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まるの日<へミシンクとミディアムな暮らし> ※ブログ引っ越し中

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第14話 『縁(えん)』

2012-12-27 18:11:52 | 『日常』


さて、この話は過去世からの縁とヒーリングとレトリーバルと、そのあたりの見え方、感じ方の参考になれば、
ということでアップさせていただいている小説ですが。
一応、お話なんで盛り上がる部分を作らないといけないので、こういう感じになっております。
私の書き方だとかなり淡々としていたので、妻による加筆修正が一番多かったのもここ。
という事で。主人公が主人公らしいことをしているところをお楽しみください。



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そのまま近くの駅に走り込み、切符を買って止まっている電車に乗り込む。

ローカル線なので席は空いている。
ボックス席に向かい合わせで座って、二人息を整えていた。

電車が走り出して、やっと落ち着いてきた。
「と、とりあえずごめん!」
先に謝ってしまえ、と祐一は外葉に向かって頭を下げた。
その頭を外葉がぽんと叩く。
「まったく、あんなに人前でズバズバと。よく言えたわね。」
祐一が顔を上げると、外葉は真っ赤になってこちらを見ている。
「いや、あの場はああいうしかなかったんだ。あの場合あのやり方しか無かった。外葉は気に入らないと思いながらもやるしかなかったんだ。勘弁してくれ。」

「私が言いたいのは、いきなりだったのが嫌だったのよ。もっとムードとかそういうものもあるでしょう。」
「?」
祐一は自分が好き勝手に外葉を彼女であるかのように言い放った事に腹を立てているかとおもったら、自分が思っていることと少し違うような気もして、少し外葉をじっと見てみると、外葉は真っ赤になったまま祐一を見て言った。
「お母様から許可も得て、だなんて、あんな大胆なことを良く祐一君は言えたわね。」
「その場の勢いだよ。済まない。」
「あなたが謝ることはないわ。私のほうこそお礼を言うわよ。あの男と一緒に行ったらどうなっていたかと思うとゾッとするわ。ただ、なんというか、いきなり過ぎて。」
そう言って窓の外を見る。

「その場の勢い、ね。」
ポツリと、外葉がつぶやいた。
本当に、それだけ?
そう聞いてみたい誘惑に駆られたが、外葉は口には出さず。しばらくは二人共無言でいた。
なんというか、しゃべるタイミングが難しい。

「それにしても祐一君は度胸あるのね。」
しばらくして外葉が言う。
「大人に対してあんなに、堂々と言えるような男子には全く見えなかったから。びっくりして固まっちゃったわ。」
「必死だったからね、あの男の嘘も見え見えだったし。こっちも嘘ついてやれって思って。」
と言いながら、これも桜火のリアルタイム入れ知恵である。

「ちょっと見直しちゃった。」
そう言って外葉はとびっきりの笑顔を祐一に向けた。
その笑顔に少しの後ろめたさを感じて頭を掻く。
ガイドの話しするべきかな。
過去世の話については、すんなり受け入れてもらえた感じだったので。
それに、もうここまでやってしまったので、いまさら変な目で見られてもいいか、
という半ばヤケになっている心境もあったことはあった。

「なあ、外葉は、守護霊みたいなのを信じるか?」
いきなりな話題だったので、キョトンとして祐一を見る。
「いや、今日の出来事とか、今までの出来事について。本当のこと話しておこうと思って。」
「本当のこと?」
「前回過去生に関しては、意外とすんなり受け入れてもらったから、こういう話は大丈夫かと思って話すのだが。大丈夫か?」

「ええ、そういう話は大好きよ。」
「そうか。じゃあ話が早いや。さっきの状況、俺が度胸あった訳ではないんだ。俺に付いているガイドの声に従って行動したんだ。大まかに言うと。」
「ガイドって、守護霊さんみたいなの?」
「守護霊とも厳密に言うと違うのだけど、似たようなもんかな。」
「え、祐一君そういうのが憑いている?」
「憑いてるって、みんな誰にでも憑いているよ。」
「じゃあ、見えるの?」
外葉が探るような目つきで祐一を見た。
しかし、その奥には好奇心の光が強く見え隠れする。

幼少の頃に向けられていた軽蔑や恐怖ではない、純粋な好奇心の目。

それを見て、祐一は安心した。
そして
「ああ、見える。」
と言った。それを聞いて、外葉の表情がぱっと明るくなった。
「その話、聞かせて!」

祐一は今日の出来事の流れを、午後学校で会ったあとくらいから話始めた。
外葉はその話を茶化すわけでもなく、真剣に聞いている。
話はそのままヒーリングの時の話にもなり。
祐一の見えていたことを、話すことができた。
そこには、前回言っていなかった、自分の過去世が外葉の過去世を殺してしまった件も話した。
途中、二人の間柄の話になると、ちょっと外葉は涙ぐんだりして。
過去生で行われていた人間ドラマに引き込まれていたようだった。

全部 外葉が聞き終わったのは、レールバスに乗り換えて二駅ほど過ぎたところ。
「素敵ね、そういうふうに見えるっていうのは。」
自分の話を聞いて、そういう事を言われたことが今まで無かったので祐一はうろたえた。
「人の見えないものが見えて、声が聞こえて。いいなぁ、私もそういうのあったらいいのに。」
素直に受け入れて、素直に感想を言ってくれる。
それが嬉しかった。

