大阪府教育委員会教育振興室長名で9月4日に出された「平成25年度秋季卒業式及び入学式の実施について」と「入学式及び卒業式等における国歌斉唱時の対応について」で、「君が代」斉唱時に教職員の口元チェックを指示したことについては、以下に掲載した。
※これは教職員への精神的拷問、思想差別、人格否定ではないのか--大阪府教委による口元チェック通知(リブインピースブログ)
http://blog.goo.ne.jp/liveinpeace_925/e/96dc928dc394b1036ea1f2467c13bdb0
読めば読むほど恐ろしい文書である。
書かれているのは口元チェックだけにとどまらない。「式典は厳粛で簡素なものとすること」にはじまり、式典の「望ましい形」、児童・生徒の送辞・答辞のあり方、来賓の選定基準、万一の場合の対応等々、教育委員会が望む入学式・卒業式の姿になるよう、全府立学校を従わせるための文書だ。学校独自の判断や、児童・生徒たちの自主的な取り組みを一切排除する決意が見て取れる。いかなる例外やイレギュラー、ハプニングも許さない。
わかるのは、文書を発した教育振興室長なる者は、「教育」や入学式・卒業式についてのいかなる思想も認識ももっていないということだ。「日の丸・君が代」を強制するのも、式典が厳粛であるべきとするのも全く根拠が見あたらない。
この文書を発した人物は、何を恐れているのか。全府立学校のうち一校でも管理・統制から洩れ出る事態を恐れている。だから、校長・管理職に報告を義務づけている。条例できまったから、学習指導要綱にかかれているからという理由以外何も書かれていない。
彼らが恐れているのは、橋下市長であったり松井知事であるかもしれない。あるいは自分が責任者である時に、不祥事を出したくないという小役人的な利害かもしれない。いずれにしてもこの通達文書は、教育委員会自体が権力者におもね、教育と教職員の利害を代弁するのではなく、保身と出世のために、教職員と子どもたちをおさえつける、そのような存在になっているということを示す文書だ。
この文書を読むと、松江市で閉架措置とされ問題になった「はだしのゲン」に出てくる無節操な教師たちを思い出す。子どもたちをだまし戦争に送り込んでいた教師たちは、一夜にして、何の反省もなく平和の大事さを語り出した。彼らは平和を希求したのではない。GHQの指令をそのまま実行したに過ぎなかった。戦争の反省も、子どもたちを死なせた責任も何も感じることなく、昭和天皇の行幸に際しては、日の丸の国旗を振って歓迎するよう子どもちに命じた。教師たちはあいかわらず児童・生徒たちをののしり、管理し、暴力をふるい、奴隷のように扱っていた。
この教師たちに教育振興室長らの姿が重なる。仮に「卒業式で日の丸を掲げてはならない」と上から命じられたら、手のひらを返したように、率先して「日の丸」を掲げていないかをチェックしはじめ、日の丸を掲げた教員に厳罰を与える、そのような連中だろう。
文書は「国歌斉唱を行う場合に公務員に起立・斉唱を求める職務命令の趣旨は、公務に対する府民の信頼を維持する点」にあるとしている。
国歌斉唱時に教職員に起立・斉唱を求めることが、なぜどのように「公務に対する府民の信頼」を勝ち得ることにつながるのか、答えるべきだ。
また問題になっているのは、公務一般ではなく公教育と教員の態度である。教員への公教育への府民の信頼は、教育の中身と教員一人一人の教育活動への信頼、教員集団全体の協働としての教育への信頼であるはずだ。不起立・不斉唱者がでたことが、府民の公教育への信頼を揺るがしているのか。
文書は「公務員として誠意ある姿勢・態度を客観的に生徒・保護者を含む府民に示し」としているが、日本の侵略戦争の反省を深く自覚した教職員が、なによりも子どもたちに二度と戦争をしてはならないと教えてきた教職員が、自身の思想良心に基づき、天皇制軍国主義の象徴であった「日の丸」「君が代」を拒否することは、なんら教育公務員としての誠意ある姿勢・態度への信頼を揺るがすことにはならない。教育者としての信念に根ざしたものであり、教え子を裏切らないめの行為にほかならない。
大阪市が反対を押し切って採用した複数の公募校長が、重程度のセクハラやパワハラで処分を受けているが、彼らは国歌斉唱時に起立・斉唱をしていなかったのか。むしろ、教職員に起立・斉唱させるために最先頭にたっていたのではないのか。児童の母親との酒席を設けて尻をさわるような悪質なセクハラや、口論の上教頭に土下座させるというような常軌を逸したパワハラが軽微な処分で事実上見過ごされている。彼らへの教育委員会の甘い処分が「公務に対する府民の信頼」を揺るがしているのではないのか。
他方では、「君が代」を歌わなかったというだけで、子どもたちや保護者に信頼される有能で優れた教職員に懲罰を加え、場合によっては免職や雇い止めにも処す教育委員会のやり方が府民の信頼を失わせているのではないのか。
