毎日配信されるメルマガを流し読みするのですが、昨日(4/5)のnikkeibp.jp MailのSubjectはなかなか挑発的でした。
「これでいいのか、ブログ世界の理不尽な未成熟さ」
以下、メルマガのトップで「今日の一本」として紹介されているサマリーです。
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> 【 nikkeibp.jp 今日の1本 】
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> ●花岡信昭:これでいいのか、ブログ世界の理不尽な未成熟さ
>
> この1カ月ほど、ブログの世界で大騒ぎになった問題を紹介したい。おそらく、ブ
> ログを日常的にのぞく習慣のない人は知らないのではないか。一般のメディアでも
> まったく報じられなかったからだ。
>
> 総務省の予測によると、2007年3月末で、ブログの利用者は782万人、閲覧者は3455
> 万人に達する見込みという。ネット社会の中軸たるべき存在となっているのだが、そ
> の実態たるや、きわめて陰湿、低次元でお粗末きわまりない。匿名で罵詈雑言、誹謗
> 中傷を浴びせあう世界となっているのである。
>
> ■詳しい内容は下記URLから
>
http://www.nikkeibp.co.jp/news/biz06q2/500915/
>
> ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
…この一ヶ月は年度末でバタバタしてたので、あまりヲチしてなかったからなぁ~、何の話だろう?と思って、上記のURLを見に行きました。
けれども、そこに書かれている内容は上記と殆ど変わらず、「続きは
コチラ」と、さらに別サイトへ行かないと本文が読めない仕組みになってます。
(正直言って、こういうやり方そのものが鬱陶しくてしょーがないんですけど…)
それはともかく、ようやく本文を読んで概要を理解しました。
花岡氏の記事は、大体以下のような内容でした。
「トリノオリンピックの女子フィギュアで、荒川選手が金メダルを取った際、表彰式が生中継されていた。
しかし、荒川選手が日の丸をまとってウイニングランをするシーンが放映されず、別のVTRが流されていた。
これに対して、生中継をしていたNHKが「偏向報道をしたのではないか?」という批判がネットで巻き起こった。
花岡氏が自身のメルマガ・ブログで、『原因は国際映像の制約にあったのではないか?』と書いたところ、『NHKを擁護するのか?』という事で、すさまじい反論・攻撃が巻き起こったというも開始されてしまった。
そこで、再度取材をした上で、国際映像の中継タイムテーブルではウイニングランを予定していなかった事を明らかにし、騒動は鎮静化した。」
そもそもは、オリンピックにおける「国際映像」の仕組みが広く認知されていないことに原因があるのは理解しました。
けれども、花岡氏の文章を読んで感じたのはまったく別の事です。
「批判するなら、あくまでも事実を踏まえて」というスタンスを持っておられる花岡氏の記事はこんな文章で締めくくられています。
「ブログはいわゆる「ネット・オタク」に占領されているのではないか。これを大人の世界にも通用するレベルに持ち上げないといけない。そのための方策を考えないと、成熟したネット社会は到来しない。 」
どうしてこういう文章を書いてしまうんでしょうか?
これで、この記事全体の品位は、見事最低ランクに堕ちたと思いました。
レッテルを貼って物事を紋切り型に捉えることが「事実を踏まえる」スタンスだと言えるのでしょうか、甚だ疑問です。
この記事を読んだ4/5時点で、「IOC 国際映像」を
Google検索してみました。
そこで一位になっていたのが、
玄倉川の岸辺というブログの
あるいは、もしかして、ひょっとするとNBCの悪意なのか(上)というエントリです。
そのエントリでは、ウィニングラン未放映事件についての2ちゃんねるの書き込みを紹介しています。
当然「何しろ誰が書いたかわからない2ちゃんねるのカキコなので信憑性については自己責任でお読みください。」という注意書きをした上での引用です。
引用元は
こちら(1000超えてるので通常ブラウザでは見れません)
内容としては大筋、花岡氏と同様の考察が展開されています。
ある程度分析が終わった段階での書き込みが以下のものです。
>725 名前:業界関係者(民放)[] 投稿日:2006/03/01(水) 05:07:54 ID:wgSSKJj2
>五輪放送にもちょいと関わった業界関係者だが、
>今回の映像に関しては >>716 >>717でほぼ正解。
>
>国際映像信号は表彰式で中継終了。
>表彰式のセレモニーが終わると、競技場ロングやロゴの入った壁などに
>スイッチングして、終了を配信局に知らせる。これが例の「壁映像」だな。
>なのでJCを組んでいる民放各局・NHKとも、表彰式後の
>ウィニング・ランは国際映像信号からは取れなかった。
>これは国際映像制作局マターの問題だが、表彰式は終わっているので、
>配信しなかったとしても契約違反にはならない。
>
>ちなみにインタビューは「JCユニ」として、
>これだけはJCがライブで撮ることができる。
>
>実況の件は、「オフチューブ」といって、
>国際映像信号を見ながらアナウンスし、
>これを国際映像信号とMixしてJC映像としている。
>なので国際映像信号でウィニング・ランを流していなければ、
>実況でも表現できない。
>
>NHKで後で流れたウィニング・ラン映像は、
>会場に持ち込んだENG映像と思われ。
>これは国際放送センター(IBC)まで持ち帰って伝送しないと
>放送できないので、生放送には間に合わなかった。
>
>外国でLIVEで流れたところがあるとしたら、
>その局がユニ中継を組んだとしか考えられないが、あまり考えられんな。
>
>ということで、NHKを責めてもかわいそうというのが結論。
ちなみに「玄倉川の岸辺」さんの当該エントリは、同じくGoogleで「トリノ 国際映像」で
検索しても4位で出てきましたから、相当広くリンクされ参照されているものと思われます。
今回の考察は、今回花岡氏の記事と、玄倉川さんのブログしか参照しておらず、一次情報を調べていないため、伝聞情報を基にした憶測でしかありません。
ただ、花岡氏の「ブログはいわゆる「ネット・オタク」に占領されているのではないか。これを大人の世界にも通用するレベルに持ち上げないといけない。そのための方策を考えないと、成熟したネット社会は到来しない。 」という記述が、冒頭の「低次元でお粗末きわまりない」罵詈雑言・誹謗中傷とどの程度差異があるのかを判別することは出来ませんでした。
花岡氏は「ブログの世界の水準はひどすぎる。アメリカのようにブログがジャーナリズムの一角を占める時代は、日本には来ないのではないかとすら感じている。」と嘆いておられますが、花岡氏にも「ジャーナリズムは「大人」の仕事で、(日本の)ブログなんて、大人になりきれていない「ネット・オタク」達が跳梁跋扈している世界に過ぎない」という予断を感じざるを得ません。
事実に立脚した記事の最後に、このような真情が吐露されている時点で、花岡氏の標榜する「ジャーナリズム」そのものが胡散臭いものになっていることに気付いておられないのでしょうか。不思議です。
僕としては、一見「ネットについてもよく理解している」というスタンスをとりつつ、「やっぱりネットは胡散臭い」という情報を流して「ジャーナリズム」の延命を図っている構図にしか見えません。
その記事をトップで紹介しているnikkeibp.mailも然りです。
そろそろ、既得権益を守るために汲々とするのではなく「次の時代」を見据えたジャーナリズム論を確立してほしいものです。
きちんとした取材、ソースに立脚した記述でなければ信頼性を失うのは、リアルでもネットでも同様であり、氾濫する情報の中から何が真実を読み取る、というのが正しい情報リテラシーのあり方であり、それを伝えるのがマスコミ或いはジャーナリズムの使命のひとつではないでしょうか。