「でも見えることはそれだけ責任が出ること、と八坂さんのガイドに言われていて。最近はそれを重々体験させられているとこだよ。」

「責任か、そうかもね。生まれながらにして持った力、でもそれを人のために使っているから素敵じゃない。」
「人のためになっているかな?」
「少なくとも、私のためにはなっているじゃない。」
外葉はそう言ってにっこりと笑った。

俺のこの力も、人の役にたてているのか。
その笑顔を見て、なぜか涙がこみ上げてきた。
今まで、自分が長いこと拒否して隠そうとしていたことが人の役にたつ。それも目の前に居る外葉の役に立っている。
その表情を見られまいと、急いで窓の外に目をやる。

これが、縁というものなのかな。

今回、過去生からある縁により二人はつながり。そして祐一は自分の存在を認めてくれる人に出会えた事。
ガイドたちの計らいに感謝かな。
そんなことをつい思ってしまった。
「それにしても、祐一くんのガイドさんは綺麗な女の人で、私のは中国ふう仙人、というのが何か嫌だわ。」
「そう言っても、そうなんだからしょうがないだろう。」
「私も美人のガイドがいいなぁ。」
「あ、ヒーリングの時は仙女のような綺麗な人いたなぁ。」
「え?それ、どんな感じ?」

そういう会話をしながら、二人はサロンに到着した。
そこでは相変わらずのんびりとした感じで八坂が待っていた。

今日もいい天気なので、外でお茶を頂く。今日はセイロンティーらしい。
「今日はね、近くの奥さんが一人でやっている、小さなパン屋さんのクッキーなんだけど、これが絶品でね。」
とまた嬉しそうに八坂が説明していた。
「この近くって、たくさんケーキ屋さんとかあるんですね。」
外葉がそう言うと、八坂はカップを手に取りながら、
「パン屋で五件くらい、おかしやさんだと四件くらいあるかな。フランス菓子、イギリス風菓子、ドイツ菓子、プリンの専門店なんかもあるし。パン屋さんもそれぞれこだわっているからね。そこをめぐってお菓子買うだけでも楽しめるよ。」
「いいなぁ、羨ましい。」
「でも、その分運動しないと、太ってしまうけどね。」
そう言って八坂は軽く笑った。

しばらく美味しいケーキ屋さんの八坂ランキングなどを話して、
「そういえば、今日は祐一君大活躍だったらしいね。」
と八坂が振ってきた。
「え、なんで、知っているの?」
「丙がそう言ってたよ。」
そう言って笑っている。あれ?これまでは丙の存在のことなど外葉の前では一切話してなかったのに。
と思っていると、
「宇垣さんは、もうガイドの話は祐一君から聞いて居るだろう?」
と外葉に聞く。外葉がうなづくと
「これも丙が教えてくれたんだ。」
そう言ってまた笑った。細い目が更に細くなる。
「まったく、八坂さんはどこまで知っているんだか。」
「知ることができる範囲だけさ。ガイドの教えてくれる範囲だけ。
だから、今日の君たちが行ったお大立ち回りについては内容までは知らないんだ。よければ教えてくれないかな?」

八坂がそう言うので、祐一と外葉はいきさつと、顛末をかいつまんで話した。
「なるほどね。まあ、それはそれで良かったと思うよ。その男も懲りただろうし。それに、もうその男も宇垣家には出入りできなくなるだろうしね。」
半ば上を見上げながら言うその言葉はガイドの声を聞いているのか、それとも別の情報を読んでいるのか。
祐一にはそこまではわからなかった。
「それは本当ですか?」
外葉が聞くと。
「そりゃあ、母親は自分の子供が大切に決まっているからね。」
と言って微笑んだ。
「お母さん、本当に私が大切なのかしら。」
ポツリと外葉がつぶやく。
「それを表に出すのが苦手な人なんだよ。今回の一件を聞いて、どう反応するかを見てみればよくわかるよ。」
八坂はそう言った。
なんの裏付けもないのだが、八坂がそう言うと本当にそうなりそうな気がするので。
本当に不思議な人だ。
祐一は会うたびにそう思わせられる。

「さて、二人は付き合うことになったのなら、ベッドは同じでいいかな?」
思いがけぬ言葉に
「ばばばばっ馬鹿か。」真っ赤になって、祐一は猛烈に反抗した。
外葉は真っ赤になってうつむいてしまう。

「冗談だよ、駆け落ちした若い二人をからかって見たくなっただけさ。」
細い目がさらに細くなる。

八坂の冗談は、笑えないものが多すぎる。
それとも、こうやってからかうのが好きなだけなのか?





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先日は丙さんのイラスト、ありがとうございました。やっぱり可愛い!目の強さも魅力です。 (toshi)
2012-12-28 01:06:22
小説も面白い!確かにブログではあまり感情を交えずに淡々と表現されてますよね、客観性は必要ですから。
レトリーバル場面が圧巻でしたが、生活でのガイドとのやり取りなど小説にするとわかりやすいですね。まるでSFですがノンフィクションが元ですから現実は小説より奇なりです。
スピーカー、クラブに似合いそう。音も時々、光線やボールで飛んできますからね。そのあたりを探ろうと思います。
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