6月26、27日の2日間、一般社団法人日本ウッドデザイン協会(以後JWDA)様主催、「北山杉利用推進プロジェクト※」共催「木の魅力、京都の深みに触れる2日間」視察ツアーが開催され、2日目の27日、北山杉視察会として京都北山杉の里総合センターおよび中川地区の見学会が行われました。
見学会はJWDA会員様32名が参加され、北山杉の歴史と技術継承、現状をご説明したあと、枝打ちの見学や北山丸太の皮むき、磨き体験、そして樹齢600年の北山杉母樹と大台杉の見学をしていただきました。
前編に続き、いよいよ外に出て北山杉を見て体験する視察ツアーの様子をご報告いたします。
■枝打ち見学と磨き丸太体験
まず職人による枝打ち作業を見学していただきました。
枝打ちにつかう道具の説明と手作りのはしごの説明をし、職人の技の実演をしました。
現在、枝打ちを行える熟練の職人は10名程度と後継者不足になっています。
ハシゴを使わず木に登れる熟練の技に、見学者からは驚きのどよめきが上がりました。
続いて、磨き丸太の加工作業の説明を行いました。
北山丸太の特徴は杉皮をきれいに剥き、出てくるその木肌が美しいことにあります。
さらに、光沢を出すための仕上げの磨きには近くの「菩提の滝」で採取したキズが付きにくい特別な砂を研磨剤として使いました。現在は皮をはぐ作業と磨き作業は高圧の水圧機を使っています。
この日は「ヘラ」という道具を用い、実際皮をはぐ体験もしていただきました。
本来は秋から冬(9月~11月)にかけて伐採し皮をはぎ、そのあと一か月の天然乾燥の後1月から3月に磨きをかけ、さらに半年以上倉庫内で乾燥させる工程を説明すると、美しく仕上げるために自然の条件が欠かせないこと、北山丸太がどれだけ厳しい条件でつくられてきたかを理解していただくことができ、高級建材と認識されていることに納得していただくことができました。
その後展示倉庫内の見学を行い、様々な種類の北山丸太が集まっている状況をご覧いただき、建築建材としてだけではなく、プロダクトでの活用の方向性の模索の相談や、価格帯の相談、対応について質問が出ました。
■マザーツリーの見学
次は中川八幡宮内の樹齢600年といわれる北山杉の母樹の見学へ。真っすぐに伸びた北山杉の木々たちの一部はこの遺伝子を継いだ子孫という説明をすると、かわるがわる母樹に触れられていました。
北山杉の古来より続く品種「シロスギ」は挿し木を繰り返してきたからか、小花粉の杉であり、花粉をださない遺伝子が(機能が)北山杉には潜んでいて花粉症には優しいという話題に一同が反応されていました。
杉=花粉症の元凶というイメージもあるため、杉の産地の見学にためらいを覚える現代人も多いという事が分かります。
ただ、今後環境が代わり、杉の生育が弱り、繁殖力を求めるようになったり、現在のように枝打ちなどがされなくなって放置されていくと、実をつけ花粉の飛散がはじまります。
環境のためにも、北山丸太を積極的に使ってもらい、植え替えていく必要があります。
パワーをもらうために北山杉の母樹に触る参加者も。
■大台杉の見学
最後は、大台杉をご案内しました。
関西方面では庭園や玄関先の庭木としても見られますが、関東近郊から来られた方は知らない方も多い、「台杉仕立て」という育林技術です。
萌芽更新を利用した技術ですが、現在では海外からもサスティナブルな育林技術として注目を集めています。
その大きさにも関心が寄せられますが、この台杉は樹齢450年という事を説明すると「この太い一本の樹から何本もの子どもの木が巣立っていったと思うと、母は強しですね」という参加者からの感想が聞かれました。
北山林業は様々な先人の知恵が林業を支え、北山杉によってこの地域の人々の暮らしが成り立ってきたことを伝えられたのではと思います。
また、この世界でたった一つのユニークな「林業のウッドデザイン」の形は日本人の知恵としても後世に残す財産だということを伝えられたのではと思います。
「北山杉は茶室や床の間に使う建材だという認識だった」
「こんなに美しい木があって、こんなに楽しい形もあると知りました」
「とても美しい風景で、これをなくしてはいけないと思いました」
「素材としての価格感や活用方法を聞く手段が出来てよかった」
と様々な感想を聞くことができました。
また、昨年度制作した「京都・北山杉PR BOOK」を持ち帰ってもらうことによって、北山杉の新たな活用方法を検討していただけるのではないかとこの視察会で感じました。
北山杉がもっているストーリーと解決したい課題を共有することで、ウッドデザインの力で
社会課題解決を目指す仲間が現れてくれることを期待します。
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