うつむく青年 詩集 谷川俊太郎 ㈱サンリオ
平野甲賀さんの装丁とのこと。
引き寄せられるように手に取った詩集。
いつ買ったのか、たぶん20代の後半くらいだったかも。
心に落とすように
じっと耳を澄ます
一つひとつ
その言葉の魔法にかかる
そして掴まれてしまう
軽めのものの中にも、しっとりとした部分があったりと
谷川さんの作る詩には
誰もが感じたことのある
普段は気づかないくらいの
経験したことのあるだろう小さな幾つもの感情がある
~憐愍~
なんでもないごくあたりまえな事
たとえば子供等の遊ぶのを見ていて
胸いっぱいにあふれてくるものについて
誰が正確に述べる事ができよう
それは人の内にわいてくるのではなく
ひとつの宇宙のように人を外から包むのだ
秋の日に照らされる一枚の枯葉が
すぐに朽ちて忘れられるものでありながら
私たちの目と手と心に
どうしようもなく触れてくる今日
青空のように限りないものに抱かれて
言葉なき嬰児である私たちに
ただ無力な双手を生きとし生けるものへと
差し伸べることだけが許されている
(五つの感情 その五)
広いページの余白の中央に、優しい明朝体の文字が並ぶ。
無限の広がりともいえるだろう、私たちの中に眠る優しい何か。
もう20年以上も経っている詩だから
古典であるといえます。
きっとその紡ぎ出された当時に出会っても
そして今読んでいる自分も
匂いだけは同じものを感じとっていると思うんです。
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