シャツも、ネクタイも、靴も借り物だった。
典宏さんは、四着をヒカルの首の下に当てて確かめるとそのうちの一着を選んだ。そして、ヒカルをフィチングルームに案内し、ズボンの長さを合わせると、裏に走った。
「シングルでいいよね。二十分で仕上げさせるから、その間に中身を見繕うか。」
戻って早口でそういうとヒカルの首、肩、腕を採寸して、また、売り場を早足で回った。会計用の台の上にシャツと、ネクタイ、ハンカチ、アンダーウエアー、靴下、セカンドバッグまでのった。次にヒカルの手を引いて、靴売り場に行き、リーガルを選んだ。そうこうしているうちに女性が限りなく黒にちかいダークブラウンの背広とズボンを持ってきた。
「試着室で、着替えちゃいなよ。」
ヒカルはびっくりする速さでことが進むのに戸惑った。ワイシャツをズボンに入れたくらいで典宏さんの声がした。
「開けてもいい。」
「どうぞ。」
典宏さんはワイシャツをフィッティングし、ネクタイを結んでくれた。フィッチングルームの前にはリーガルがそろえてあった。
「それ、いいかな。」
ヒカルがそれまできていた衣類を指差した。
「あ、はい。」
ガバッとひとまとめにして持ち去った。
上着に腕を通してリーガルをはいた。ミサキが嬉しそうに微笑んだ。
ヒカルのポケットはパンパンだった。
「財布とか、セカンドバッグに入れたほうがいいよ。」
何から何まで、という感じだった。セカンドバッグに詰め替える前にヒカルは恐る恐る聞いた。
「お会計は・・・。」
「え、いいよ。美咲ちゃんのボーイフレンドから御代はいただけませんよ。」
ヒカルが困ったような顔をするとすかさず続けた。
「心配しなくていいよ。在庫処理か、サンプル扱いで、平気だから。」
「そんな・・・。」
「典宏さん、ありがとう。」
「どう致しまして・・・・、上には内緒だよ。」
「アリガト。」
ミサキは兄に甘える妹のようだった。ヒカルは、その親密さに一瞬、嫉妬した。が、簡易スーツケースに今まで来ていた衣類がきれいに納まり、靴が、メーカーのネームの入った手提げに入れられ手渡された時には、全てが整然と進んでいくさまに感動していた。
「ほんとうにありがとうございます。」
深々と頭を下げた。
一瞬、ミサキが自分とは違う世界の人のように思えた。
典宏さんは、四着をヒカルの首の下に当てて確かめるとそのうちの一着を選んだ。そして、ヒカルをフィチングルームに案内し、ズボンの長さを合わせると、裏に走った。
「シングルでいいよね。二十分で仕上げさせるから、その間に中身を見繕うか。」
戻って早口でそういうとヒカルの首、肩、腕を採寸して、また、売り場を早足で回った。会計用の台の上にシャツと、ネクタイ、ハンカチ、アンダーウエアー、靴下、セカンドバッグまでのった。次にヒカルの手を引いて、靴売り場に行き、リーガルを選んだ。そうこうしているうちに女性が限りなく黒にちかいダークブラウンの背広とズボンを持ってきた。
「試着室で、着替えちゃいなよ。」
ヒカルはびっくりする速さでことが進むのに戸惑った。ワイシャツをズボンに入れたくらいで典宏さんの声がした。
「開けてもいい。」
「どうぞ。」
典宏さんはワイシャツをフィッティングし、ネクタイを結んでくれた。フィッチングルームの前にはリーガルがそろえてあった。
「それ、いいかな。」
ヒカルがそれまできていた衣類を指差した。
「あ、はい。」
ガバッとひとまとめにして持ち去った。
上着に腕を通してリーガルをはいた。ミサキが嬉しそうに微笑んだ。
ヒカルのポケットはパンパンだった。
「財布とか、セカンドバッグに入れたほうがいいよ。」
何から何まで、という感じだった。セカンドバッグに詰め替える前にヒカルは恐る恐る聞いた。
「お会計は・・・。」
「え、いいよ。美咲ちゃんのボーイフレンドから御代はいただけませんよ。」
ヒカルが困ったような顔をするとすかさず続けた。
「心配しなくていいよ。在庫処理か、サンプル扱いで、平気だから。」
「そんな・・・。」
「典宏さん、ありがとう。」
「どう致しまして・・・・、上には内緒だよ。」
「アリガト。」
ミサキは兄に甘える妹のようだった。ヒカルは、その親密さに一瞬、嫉妬した。が、簡易スーツケースに今まで来ていた衣類がきれいに納まり、靴が、メーカーのネームの入った手提げに入れられ手渡された時には、全てが整然と進んでいくさまに感動していた。
「ほんとうにありがとうございます。」
深々と頭を下げた。
一瞬、ミサキが自分とは違う世界の人のように思えた。
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