母が入院している病院は、つくばエクスプレスの沿線にある。こんなことでもなければ乗ることがなかったろう。
秋葉原で乗り換える。そういえば秋葉原も通り過ぎるだけで降りることのない駅だった。
病院のある駅は寂しい。秋葉原から20分くらいなのに別世界に来たような気がする。
駅の傍には閑散としたスーパーマーケットとドラッグストアがあり、そのビルの2階にサイゼリヤがある程度だ。
駐車場がやけに大きい。もう片方の出口にはタクシー乗り場とバスターミナル…、土地が広い分、よけい寒々しい。
病院は歩いて15分ほどのところにある。通りに添って歩き始めると悲しいくらい何も無い。
畑ですらない広大な空き地の真ん中を道路が貫いている。途中にコンビニが一軒、ぽつんぽつんと人家が見える。
冷たい風に吹かれて歩いていると、頭の中は母のことでいっぱいになる。
病院に着くと少しほっとする。暖かいし人もたくさんいるから。けれど集中治療室に入ると、また悲しい気持ちになる。
母の他に2人、母と同様、目覚めない人たちだ。窓際の男性のベッドの傍らでは、私と同じ年くらいの女性が一生懸命、
夫に語りかけている。ときどき目を開けるらしい。もう1人も男性で60歳代くらいだろう。喉を鳴らしながら眠り続けている。
私は今まで、こんなに悲しい場所に来たことがなかった。でも母の傍に座って、少し汗ばんだ暖かい手を握っていると
心が安らぐ。眠っている母を見るのは好きだ。やつれてもいないし青ざめてもいない。ただ時おり苦しそうに咳をする。
痰がからまって呼吸が楽ではないのだ。今目覚めることが叶わないのなら、せめて眠りが安らかであってほしい。
そう願いながら時間を過ごす。
それから来た道をとぼとぼと引き返す。年が明けてから毎日寒いなあ…。
昨夜テレビで由紀さおりの<夜明けのスキャット>が流れていた。母が好きだった曲だ。その話をしたら、娘が
「じゃあ、録音しておばあちゃんに聴かせてあげよう」と言った。
今日はCDを探しに行こう。
お見舞いに行くほかは、私の日常は大して変わらない。ギターも弾くしフィットネススタジオにも行く。
ネットでスペインのドラマを見ている。スペイン語は半分も聴きとれないけれど不思議とストーリーは分かる。
人間の思いや迷いは一緒だから。
ときどき気晴らしもする。ただ、心の奥に今までは存在しなかった寂しさがある。
秋葉原で乗り換える。そういえば秋葉原も通り過ぎるだけで降りることのない駅だった。
病院のある駅は寂しい。秋葉原から20分くらいなのに別世界に来たような気がする。
駅の傍には閑散としたスーパーマーケットとドラッグストアがあり、そのビルの2階にサイゼリヤがある程度だ。
駐車場がやけに大きい。もう片方の出口にはタクシー乗り場とバスターミナル…、土地が広い分、よけい寒々しい。
病院は歩いて15分ほどのところにある。通りに添って歩き始めると悲しいくらい何も無い。
畑ですらない広大な空き地の真ん中を道路が貫いている。途中にコンビニが一軒、ぽつんぽつんと人家が見える。
冷たい風に吹かれて歩いていると、頭の中は母のことでいっぱいになる。
病院に着くと少しほっとする。暖かいし人もたくさんいるから。けれど集中治療室に入ると、また悲しい気持ちになる。
母の他に2人、母と同様、目覚めない人たちだ。窓際の男性のベッドの傍らでは、私と同じ年くらいの女性が一生懸命、
夫に語りかけている。ときどき目を開けるらしい。もう1人も男性で60歳代くらいだろう。喉を鳴らしながら眠り続けている。
私は今まで、こんなに悲しい場所に来たことがなかった。でも母の傍に座って、少し汗ばんだ暖かい手を握っていると
心が安らぐ。眠っている母を見るのは好きだ。やつれてもいないし青ざめてもいない。ただ時おり苦しそうに咳をする。
痰がからまって呼吸が楽ではないのだ。今目覚めることが叶わないのなら、せめて眠りが安らかであってほしい。
そう願いながら時間を過ごす。
それから来た道をとぼとぼと引き返す。年が明けてから毎日寒いなあ…。
昨夜テレビで由紀さおりの<夜明けのスキャット>が流れていた。母が好きだった曲だ。その話をしたら、娘が
「じゃあ、録音しておばあちゃんに聴かせてあげよう」と言った。
今日はCDを探しに行こう。
お見舞いに行くほかは、私の日常は大して変わらない。ギターも弾くしフィットネススタジオにも行く。
ネットでスペインのドラマを見ている。スペイン語は半分も聴きとれないけれど不思議とストーリーは分かる。
人間の思いや迷いは一緒だから。
ときどき気晴らしもする。ただ、心の奥に今までは存在しなかった寂しさがある。