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着物の楽しみ方 普段着着物の効果について^_^;

2005年01月23日 | 着物


着物のなにを楽しみたいか?12月のある日、私は考えました。そのキッカケになったのは、普段着である小紋に礼装用の袋帯を締めるのは間違い、という内容の文章を目にしたことからです。なんでもそれは呉服業界の陰謀という話。冷静に考えてみると礼装用の袋帯を普段着の小紋に結ぶのはそりゃ変よね、と点と点が繋がってスッキリしました。常識のひとつとしてわかっていてもみんながそうしていると気が付かないものです。

私は着物デビューから20年を迎えます。種類に分けると訪問着、小紋、色無地、夏冬喪服着物と一昔前の女性のたしなみシリーズを取り揃えてはいますが、袋帯のお太鼓結びがいまだに上手にできません。着物自体を着付けることは、これまで度々、着付けてもらっているうちに身体が覚え、そう苦労はしないのですが、長くて重くて幅のある袋帯を結ぶのは大変。慣れてないし、コツを掴んでいないので後ろに手を回していると痛くていつも途中で嫌になります。

それに親に揃えてもらった着物や自分で買った着物など、どれもいわゆる礼装着物の類で、着物は好きだけど、いざ着ると妙にあらたまってしまって、どこのマダムかクラブのママかって具合です^_^;たまたま、着物を着た日に編集部に寄ったら、「maczuくん、集金にきたの?」って言われた事が幾たび…。以前、有名な作家さんの友禅を作りましたが、宮中晩餐会に呼ばれるでもなし(実は行ってみたかったりする)、そんな立派な訪問着を持っていたってそうそう着る機会もなかったりします。

そして、着物について考えるうちに、私の着物に対しての憧れはすべて大正モダンに向かっているということを再認識しました。とても、ずっと、好きな世界。それは竹久夢二の絵や鈴木清順監督の大正浪漫3部作など。大正時代は西洋から洋装がどんどん入ってくる一方で着物文化が途切れることなく、かえって柄がモダンになったり着物のお洒落が活性化した時代です。また、当時の写真を見ると庶民はゆる~い感じで着物をきているんですね。着物を毎日来ているのだから当たり前のことです。柄といえば、以前、池田コレクションを見にいった際に「なんで昔なのにこんな色鮮やかで大胆な柄なんだ!」と驚き衝撃が走った日のことを忘れたことはありません。

私が着物で楽しみたいことは生活の中の着物。お出かけの時に洋服を選び、ジーンズのように気軽に着る着物です。大正モダンを彷彿とさせる柄の着物や小物だったんです。そう考えてみると礼装系にはない心引かれる柄の着物は沢山あります。今はアンティーク着物や帯が流行りですし、ポリの着物も柄が豊富で素材感も正絹の着物に負けません。持っていた小紋などもちょっと小物や帯をはずして付けてみると随分と表情が変わります。

楽しみ方が明確になればあとは早いもんです^_^;着物や帯、小物etc。驚くほど安く手に入ります。憧れていた柄や色使いを幾らでも楽しめるのです。長羽織も粋でステキですし、半幅帯は軽くて結びやすくお手軽です。あぁ、私はこんな風に着物を楽しみたかったんだっていま、実感しています。

着物には礼装して行きたい場所や行事、お仕事や食事にとそれぞれのシチュエーションの醍醐味があります。ONとOFFの楽しみとでもいいましょうか。その切り替えを楽しんでいきたいと考えています。

今年の初芝居では沢山の着物姿を目にしとても嬉しかったものですが、まだまだ着物の固定観念というものが現代に蔓延しています。着物を着ていると、「お稽古の帰り?」、「お芝居を見てきたの?」と声をかけられます。立ち寄った着物屋さんでもそうでした。着物を販売している人でもそういう世の中で着物を販売しているという意識があるんですね。その一方で着物は3割増しくらい女性をきれいに見せてくれたりする気もしてます(笑)

さて、「普段着は着物だ!着物を気軽に着よう!」そんなアプローチを始めた新年早々、男性の普段着着物の記事を担当する事になりました。意識変化と行動力の成果はたいしたもんですね~。自分でも驚いています。10ページにわたる誌面では着物を気軽に着るコーディネートや着付け、マナーだけではなく歌舞伎俳優さんや茶道の宋匠、普段着で着物を楽しまれているコラムニストの方にお出まし頂き私らしい記事になりそうな気がしています。

もし、着物を着てみたい。普段からそう考えている方がいらしたら、「私は着物でなにを楽しみたいか?」を考えてみてください。きっと楽しい着物ライフが始まると思いますよ。


画像は一番下が大柄の菊模様の長羽織。その上はローズに竹、梅、菊などを配した帯。一番上が黒地に御所人形の塩瀬の帯です。帯はどちらもアンティーク。

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真葛@泉美咲月

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8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
毎日着物 (ゆきよ)
2005-01-24 02:13:08
>真葛さま

私も、夏の部屋着は浴衣で過ごそうと思い、転居の際に荷物に入れてきました。…結局部屋着に着替える暇もないほど残業続きで、夢は破れたのですが…。

そんな憧れを実践した、群ようこさんの「きもの365日」というエッセイがあります。365日毎日という中には夏の猛暑あり、大雨台風あり、日々の半襟付けあり、なかなか大変なようです。これを読むと、家での普段着物ではなく、ちょっとしたおでかけ着物が一番楽しめるのかな?と思いなおしました。(笑)
小紋に袋帯 (きく)
2005-01-26 12:30:07
小紋に袋帯、実は私の周囲では使う習慣があります。「いかにも礼装」があまり好まれないカジュアルな結婚式のときなどに「なんちゃって礼装」として、わざとそういう着方をするんです。呉服屋さんには怒られそうですが・・・。



