日本専門評論

日本国内の問題を、専門的に、あれこれ評論します。

欧州経済も問題有なのか?

2006年11月03日 22時36分31秒 | 経済

中国に飲み込まれる欧州

少し前に、超巨大旅客機A380の相次ぐ納入延期により混迷を深めるエアバス社について書きましたが、 170機の販売契約と抱き合わせで、中国に組み立て工場を作ることになりました。

エアバスの経営を傾かせたのは、欧州の社会事業とも呼ばれてきた半官半民の体質です。それだけに、政府の支援に頼らず、 人件費の安い海外に工場を作ることで経営を立て直そうというのは、企業として好感の持てる態度です。 エアバスがお役所体質を強めて弱体化すると、大型旅客機の建造はボーイング社の独占となり、そうなれば世界全体にとって不幸なことですから、 とりあえずはいいニュースだと言えます。

でも、ドイツは不安で一杯です。

ドイツのハンブルクには、フランスのトゥールーズと並ぶエアバスの拠点があります。中国に工場を作るからといって、 さしあたりハンブルクの工場を閉鎖するわけではありません。しかし今回の発表を聞いて、「雇用も技術も中国にとられてしまう!」 という声が圧倒的なのです。

ドイツ人がそういう不安を抱くのには理由があります。それは、「リニアモーターカー・ショック」です。 すでに上海に短い区間でリニアモーターカーを設置しているドイツは、上海ー杭州間175キロのリニア線敷設を鼻先に吊されて、 特にシュレーダー前政権時代は、情けないほど中国におべっかを使ってきました。しかし中国は、 ドイツの技術を盗んで独自のリニア開発を開始した挙げ句、リニア線敷設を棚上げしてしまったのです。

それに追い打ちをかけるように、9月に起きたリニア実験線での事故により、ドイツにおけるリニア開発は支持を失い、 将来的にも採算に合わないものになりつつあります。リニアを開発しているシーメンス社らは、 抱えている技術を中国に売り払って事業から撤退するのではとまで囁かれ、そうなれば、リニア線敷設を検討しているミュンヘンには、 中国製のリニアモーターカーが走ることになりかねません。

そういう経験をしたドイツ人が、エアバスの中国進出に不安を覚えるのは当然です。 フランスのシラク大統領と一緒に中国を訪問したエアバス社の首脳が、中国政府とどんな約束を交わしたのかはわかりませんが、 藁にもすがる状況だったエアバスは、航空産業育成を目指す中国にとって、カモだったはずです。2、30年後には、 エアバスを食べて育った中国の航空機メーカーが、エアバスに代わってボーイングと覇権を争うことになるかもしれません。

それにしても、政治の力で守られてきた欧州大陸の先端事業が、なぜこうも易々と相次いで中国にあしらわれ、 ヨーロッパ最大の武器である知的財産を危険にさらすのか。それは皮肉と呼べるような現象ではなく、必然なのではないでしょうか?

ところで、欧州の希望どころか、欧州没落の象徴になりつつある超大型旅客機A380は、今月19日に、 初めて日本にやってくるそうです。

以上抜粋。

(私のコメント)

ドルが円がと、アメリカ経済も日本経済も破綻寸前という話はよく耳にします。ではユーロはどうなのでしょうか?

エアバスの中国生産によって、中国によるコピーが近い将来生産されます。それは、欧州の没落の始まりとなるかもしれません。 もともとEUは、政治的にはともかく経済的には、中小国が集まって巨大市場を作って、アメリカ市場や日本市場に対抗しようとしたのであり、 統一通貨のユーロもそれだけのものです。

日本が産業の空洞化に苦労したように、欧州も産業の空洞化に苦労することとなるわけです。下手をすれば、日本の失われた十年を、 欧州が再現するかもしれません。もっとも東ヨーロッパがあるので同じとは言えませんが、 欧州内での人件費は低下していくことを意味するわけですから、市場規模の縮小を意味することになります。現在、 低賃金による日本市場の縮小があるわけで、欧州でも同じことが起こることになるでしょう。

となるとドルや円だけでなく、ユーロの暴落も視野に入れる必要があるのかもしれません。