市長意見において田辺市長は「<条例第15条の投票結果の尊重>に対して成立要件としての投票率を決めないと、投票率が下がった場合に、どの意見が多数の意見といえるかわからない」と問題点として指摘しました。
この理屈で行くと、2017年市議会議員選挙の投票率41.16%で選出された議会の議決で市民の過半数が賛成している、と強弁する田辺市長の根拠はどうなるのか、です。さらに2017年市議会議員選挙において「清水庁舎移転」は争点になっておらず、有権者にそのことを問うていません。
昨年の市長選挙の投票率は48.76%、田辺市長の得票数は13万8454票、有権者総数は58万4837人の23.67%に過ぎず、5万2300人の署名数はその37%に当たります。市長意見は、市長選挙でも市議会議員選挙でも最低得票率を条例で定めよう、になります。
請求代表者の一人、長倉正昭さんは、投票率の低下という政治不信、民主主義の危機に、住民投票を実施することが、有権者の関心を高め静岡市の市民自治を進化させると、意見陳述をしています。賛成討論ではその点を強く主張しました。
※住民投票条例臨時議会賛成討論 2020年8月7日
上程されています第149号議案に、緑の党として市長意見に反対し条例制定に賛成の討論を行います。4日の総務委員会においてはこの条例制定議案は賛成少数で否決されました。本日のこの討論のあとに採決が行われますがマスコミ各社が分析するように否決される可能性が極めて高い状態にあります。とはいえ、5万2300人という多くの方々が求めた住民発議の採決の本会議で賛成討論だけで反対の討論もないというのは、議会として正しい選択なのでしょうか。極めて不誠実な対応ではないでしょうか。大変残念な事態であることをまず表明したいと思います。
さて、市長意見に反対し条例制定に賛成する理由を述べたいと考えます。
賛成理由の第一は、住民投票住民発議の条件である有権者数の50分の1を超える、5倍にもなろうとする住民投票の会、住民の皆さんの署名による条例制定発議であるからです。議案質疑で紹介しましたアメリカオレゴン州の規定で行けば、直近の首長選挙の投票総数の6%~8%の署名があれば住民投票が実施される制度に鑑みれば、今回の署名数は市長選挙の投票率48.76%、投票総数28万5142人の18.3%にもあたり住民投票は実施されるべきであります。
賛成理由の第二は、議会の総意と住民の「清水庁舎の移転新築事業」をめぐる意思のズレが存在しており、住民投票によってそのズレを解消する必要であるからです。2017年2月から2019年9月議会の議決までの間に、市長意見でも総務委員会答弁でも、アンケートやワークショップ、パブコメなどいろいろな手法で市民意見の集約を図っては来たので理解は得られている、を繰り返すばかりです。一方で、反対の住民とは真摯な対話は行われず、マスコミ各種の世論調査でも反対が賛成を上回っており、移転が市民の過半数の賛成を得ているかどうかについては明確になっていません。この乖離をうずめるものとして、二元代表制における議決機関としての議会が2019年9月議会で事業を承認したことが過半数の賛成が得られている根拠と強弁をしています。しかし、2017年の市議会議員選挙において、「清水庁舎の移転新築事業」は争点となっておらず、議会を構成する議員各自はこの問題を有権者に問うていない経緯がある以上、住民投票の実施は当然ということになります。
賛成理由の第三は、スキームの転換やコロナ禍の事業凍結、という「移転新築事業の根幹」にかかわる新たな事態が発生し、市長は「9月をめどに方向性を示す」としていますが、PFI手法の危うさ やコロナ禍第2波真っただ中に簡単に方向性は打ち出せず、だからこそ、住民の意思を住民投票で確かめる必要があるからであります。
第一次入札に民間が応じなかったのは、民間ビルによる賑わい創出というPFI事業の付帯事業の困難さであります。そして、その後のコロナ対策において経済を強制的に止めざるを得なかった、そのことによるリーマンショックを越える経済不況が生まれています。PFI事業のへの消極的傾向はさらに強まり、そうしたことを踏まえて「コロナ対策を優先し、事業を凍結」という判断に至った経過があります。コロナ感染は第2波の真っただ中、GO TOキャンペーンどころではない、PCR検査を拡大してほしいと市民の声は広がっており、税収の減少が見込まれる中、公共事業、ハコモノ事業そのものが実施困難な財政状況であるにもかかわらず、コロナ禍以前の財政フレームにしがみついている現状です。
総務委員会では、昨今の諸事情のなかで、「民間ビル切り離し」「庁舎移転のリスタート」について9月メドに市長から方向性が提示されるまでこの議案の継続審議という選択が提案されました。その選択についても徹底した議論をしてほしかったと思います。
賛成理由の第四は、請求代表者の一人である長倉正昭さんが「なぜ、住民投票は必要なのか」についてこの条例を審査する議員の皆さんの、2017年の市議会議員選挙の投票率、41.16%を紹介しながら、政治不信の現況の打開のためにも住民投票の実施が必要であるとの主張に賛同するからであります。
市長意見において、第15条の投票結果の尊重をめぐり、成立要件として投票率を決めないと、投票率が下がった時に、どの意見が市民の多数意見かわからない、との指摘があります。この市長意見の論理展開を突き詰めていくと、市議会議員選挙の投票率41.16%、つまり過半数を割っている投票率によって選出された間接民主制としての議会の決定が多数の意見といえるのか、という本質的問題につながります。
そもそも、市長選挙の投票率も48.76%、田辺市長の得票数は13万8454票、有権者数58万4837人の23.67%に過ぎない、のに静岡市を代表しているとして、住民投票条例の第15条にこだわった論を展開しています。あげくに、本会議質疑において5万2300人の「署名は、清水の街づくりについて高い関心が寄せられたものとであると受け止めています」と平然と言ってのけています。市長の得票数の37%の署名数です。
私たちの静岡市の民主主義は、投票率において、形がい化しつつあるということにどれだけの危機感を私たちは持てているのでしょうか。市長意見の理屈で行けば、市長選挙でも、市議会議員選挙でも最低投票率を定める条例を制定しなければならないということでもあります。
長倉氏は、だからこそ、民主主義制度を進化させる、投票率を上げていくためにも、関心を持つ住民が5万2300人もいらっしゃる、民主主義の危機を打開するために、住民投票の実施が必要であることを強く主張されました。
昨年の浜松市議会議員選挙、住民投票が一緒に行われた浜松市議会議員選挙の投票率は56.25%でした。9月めどの一定の方向性を示すことは困難でしょうから、来年3月の静岡市市議会議員選挙に一緒に住民投票を実施してもいいわけです。住民投票実施の2億5000万円問題も解決します。私はこの発言に感銘を受けました。
請求代表者の皆さんの言葉は民主主義の声でもあります。
最後に、市長は「間接民主制を補完すべき事項とまでは言えない」として住民投票条例制定に反対しています。住民投票制度は間接民主制の補完というレベルを超えて、密接に組み合わせることで、民主主義制度の進化をもたらします。静岡市の民主主義を、市民自治を発展させていくために一人一人の議員の皆さんが賛成の立場を表明してくださることを切に要望して討論を終わります。