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「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」

[紹介]『憲法を守るのは誰か』(青井未帆著 幻冬舎ルネッサンス新書)

2013-09-26 | 本・番組・映画など

  気鋭の若手憲法学者、学習院大学教授青井未帆さんの『憲法を守るのは誰か』(幻冬舎ルネッサンス新書)

 国家権力が国民の味方ではなく、基本的人権を踏みにじる存在であること、やろうと思えば何でもできる危険な存在であること、憲法は国家権力と闘い人権を守るための武器であること、このような基本認識を貫きながら、憲法問題をわかりやすく解説している。

 とくに印象に残った点をいくつか。

・国家が危険だという認識は多くの国民になじまないかもしれないが、足利事件や村木事件など、警察が突然逮捕して拘留し、過酷な取り調べによって罪を「自白」させ、刑務所に送り込むというようなことが少なからず起こっている。国家がやろうと思えばなんでもできる例証だ。

・ビラを配っただけで逮捕された堀越事件と葛飾事件。休日に日本共産党のビラを配ったことが国家公務員法違反に問われた。ビラ配りだけで逮捕というのも大問題だが、それ以上に、一人の人物をビデオで2カ月もとりつづけ「証拠」を集め逮捕するという計画的で執拗な警察犯罪。たまたまビラを配ったから逮捕されたのではない。逮捕するために追いかけ回された。こんなことまで国家権力はやろうと思えばできる。

・日本国憲法第38条
  何人も、自己に不利益な供述を強要されない。
○2  強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。
○3  何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。

 「何人も、自己に不利益な供述を強要されない」というのは、「自分がやった行為について自己に不利益なことは言わなくていい」、あるいは黙秘権の規定というだけの意味ではない。強調すべきは、自分がやってもいないのに「わたしがやりました」と自己に不利益な供述を強要され「自白」させられる、そのような冤罪を防ぐための規定であるということだ。
 2、3項は、強制による自白や長期抑留による自白などを証拠とすることを禁じている。
 憲法第38条はいままさに問題になっている、検察による激しい取り調べによる罪状でっち上げ、冤罪を防止する重要な規定だ。

・国防軍、集団的自衛権は、単に自衛隊が軍になるというだけではない。国民生活全般が統制・監視下におかれる。
 たとえば戦時中には、1937年に成立した防空法によって、自分の家や隣組の管轄区域の防火活動を義務づけられ、命を投げ出してでも国を守るよう強制された。(空襲をうけたら消火活動を義務づけられ、それによって死亡したときは葬式代を出すという規定まである。延焼を防ぐために家屋が容赦なく間引きされる。 防空法第12条 )軍事が最優先され、個人の命も家も家族も犠牲になる。

・自民党日本国憲法改正草案の表紙の写真

 国会の写真だが、衆議院ではなく参議院の写真を使っている。現行の選挙制度や両院の重要性の度合いから言っても衆議院を載せるのが道理だと思うが、なぜ参議院なのか。
 参議院は、明治憲法下の貴族院の議会をそのまま使っている。
 つまり天皇の座る「玉座」がある。議長席のうしろにある、カーテンを引くことができる席がそれだ。
 自民党改憲草案では天皇を「元首」としているが、表紙の写真ひとつみてもも国民主権や人権を軽視し、天皇の権威と政治的行為を高めようとする意図がわかる。露骨な復古主義的憲法草案だ。

・最後に、憲法改正を叫ぶ人たちが、憲法についての基礎的な知識や教養さえ持ち合わせていないことに強い危機感を表明している。安倍首相が、個人の尊重が何条に書かれているか知らなかったり、憲法を学ぶ人ならだれでも知っているような著名な憲法学者を知らなかったり。それを安倍氏が「私は憲法を専門にしているわけではないから」と開き直ったり、およそ事柄に真剣な姿勢が見えない。政治倫理と知性の驚くべき低さを嘆く。
 まがりなりにも日本国憲法を変えようというからには、単に「押しつけだ」と言うだけでなく、そもそも憲法とは何かというような、イロハぐらいは知っておくべきだろう。

(ハンマー)


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