サラ☆の物語な毎日とハル文庫

『はてしない物語』~ウユララのお告げ

ファンタージエン国の女王、幼ごころの君が病気になったのと、虚無の浸食が始まったのは、ほぼ同時期でした。
どうすれば、この危機を回避することができるのか?
女王幼ごころの君を健康を取り戻し、ファンタージエン国を救う方法を探す役目は、「緑の肌」と呼ばれる大草原に住む種族の少年、アトレーユに託されました。

そしてアトレーユは苦難の末に、幼こころの君に新しい名前をつけることができれば、女王もファンタージエンも救われることを突き止めました。
では、だれがその新しい名前を女王に差し上げることができるのか?
そのことを告げられるのは、南のお告げ所にいるウユララだけです。
アトレーユはお告げ所に行き、魔法の鏡の門を通り抜けて“静寂の声”であるウユララに答えを求めます。
それはこんな答えでした。


それではだれが女王さまに、
新しい名をさしあげるのか?
おまえでもなくわたしでもない。
妖精でもなく魔鬼でもない。
幼ごころの君をお救いし、
ふたたび健やかなお体にし、
われらを禍から解き放つもの、
それはわれらのうちにはいない。
われらは本の中だけの生きもの、
つくられたままに動くのみ。
ものがたりの中の像や夢、
あるがままにあるのがつとめ。
新しいものを創りだすのは、
賢者であっても王であっても
子どもであってもできはしない。
けれどもファンタージエンのかなたに、
「外国(とつくに)」という国があるのです。
そこに住むのは――富める人びと、
このわれらとはちがうのです!
地上の国のその自由民たちは、
いみじくもアダムの息子イブの娘、
人間種族、力あるみことばの血兄弟と呼ばれます。
かれらはみな、世の創まりより、
名づけの才に恵まれています。
いつの世にも、幼ごころの君に、
新たな美わしい名前をささげ、
君のお命をもたらしてきたのです。
ところが、すでに絶えて久しく、
人間はファンタージエンにこないのです。
かれらはもはや道を知らず、
われらがほんとうにいるのを忘れ、
信じなくなってしまったのです。
ああ、人の子が一人でもくれば、
それですべてはよくなるものを!
ああ、一人でも信じてくれれば!
かれらには近いが、われらには遠い、
かの国への道はあまりに遠い。
「外国」はファンタージエンのかなた、
そこへゆくのはわれらにはできない――
だが、若き勇士よ、
ウユララのことばを
心にとめてくれますか?
(『はてしない物語』岩波書店より)

コメント一覧

ミストラル
読んだことあります
「はてしない物語」は、ほんとにはてしなく続きそうですよね。
書店に行って買ったのですが、まだ半分までしか読んでません・・・
子どもができたら、ぜひとも読ませたい一冊ですよね
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