気になったりしたらあかんで』とね。
     私もそう思うて生きてきました。
     芸は人となり。威張ったらいかん。
     芸でその人の人柄が分りますからなあ。」



     「失明して良かった、ずっと幸せであった。
     今も青春、来世でも地唄をやる・・・。」



とても良い本でございます。
どうぞ皆さま、お手に取って是非一度お読み下さいな。
お稽古場の文机にも一冊おいてございます。
コメント (3)
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