「京都・北山丸太」 北山杉の里だより

京都北山丸太生産協同組合のスタッフブログです

日本ウッドデザイン協会様北山杉視察ツアーを開催(前編)

2024年08月20日 | 北山杉体験・研修

6月26、27日の2日間、一般社団法人日本ウッドデザイン協会(以後JWDA)様主催、「北山杉利用推進プロジェクト※」共催「木の魅力、京都の深みに触れる2日間」視察ツアーが開催され、2日目の27日、北山杉視察会として京都北山杉の里総合センターおよび中川地区の見学会が行われました。

見学会はJWDA会員様32名が参加され、北山杉の歴史と技術継承、現状をご説明したあと、枝打ちの見学や北山丸太の皮むき、磨き体験、そして樹齢600年の北山杉母樹と大台杉の見学をしていただきました。

●北山杉の「川下」「川中」の理解を経て

視察ツアーの1日目は京都大学にて木材についての知見を深めるための講演と京都市の木材の取組の情報提供が行われました。

創業300年の老舗「酢屋」の株式会社千本銘木商会 中川 典子氏から京都の木材利用の現在の紹介や、株式会社torinokoデザイナー小山氏より北山杉を活用したプロダクトの説明、YOSHIHARAGUMI INC. 吉原 雅人氏より建築における北山杉の活用の紹介など、北山杉活用の現状や取組の情報提供が行われました。

YOSHIHARAGUMI INC. (代表 吉原 雅人氏)がデザイン・施工した南青山のセレクトショップ「Shinzone表参道本店」

※北山杉利用推進プロジェクトとは京都府の木でもある「北山杉」の維持・発展のため、2021年8月に京都市と北山杉利用者(株式会社内田洋行、菊地建設株式会社、ナイス株式会社、三井住友信託銀行株式会社)と生産者(京都北山丸太生産協同組合、京北銘木生産協同組合)が京都市:建築物等における北山杉の利用促進協定を締結し、北山杉の利用促進を図る取り組みを進めています。


2日目午前は、社寺建築を専門とする奥谷組の展示資料館をはじめ、日本の歴史的文化財を守る堂宮大工の技術や使用する木材の現状を視察後、昨年6月に一般公開された京都市役所にある茶室を見学されました。

新旧様々な京都建築物に北山杉は欠かせない素材であり、その使用用途や役割、経年美化などについてそれぞれの専門家より説明がありました。

奥谷組の展示資料館

京都市庁舎内の茶室にて

●「川上」の北山杉産地・中川地区 京都北山杉の里総合センターへ

京都市における北山杉活用の歴史や現在の取り組みについて学んでいただいた後、いよいよ中川地区の視察へ移動していただきました。

当組合理事長石川よりごあいさつを兼ね、北山林業の説明をさせていただきました。

続いて、京北銘木生産協同組合  米嶋理事長からご挨拶させていただきました。

まずは、北山杉の歴史と現状についてお話させていただきました。

北山杉の里、中川地区は山が美しく水源豊かで一年通じて気候も良く、杉の成長には適した条件がそろっているものの、急な地形の連続なため、木を大きく太く育てるには不向きという困難があり、先人たちの逆転の発想で杉を細く長く育て、近い都で使ってもらえるものを考えたのではと推測されます。

急斜面の山間の中川地区では農業を営むことも困難で、まさに林業で生計をたてることしかなかった村だったということが数寄屋造りや茶室に欠かせない高級素材・北山杉を生みだしました。

「京都府の木」ともなっている北山杉を多方面に知っていただき、先人が作り守ってきた山を活用し、次世代に継承したい思いを伝えました。

視察の流れとしては

①北山杉の歴史・概要
②枝打ちの見学
③皮むき、丸太磨き体験
④展示倉庫の見学
⑤マザーツリー(最古の北山杉・樹齢約600年)の見学
⑥大台杉(樹齢約450年)の見学

というプログラムを実施しました。

 

●北山杉の特徴と今後の展望

北山杉は真直ぐに育ちその年輪は緻密で、4年ごとに枝打ちをし、皮をむいたその木肌は非常に滑らかで独特の優美な趣きがあります。枝打ちをすることで木肌が締まり、枝打ち痕を包み込んで目が詰まってくることを利用した先人の知恵です。実際見て触れていただくことでその滑らかさは他にはないと感じてもらえます。

 

北山杉には2通りの育成方法があり、1代仕立てと台杉仕立てがあります。

1代仕立てだと1本を育てるために30年から40年かかります。
都(みやこ)に販売する中で、天然木としては模様にデザイン性のある絞りが装飾として注目されたことで、人工的に絞りを作る方法を編み出し、高額で販売したことも、この地域が林業以外で収入がなかったための先人が編み出した商法だったのだと推測します。
手間ひまをかけ、30年超という年月をかけるからこそ、北山杉は高級な建材として重宝されたのだと思います。

今回、お話しさせていただいた内容は、昨年度制作した「京都・北山杉PR BOOK」に掲載されています。

北山杉について、詳しい内容を知りたいどなたでもダウンロードできるようになっています。

https://www.city.kyoto.lg.jp/sankan/page/0000106000.html

「木」そのものを商品とし、銘木を創り上げる技法を活用する北山杉は世界で類を見ない地域一体型商材です。この先人が残してくれた知恵と技術を継ぐ後継者が非常に少ないことは現在の大きな課題です。

また、北山杉利用推進プロジェクトであり、日本ウッドデザイン協会の広報普及啓発部会長 宮川氏より、現在の北山丸太の市場について説明補足があり、北山杉の価値とともに、現在は使いやすく、使用用途についても幅が広くなっていることの説明がありました。

世界でもサスティナブルな林業として注目されており、またモダンなデザインにも活用できるという説明があり、新たな北山杉の可能性をアピールしていただきました。


いよいよ外に出て北山杉の枝打ち見学、皮むき・磨き体験、そして中川集落へ北山台杉の古木を見学に参ります。
続きは後編でお知らせします。

 


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