「公務に対する府民の信頼」をゆるがしているのは誰なのか。教育委員会自身ではないのか。
(ハンマー)
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教委高第2424号
平成25年9月4日
関係府立高等学校 校長・准校長 様
教育振興室長
平成25年度秋季卒業式及び入学式の実施について
標記について、下記の事項に留意の上、遺漏のないよう配慮願います。
記
1式典は厳粛で簡素なものとすること。
2 学習指導要領の趣旨を踏まえ、国旗を掲揚するとともに、国歌を斉唱するよう適切に指導すること。
3 平成24年1月17日付け教委高第3869号の教育長通達を踏まえ、教職員を指導すること。
4 国歌斉唱時の教職員の起立及び斉唱については、別添「入学式及び卒業式等における国歌斉唱時の対応について」を遵守し対応すること。
5 来賓の臨席を要請するに当たっては、学校として明確な基準を定めておくこと。
また、来賓に対して祝辞に代わる方法を依頼する場合は、その内容を事前に十分説明して了解を得ておくこと。
6 卒業式における児童生徒の送辞・答辞については、作成方法、内容、発表方法、発表者の服装・態度等について適切な指導を行うこと。
7 万一の場合に備えて臨機の処置が取れるよう、事前に準備しておくこと。
(参考)「平成25年度 府立学校に対する指示事項」
・ 入学式や卒業式等においては、学校生活に有意義な変化や折り目を付け、厳粛で清新な気分を味わい、新しい生活の展開への動機付けとなるよう指導すること。
また、学習指導要領に基づき、国旗を掲揚し、国歌を斉唱するよう指導するとともに、「望ましい形」となるよう努めること。
その際、「大阪府の施設における国旗の掲揚及び教職員による国歌の斉唱に関する条例」が制定されたことも踏まえ、入学式及び卒業式等国旗を掲揚し国歌斉唱が行われる学校行事において、教職員は府民の信頼に応える責務を自覚し、国歌斉唱に当たっては起立し斉唱すること。
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入学式及び卒業式等における国歌斉唱時の対応について
平成25年9月4日
標記について、取りまとめましたので、下記の事項に留意して、実施願います。
記
1 根拠法令・通知
(1)高等学校学習指導要領(平成21年3月9日施行) 第5章 特別活動
「入学式や卒業式などにおいては、その意義を踏まえ、国旗を掲揚するとともに、国歌を斉唱するよう指導するものとする」
(2)大阪府の施設における国旗の掲揚及び教職員による国歌の斉唱に関する条例(平成23年6月13日施行) 第四条
「府立学校及び府内の市町村立学校の行事において行われる国歌の斉唱にあっては、教職員は起立により斉唱を行うものとする。」
(3)教育長通達(平成24年1月17日施行)
「入学式及び卒業式等国旗を掲揚し、国歌斉唱が行われる学校行事において、式場内のすべての教職員は、国歌斉唱に当たっては、起立して斉唱すること。」
「入学式及び卒業式等において国歌斉唱を行う際は起立により斉唱するよう教職員に対し通達を行っており、この趣旨を徹底するよう職務命令を行うこと」
2 校長・准校長の職務
(1)入学式及び卒業式等において国歌斉唱を行う際は起立により斉唱するよう教職員に対し通達を行っており、この趣旨を徹底するよう職務命令を行う。
(教育長通達再掲)
(2)入学式及び卒業式等において国歌斉唱を行う際、教職員の起立と斉唱をそれぞれ現認する。現認については、目視により、教頭・事務(部)長が行う(現認の補助的な役割を、首席等にあたえることはできるが、校内での最終的な起立・斉唱の判断は管理職が行うものとする)。
(3)校長・准校長は、実施状況について報告する(報告については、4に記載)。
3 不起立・不斉唱の判断基準
入学式及び卒業式等において国歌斉唱を行う場合に公務員に起立・斉唱を求める職務命令の趣旨は、厳粛な公式行事である入学式及び卒業式等において、公務員として誠意ある姿勢・態度を客観的に生徒・保護者を含む府民に示し、公務に対する府民の信頼を維持する点にあると理解する。
この趣旨に鑑みれば、起立行為または斉唱行為の一部だけを取り上げ、形式的に判断するのではなく、各職員の起立行為または斉唱行為を総合的に現認し、公務の信頼性を維持するに十分な誠意ある姿勢・態度を各職員がとっているか否かという観点で判断すべきである。
不起立または不斉唱の判断が困難であると考えられる場合には、事案の詳細を付して、府教委事務局に相談されたい(最終的な責任と権限が府教委にあるため)。
4 報告について
(1)実施状況を別紙1、別紙2により速やかに報告すること。
(2)職務命令違反と校長・准校長が判断した場合は別紙3により報告すること。
(3)判断に迷うような場合は、教育委員会事務局に相談する。