読了。朝吹真理子氏のきことわ。
永遠子は夢をみる。
貴子は夢をみない。
貴子が夢をみないのは、自分が夢に見られた人だからと貴子は言います。
私の話。
私の夢には、かれこれもう十五年程、同じ人が出てきます。
同級生の女の子です。何故だかわかりません。最後にあったのは何時かも思い出せません。
夢の中で、彼女は小学生の姿の時もあるし、大人の姿の時もあります。
顔もろくに思い出せないくせに、それが彼女だという事はすぐにわかるのです。
そして、目が覚めて彼女をさがそうとか、会ってみようとかは全く思わないのです。
もう、目覚めた私の時間に彼女が交差する事はないでしょう。
それは、はっきりとわかるのです。
夢の中で私は夢をみない。
彼女との世界から出る事ができない。
夢の中の私は夢に見られた人なのかもしれません。
彼女は私の大切な夢の住人です。
第144回芥川賞受賞作。