劇場公開時に見に行けず、発売時に購入したまま放置していた「チャーリーとチョコレート工場」をようやく見ることが出来ました。
※以下ネタバレありです。
なかなか期待に違わぬ出来でした。
とはいえ前半は、基本的にゴールデン・チケットを手に入れた子供たちの紹介と、チャーリーの貧乏描写に費やされます。
これが結構だるい…
チャーリーが貧乏で辛い環境にもめげない健気で良い子であることを、これでもか~、と見せつけるのですが、う~ん可哀想なのでこんなに延々と描写しなくてもいいのになぁ~(鬱)って感じです。
ただ、最近のお子様には「貧乏っていうのは、こんなにも辛く哀しいものなんだ」ということを、ビジュアルでしっかり説明しないと理解して貰えないのかも知れません。
あと、チャーリーのお母さん、昔のジュリエット・ビノシュみたいで可愛い…
工場見学をする後半からは、ジェットコースタームービーになります。
このままUSJのアトラクションにして欲しいくらい。
最初に入った緑の広場から、チョコレートの川に浮かぶピンクの飴製の船に乗って出発。
ウォンカの扮装をしたキャストの案内で工場内を見学します。
基本はウンパ・ルンパのミュージカルで、最後はガラスのエレベーターの如く急上昇・急降下!
勿論館内はチョコレートの香りを流しまくりです。
出口ではウォンカ・チョコレートが売られている訳です。
気色悪くて五月蝿い
E.T.アドベンチャーよりもずっといいと思うんだけどなぁ~
閑話休題。
原作は子供の頃に読んだのですが、とてつもなく面白かったという印象と最後にどんどん上がっていくエレベーターだけが強烈で、詳細を覚えてはいませんでした。
ただ、ウォンカ氏の幼少期については明らかに無かったと思えたので、原作を読み返してみることにしました。
今買うことが出来るのは、新訳だけなのですが…
…。
だめだ…
すいません。
柳瀬氏の訳は正直拒否反応出ます。
原語のギャグや駄洒落を日本語でも伝えたい、という理念は理解しますが、その結果がこれでは…
申し訳ないけど、柳瀬氏の日本語のセンスそのものが好きになれないです。
っていうか、寒いです、痛いです。(泣)
なんとか耐えて読了して、原作と映画の大きな違いとして判ったのは、
・ウォンカ氏の人物造形そのものが大幅に脚色されている
・ラストのチャーリーの行動が違う
という2点でした。
映画向けの脚色は得てして無理矢理な事が多いのですが、今回は成功だと思いますね。
原作・映画共に「毒がある」と言われていますが、物語の根底は勧善懲悪、悪い奴はたとえ子供でも報いを受けるというシンプルなものです。(貧しくても清い心を持つ者が報われるという逆説も含む)
そういう意味では、表現や悪い子が受ける仕打ちは多少毒があるように見えても、実際には極めて「教育的」な作品だと言えるのではないでしょうか。(原作・映画とも)
映画については、前述の脚色によって、その傾向はより強められ、チャーリーとウォンカ氏の行動原理が補強されています。
原作ではラストで、ウォンカ氏が「君に工場をあげる」と言うと、チャーリーはすぐに受け取ります。
しかし、映画では家族を残しては行けないと断ります。
(原作のウォンカ氏は、家族も連れて来ていいと言うが、映画版の父親を恨んでいるウォンカ氏は家族を連れてきてはいけないと言うため)
屈折してしまったウォンカ氏の言動を冷静に観察し、最初は尊敬すべき人と思ったけど違っていた、と評するチャーリーは、ウォンカよりずっと大人です。
(子供時代に大人の判断力や理性を持たざるを得ない、という悲哀は置いておくとして…)
そして、チャーリーの助言によってウォンカ氏が救われ、ハッピーエンドという流れは、原作よりも説得力があるものでした。
という事で、全体的にはちょっと「道徳的」な部分もありますが、工場見学ツアー部分とウンパ・ルンパだけで充分に楽しめる映画でした。