ハイ・クラス・ホステルで迎える3日目の朝。 顔を洗って、シャワーを済ませたころにはもう8時、このままだと8時半の電車に間に合わないとホステルを出ようとすると、「駅までは車で送っていってあげるから、ちゃんと朝ごはんを食べていったら。」という優しい言葉に甘えて、おいしい朝ごはんをいただいたあと、ホステルを出る。 時間が迫っていたこともあって、モニカさんが切符を買うのも手伝ってくれて、何とか8時35分のプトナ(Putna)行きの電車に乗り込む。
『世界の車窓から』の音楽が流れてきそうな電車の中の雰囲気と外の景色。 左右に広がる野原の間を電車はゆっくりと進んでいく。 そんな電車に揺られること2時間半、プトナ駅に到着する。 ホステルのある北スチャヴァ駅ものどかなところだが、それにも増してのどかなプトナ駅。
気持ちのいい自然の空気を吸いながら、モニカさんの手書きの地図を片手に足を進める。 めったに見ないであろうアジア人に対してもみんな笑顔であいさつしてくれる。 そんな雰囲気が素敵。 歩いていると、庭先から鶏の鳴き声が聞こえてくる。
駅から地図をもとに15分ぐらい歩くと、プトナ(Putna)修道院にたどり着く。
この修道院にはステファン大公(Stefan the Great)のお墓があり、ルーマニアの人々にとって特別な意味を持つ修道院だということである。 この修道院は1466年から1470年の間にステファン大公(Stefan the Great)によって建てられたが、火事や地震などにより何度も破壊され、現在の建物はその後再建されたものである。 ステファン大公(Stefan the Great)にまつわるものとして、当時使われていた鐘も見ることができる。 修道院の隣の建物は後に博物館として再建され、その中にはステファン大公(Stefan the Great)にまつわるものが数多く展示されている。
プトナ(Putna)修道院から歩いて10分ほどのところにヨーロッパ最古の木造教会と言われているドラゴッシュ・ヴォーダ(Dragos Voda)教会がある。 華やかなフレスコ画に包まれた修道院とは異なり、丘の麓に静かにただずむこの教会。
駅の近くの川沿いの道を歩いて行くと、隠遁者(祈りと瞑想の宗教的生活をした人)ダニール・シハストル(Daniil Sihastru)の石窟がある。
さて、ここプトナには1日3本しか電車が走っていない。 帰りの電車まではあと2時間、しかしながら、まわるべき場所はすでにまわってしまった。 ということで、のんびりとしたプトナの空気を楽しみながら散歩をする。 丘のほうから鐘を鳴らす音が聞こえると思えば、そこにはたくさんの羊を引き連れた羊飼いの姿。 木材やわらを載せた馬車が軽快な音を鳴らしながら、駆けていく。 川はゆっくりと流れ、ガチョウや犬の鳴き声が響き渡る。 忙しい毎日からはまったくかけ離れたこの空間… 毎日がこうやってゆっくりと流れているのだろう。
そんなことを思いながら、歩いていると、遠くのほうから子供たちの声が聞こえてくる。 川沿いの広場でみんなでサッカーをしている。 暇だったので、近くまで行ってみると、めったに見ないアジア人にみんな興味津々。 ルーマニア語で何とかコミュニケーションをとる。 結局、一緒にサッカーまですることに… サッカーをしている間、みんな教えてあげた「こんにちは」をひたすら連呼! 顔を見るなり、「こんにちは!」、ボールを蹴るなり、「こんにちは!」。 誰か知り合いが通るたびに、「この人、日本から来たんだよ!」と一人一人に紹介。 ここに国境なんてない。 息を切らしながら、プトナの子供たちとサッカーを楽しむ。 「もう時間だから、行かなきゃ…」というと、「もう1日、ここにいればいいじゃん。」と子供たち。
愛くるしい子供たちの笑顔に見送られながら、プトナを後にする。
素晴らしい星空の下、駅から歩いてホステルに戻り、モニカさん、今朝から泊まりに来ているアメリカ人夫婦とともに談笑する。 全然知らない人だったはずなのに、何だか家に帰ってきたようなこの感覚。 スチャヴァというこの場所、そして、モニカさんのホステル… そして、楽しい夜は更けていく…