2007年12月22日、冬休み前の最後の授業は文化クラス。 普段はローマさん(日本の伝統文化が大好きで、剣道を嗜み、独学で書道をやっている私の学生)がいろいろなテーマで日本の文化を紹介している。 昨年度までの文化クラスとは違って、今年度の文化クラスは学生たちの出席率も高い。 ローマさんのがんばりがこの結果を生んでいるのだろうと思う。 日本から遠く離れたこの国で、日本人にはほとんど知られていないこの国で、こんなに多くの人たちが日本に興味を持ち、日本語学習に励んでいるというのは本当に驚くばかりである。 これからもこんなモルドバの人たちのことを少しでも日本の人々に伝えていきたい。
12月22日の文化クラスのテーマは「日本の音楽」。 まずはローマさんがスライドショーやムービー、実際の音源を使いながら、日本の伝統楽器、伝統音楽を紹介していく。 日本の若い人たちの多くは、このような伝統楽器を見ても、きっと名前が言えないのではないだろうか。 日本にいると、すべてが当たり前のように感じられて、逆に日本の伝統音楽に触れる機会も少ないように思える。 楽器が好きなので、尺八か三味線をやってみたいと思ったこともあったのだが、楽器の値段も高く、習うのにもお金がかなりかかるので、結局そのときはあきらめた。 いつかやってみたいとはまだ思っているが…
ここでモルドバですばらしい演奏を披露してくださった二十弦琴奏者の中垣雅葉さんを紹介したい。 私自身生まれて初めて二十弦琴の演奏を聞いたのだが、そのすばらしい音色に本当に感動した。 雅葉さん本人もその洗練された琴の音色のように本当に素敵な方。

ホームページ: http://home.t03.itscom.net/koto/
さて、ローマさんの伝統音楽の紹介が終わり、いよいよ自分の出番。 去年も文化クラスで一度、それから自分の誕生日のときにギターで日本の歌を歌ったが、この日ここに来た一年目の学生たちの前で披露するのはこれが初めて… 30人以上の観衆の前でギターを弾くのもまたこの日が初めてだった。

1曲目は去年も弾いた「夏色」(ゆず)。 元々ギターに触りだしたのは兄の影響だったが、そのときに最初に出会った曲もゆずの曲だった。 今回は何とローマさんがドラムで参加。 ちなみに、私の影響でローマさんも今やゆずのファン。 一緒に練習する時間がなく、文化クラスの直前に一度少し合わせただけ… そして、本番。

学生の拍手に包まれ、無事終了。 さらに、もう1曲ローマさんと演奏したのは「する~」(ゆず)。 何と1分以内で終わってしまう、自分が知っている中では一番短いラブソング…
この後も、曲名、アーティストの紹介、また歌詞を少し英語で説明しながら、弾きまくる…
[ 演奏した曲 ]
01. 「夏色」(ゆず) w/ ローマさん
02. 「する~」(ゆず) w/ ローマさん
03. 「JAM」(The Yellow Monkey): 歌詞を紹介したくて…
04. 「あなたに」(モンゴル800): 最近個人的にはまっているモンパチ
05. 「小さな恋のうた」(モンゴル800): もういっちょ、モンパチのラブソング
06. 「I Love You」(尾崎豊): 去年の学生たちも鼻歌で口ずさんでいる曲
07. 「バンザイ」(ウルフルズ): これもまた去年の学生たちに大好評だった曲
08. 「Train Train」(The Blue Hearts): 日本のロックと言えば…
09. 「リンダリンダ」(The Blue Hearts): この2曲は抑えておかないと…
10. 「シーソーゲーム」(Mr.Children): 大好きなミスチルの曲
11. 「しるし」(Mr.Children): 時にはしんみりバラード
12. 「琉球愛歌」(モンゴル800): 歌詞が好きなので…
13. 「夢叶う」(モンゴル800): 最近の日本を象徴した歌詞、それでも夢は叶う
14. 「Everybody Goes」(Mr.Children): 去年も大好評、今回は歌詞も紹介
15. 「車の中でかくれてキスをしよう」(Mr.Children): 去年学生たちに一番講評だった曲
16. 「春風」(ゆず) w/ ナステアさん
そして、いよいよ最後の曲に… この曲を一番最後に持ってきたのには訳がある。 原曲は「春風 meets 葉加瀬太郎」というタイトルになっていて、バイオリニストの葉加瀬太郎さんが演奏に加わっている。 確か金曜日(文化クラスの1日前)の午前中にローマさんから「春風」をぜひ弾いてほしいという電話があった。 当初、全く弾く気はなかったので、スコアさえ印刷したものがなかった… しかし、何とローマさんの彼女のナステアさんがバイオリンで合わせてくれるというのだ! すでに原曲を聞いて、バイオリンのパートは譜面に落としたとのこと… 一緒に練習する時間は当然ないので、それなら、原曲のままこっちも弾くしかない! 辛うじて、コンピューターの中にはスコアがあったので、原曲を聞きながら、前奏、間奏、後奏の部分のコードを書き込む。 普段、自分で弾くときは前奏や間奏は適当にアレンジして弾いてしまうのだが、今回は原曲どおりやらなければいけない。 実際に曲を聞きながら、何度も練習… 夕方にローマさんに会って、印刷したスコアをもらった。 そして、全く一緒に練習しないまま迎えた本番… 音あわせをして、いよいよ緊張のスタート…


自分のギターの音に、まるで原曲のように、隣からバイオリンの美しい音色が合わさる… 歌いながら、鳥肌が立つぐらい感動していた… 「音楽の世界に国境はない」、そんなことを思いながら、演奏していた。 間奏のバイオリンのパートもその音色に感動しながら、聞いていた。 初めて一緒に合わせたので何箇所かお互いに「あ、間違えた…」と苦笑いを浮かべながらの演奏だったが、一生忘れることのない感動的な一時だった。 そして、学生たちからの大きな大きな拍手に包まれながら、2007年 最後の文化クラスは無事終焉を迎えた。
音楽は本当にすばらしい。 テクニックは全然ないのだが、適当に楽しめるぐらいにギターが弾けて本当によかったと思った。 今でも「春風」を聞くと、あのときのことを思い出す。 これを通して学生たちが日本の音楽やさらにその歌詞に興味を持ってくれたらうれしい。