理屈というのはいろいろありますが、どこまでが本当かわからないものもいくつかありますね。



たとえば「なぜ9月の暑い日に夏物の着物を着てはいけないの?(今の9月って暑いじゃん)」「なぜ黒紋付=喪服なの?(昔は黒紋付で結婚式に行ってもよかったのに、なぜ今はダメなの?)」などなど・・・。呉服屋さんに聞くともっともらしい理由をつけて「だから、それぞれにあつらえてくださいね」って言われますけれど、眉にツバして聞いています(笑)



ちなみに同業者でいらっしゃるのですね。私は京都で仕事をしております。
レスありがとうございます (maczu)
2005-01-27 13:33:23
>ゆきよさん

私も家ではそうそう着ておりません^_^;普段着というより街着という方が和服の場合、表現が適切でしょうか。



半襟付けは面倒だけど、翌日の事を考えながらワクワクして楽しいですし、新しい着物のしつけ糸を取る時も嬉しくドキドキしてすごくいい気分です。



>きくさん

こんにちは。はじめまして。コメントありがとうございます。



着物が日常着から遠くはなれ、客単価を上げる方向になってからさらに着物離れって進んでますよね。老舗呉服店がつぶれていくし。



常識っていうのも移り変わったり、人それぞれ。着物の世界は特にあっちこっちに壁があるのですが、自分なりの一工夫やお洒落度を加えて自信を持ってきることが必要な時代になっているようにも思えます。私も小紋+袋帯よくやってますよ~。



>ちなみに同業者でいらっしゃるのですね。私は京都で仕事をしております

まぁ、そうなんですね。よろしくお願い致します。私の周りも京都出身のクリエーター、多いですよ。
そうそう (maczu)
2005-01-27 14:41:24
>きくさん

早速、きくさんのブログをお訪ねし、楽しく拝見致しました。



結婚式の着物でお悩みなんですか?

おっしゃってたなんちゃって礼装は私もつかいます。あと、紋入りの色無地で一応、準礼装?とか。色無地の場合、帯を地味にしたら、まるで結婚式場の介添えのおば様みたいになり、以来、出来るだけ華やかな帯を付けるようにしました^_^;結婚式で招いたくださった方の意思にそう形が一番、よいかと思います。教会式にお着物なら小紋でもよいのかと。

着物をもっと楽しみたいですね (きく)
2005-01-28 00:15:18
着物を決まりごとでがんじがらめにしてしまうことで、どんどん人が遠ざかってしまうのは残念なことですね。ちなみに私は東京での生活が長かったのですが、京都の方が結構、柔軟に動いていらっしゃるのが最初は印象的でした。たとえば衣替えは「○○祭りが終わったので」とか「○○の花が咲いたから」と適当に理由をつけて各自実行している方が結構いて、「5月は袷で6月になると一斉に単衣になる」東京とは随分違うし、この感覚が残っているからこそ着物人口がそれなりに維持できているのではないかと思ったりします。



色無地は私も大好きです。着物にはまればはまるほどに色無地のもつ自由さとか、着こなしの楽しさにとりつかれていくようで、次回、お金がたまったら黒の江戸小紋を仕立てようとだいぶ前からあれこれ考えているところです。以前から「喪服でない黒紋付」の着方に興味があったのですが、これはアレルギー反応を起こす方も多いようなので、黒の江戸小紋でチャレンジしたいなあと・・・。



>私の周りも京都出身のクリエーター、多いですよ。



私は京都出身じゃないんですけど、京都に住んでいると自分の希望するしないに関係なく、仕事の方向性が決まってしまうのが悩みです。本当は京都に詳しいとはあんまりいいがたいような・・・。
お約束 (maczu)
2005-01-30 15:45:23
>きくさん いらっしゃいませ。早速、お出ましありがとうございます。



着物の季節のお約束事は粋でいいと感じる一方、その粋をお金で買わなくてはならないご時勢になってくると早々、その「粋」もいかなるものかって気がしています。特に庶民はね~(笑)私は柄に限っては通年、「菊」を強固に通しますが^_^;



黒の着物はかっこいいですよね。芝居でみるような黒のステキな着物にはなかなか出会えませんがやっぱり着てみたい。成人式前に戻れるならばお嬢吉三のような振袖を~←無理



>仕事の方向性が決まってしまうのが悩み

京都に嫁がれたのですね。HPで拝見しました。確かに京都に住んでいるとかなり期待されますよね。でも、それも新分野と思って挑戦なされてみては?きっときくさんならではの視点で面白いものになるような気がします。
着物姿の古い写真 (もや)
2005-05-10 21:06:42
こんばんは。着物のお話、とても参考になります。大正時代ではないのですが、私のサイトにも昭和十年前後の着物の写真を載せてあります。モノクロですが、それなりに当時の雰囲気が伝わってきます。着物ライフの書き込み、これからも楽しみにしております。一層のご活躍をお祈りします。
もやさん (maczu)
2005-05-12 00:40:33
コメント、ありがとうございます。早速、サイトを拝見致しました。今後ともお付き合いのほどm(__)m