母の膵臓癌日記

膵臓癌を宣告された母の毎日を綴る

いままでの経緯 (12)

2009年09月21日 21時52分41秒 | 日記
9月17日(木)
昼前、キッチンで娘と昼食を用意していると音もなく階段を上ってきた母がいきなり
「ねえ、幻覚ってどういうのをいうの?」と話しかけてくる。
「わあっ!びっくりした…急に現れて怖いこと言わないで。」
「何が怖いの?」
私はまだドキドキしながら
「だって幻覚って!何か見えたの?幻覚は…たとえばそこにいない虫がいっぱい見えたりするみたいよ。」
「ああ、そういうこと。じゃ私のは違うわ。」と母が安心したように言う。
昨夜は夢か現実かわからないような夢を見てなんども目が覚めてしまい熟睡できなかったと言う。

麻薬のオキシコンチンの量が増えたとき薬局で「たまに副作用で幻覚が見える人がいます」と言われ
母も私も内心どっきりした。母は薬局を出たとき「なんか怖いこと言われちゃった。」と言っていたのだ。
幻覚ではないけれど、そんな夢を見るのも副作用かもしれないね。と話す。

午後に兄から旅行の詳細を報せるメールが私と弟あてに入る。
川口湖畔の、窓から見える富士山の眺めが抜群に良い旅館ということで
景色を眺めるのが大好きな両親にとても喜ばれそうだ。
私も久しぶりの温泉はとても楽しみだ。
返事のメールを打ち、昨夜の電話では躊躇したこのブログのURLを教えるが
「恥ずかしいので誰にも内緒」と書き添える。

夕方、用があって階下へ下りると母が「揚げたてのコロッケ食べる?」と言う。
もらうと言うと、お皿に昔ながらのジャガイモのコロッケを2つ乗せて手渡される。
ダンナは芋が嫌いなのでひとつ食べてアルバイトに出ている次女のF子にひとつ残そうと思ったが
冷めてしまってはまずいしF子はアルバイトから帰っても食べないかもしれないと思い2個とも夕食に食べてしまう。
子どもの頃から慣れ親しんでいる味の熱々コロッケはとても美味しかった。


↑ところどころ焦げていて、見た目はよろしくないが味は「おふくろの味」です。

夕食後、母が青い顔をして2階に上ってくる。
手にはコロッケの中身―つぶしたジャガイモと炒めて味をつけたひき肉、たまねぎを混ぜたもの―が
たっぷり入ったボウル、と小麦粉、パン粉の袋を持っている。
「ジャガイモがいっぱい余ってたから全部コロッケにして冷凍しようと思ったんだけど…
疲れちゃって…代わりに作ってくれない?」
ひどく消耗している様子で体も前屈みの姿勢になっている。
「やるわよ。階段上ってこないでインターフォンで呼び出してくれたらいいのに。」と引き受け、
早くお風呂に入って寝るように言う。

コロッケを作ったくらいであんなに疲れてしまうとは。日に日に母が弱っていると感じて暗い気持ちになる。
ボウルの中の具を小判型にまとめていくと11個のコロッケの中身ができた。
こんなにいっぱいの量のジャガイモを洗って茹でて皮を剥いてつぶし、炒めたひき肉と混ぜたのだから
まあ疲れるのも当然かな、と思いなおす。ひとつひとつ衣をつける作業が大変で
バイトから帰ったF子に手伝ってもらうとあっと言う間に終る。
「私の食べる分はないの?」とF子に責められた。