まさとん。のダイビング&ツーキニング

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で固めた(?)アラフィフのひとりごと。

「外交の力」~書評

2009-06-03 | 
この本は、拉致問題を担当した田中均という外交官が、

外務省を引退して著した自伝的提言です。

外交の一線にいたヒトが退官後あまり時間がたたないうちに自分がしてきた仕事について語るというのは日本では珍しいことです。

この点においても、彼が普通の外交官ではないことがうかがえます。

詳しい経歴についてはいつもの(?)Wikipediaを見てください。

 

彼の写真を見て、「ああこの人か」と思われる方は、

比較的よくのニュースを見ているといえるでしょう。
(エラソー


交渉手法は「秘密主義」と揶揄され、

拉致問題に取り組んでいるときは右翼から脅迫されたほどでした。



組織人として、官僚として、交渉途中で明らかにできないことは必ずあります。

私企業でも、M&Aなどを行うときには、インサイダー取引を行ったときは刑事罰の対象になるくらいですから。

そういえばジブンもよくその守秘義務遵守対象者のリストに名前を載せられていましたっけ。





...余談ですね






外交のプロとして、彼は様々な実績を残してきました。

ただいつでも、交渉に臨む原則を立てて、それから困難な交渉を成功に導いていました。

たとえば、拉致問題交渉のときの原則を彼はこのように著しています。

この7つは、普通に仕事に取り組む場合でも、役立ちそうだと思いました。

1.大きな絵(グランド・デザイン)を描く

2.交渉ルートは一本化する

3.その行動によってのみ相手を信頼する

4.一人で交渉せず、必ず交渉記録を残す

5.秘密合意を作らない

6.秘密を守ることは徹底する

7.秘密を守るために、政府部内の協議体制は徹底する



相手は国交のない北朝鮮です。

国交がないということは信頼関係がないということです。

この点に少しでも留意すれば、この7つの原則は至極当然のことばかりでしょう。



また、ジブンも経験がありますが、複雑な交渉を長期間行っていくと、

問題が進んだり、また戻ったりといったことがよくあります。

そんなとき、記録や協議体制をしっかりさせることが大事になってくることを

痛感したことがあります。



彼は退官後、東大の大学院特任教授としてゼミを主宰しています。

田中ゼミからはもう何人も外務官僚を進路として選択した学生がいるそうです。



日頃よく「顔が見えない」とか「アメリカ追随」といわれる中で、

日本外交の実績を顧みたいとき、外交のダイナミズムを体感したいとき、

このを読むことをお勧めします。

読み物としても興味深いと思いますよ。



拉致問題を前進させた、小泉政権下での彼の活躍は、

きっと何年も経ってから再評価されるべきものなのでしょう。


ちょうど、日本のシンドラーと言われた杉原千畝(Wikipedia)のように。



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