グリン・ゲイブルスの話をする前に、アンの部屋について。
順番が違うけど、そんな気分の梅雨の日です。
1997年にグリン・ゲイブルス敷地改造事業が完了したのだとか。
たしかに、新しい建物でした。
そして、アンの部屋。
そうか、こんなに狭い部屋だったのかと、実際に見て納得。
もっと広いイメージを持っていたけど、日本で言えば、四畳半くらいの広さ。
こじんまりして、女の子らしい部屋でした。
だけど、アンがグリン・ゲイブルスにやってきたばかりのときには、この部屋は、とても殺風景な寒々とした部屋だったのです。
「むきだしの白壁は目が痛くなるほど白かった。
壁だって、ずきずきした痛みを感じているにちがいないと、アンは思った。
床もむきだしだったが、真ん中のところに、アンがこれまで見たことのないような、丸い、編んだ敷物がしいてあった。
部屋のすみには四本の黒ずんだ棒でささえられた、腰の高い、旧式のベッドがすえてあった。
もう一つのすみには例の三角テーブルがあって、どんなに太い針の先でも、曲がってしまうだろうと思われる、固いふくらんだ赤いビロードの針山がかざりについていた。
その上のところには、幅六インチ長さ八インチの鏡がかかっていた。
テーブルとベッドの真ん中に窓があいていて、氷のように白い、モスリンのひだべりがついており、それと向かいあわせに洗面台が置いてあった。
部屋全体がいかつさそのもので、言葉では何とも形容できなかったが、しかしアンは骨のずいまでふるえあがるのを覚えた…」
この「東側の切妻の部屋」。
これがアンの部屋になりました。
ところが一年が経ち、部屋はすっかり表情を変えてしまいます。
「根本的にはこの小さな東の部屋は変わってはいなかった。
壁は白く、針刺しはかたいし、黄色の椅子は窮屈にまっすぐ立っていた。
しかし、部屋の性格はまったく変わっていた。
新しい、いきいきと脈打つ個性が部屋じゅうにあふれていた。
それは学校がよいの少女の書物やら服やらリボンやら、またテーブルの上のふちの欠けた青いつぼいっぱいにさしてあるりんごの花などともべつのものであった。
この部屋に住む快活な少女が、夜となく昼となく見ている夢が、目には映るが手にはとらえられない幻の姿になって、殺風景な部屋いっぱいに虹と月光の織物をかけまわしたかのようだった…」
さて、先だって訪れたプリンスエドワード島、グリン・ゲイブルスのアンの部屋。
どう考えても東向きではないのではないかと…、わたしは疑っています。
どうせ復刻してグリン・ゲイブルスを建てるのなら、本のとおりの間取りにすればいいのに。
それはともかく、アンの部屋は、こんなふうな女の子らしい部屋に。
茶色いふくらんだ袖のドレス。
アンが孤児院からきたときに持っていたカバン。絨毯地の布製の手提げカバンです。
こんなアンの物語ゆかりの品物も、置いてありました。
そして、壁は白壁ではなく、素敵な壁紙が貼ってありました。
まあ、アンの物語世界でも、数年後には、こんな壁紙を貼ったかもしれないので、これはありだと思います。
しかし、敷物が独特の、布を丸く編んだものではないので、その点は腑に落ちません。
いずれにしても、物語の世界の住人であるアンの部屋が、現実のように展示されているのを見るのは、なんだかとっても楽しい気分でした。
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