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車好きオヤジのブログ

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不死身のパンチョ

2020-12-11 17:33:07 | 日常
1号ネタはまだ納期もあるしクイズ正解もなかったので久々に鈴木正博シリーズの
復活でもいっときまひょかい。





『第14話 YUKA』



10年ほど前まで地元ではそこそこ名の通ったステーキハウスAがあった。

パンチョ髭を蓄えたコックの看板によく似た親父が鉄板敷きのカウンター内で
一種大道芸人風のパフォーマンスで調味料の入った筒をクルクル廻しながら
炎を上げて又の深いフォークとナイフを使い手際よくひと口大に
切り分ける調理法も肉の味だけでなく初めて見る者にとっては楽しい店だった。

メニューには載せてはいない土産用に持ち帰りする
ニンニクチップも常連客なら誰もが知っている物だ。

家族や友人とも当別な日に何度か訪れていたのに突然の閉店。
風の便りに主人が亡くなったのでと聞けば残念に思うしかなかった。

それがそこから車で10分、電車で二駅の5分足らずの場所に
数年前から新たにステーキハウスをやっていると知人から聞かされた。
是非行ってやってくれとも念押しまでされては行くしかないが、
死んだ人間が生き返る訳はない。
種を明かせば髭の親父は雇われチーフで亡くなったのは社長、
社長夫人自身も気落ちして続けていく元気も無くなってしまったので
泣く泣く店を畳んだというのが真相であった。

生活が懸かってる以上チーフもその後の身の振り方を考えた時、
息子が後継になってくれる話になり開業することにしたそうな。

以前はちょっとしたファミレスくらいの規模の店だったが
今度は10数人入ればほぼ一杯になるようなこじんまりとした店だ。
ある意味隠れ家的な存在とも言える。

だが最近は量も食べられないし肉より専ら魚系の方が好みの正博である。
一人では行く気もしないまま数カ月が過ぎてしまっていた。



優華は近所に住む看護師見習いのコ。
1年ほど前に飲み屋で知り合った時にライン交換して時々やりとりする程度の仲だ。
聞けば正博の子供の小学校の後輩で22歳と非常に若い。

女好きを自認する正博だが若い女性は苦手としている。
若者に話を合わせる気もないし、こちらに合わせてもらう気もないからだ。
不思議なことに何故か優華はジジイに対する態度というのか
あしらいが非常に上手くて話す会話も無理なく心地よい。
おそらくは祖父母辺りに育てられたのではないかと勘繰るくらいに
自然と気の置けない相手に感じるのは間違いなかった。
病人に年寄りが多いのもそういう特性で看護師という職業を選択したのだろうか。

一度晩飯でも行こうかと口約束したものの医療関係者でもあり
コロナ禍に敏感になっているのもあってそのままになっていた。

「旨いステーキでも行くかい?」と聞けば
『行く、行く、連れてって!』の返事が来てようやく来店と食事の
W約束も果たすことが出来たのである。

時節柄気になっていたソーシャルディスタンスも杞憂に終わる。
カウンター隅でも良いと事前予約して行ってみれば客は我々2人だけ。

カウンター席より奥へとテーブル席に案内されたので
あのパフォーマンスもやっているかどうかは不明だが。

以前の店と比べるとメニューもシンプルでコース料理が3種と
単品料理も絞った品数となっている。
ハンバーグ等の昼のランチは別メニューでお得な感じ。


チーフお勧めの和牛コースを注文。






どれも美味しくいただいたもののメインの150グラム程度のステーキは
全て食べるのは厳しいと判断し目分量50グラム取り分け優華の皿に。

若さというのはやはり凄いものだ。即ペロリと食べ終えて、
まだまだイケそうな感じである。

こちらはそれでも満腹になってしまうのが情けない。
たまには肉も良いけどさ、やっぱり刺身系の良さも感じた一日だった。

ニンニクチップは以前からあったノーマルに加え、
七味唐辛子を混ぜた辛口タイプの2種。
これはご飯のお供に、酒のアテにもピッタリ。

当然帰りに土産で買って帰ったのは書くまでもない。

(了)