「ご臨席の皆々様に申し上げます。
この盃は兄・舎弟の契りを結ぶ盃でございます。
御目通しを願います。」
『結構です。』
「宜しゅうござんすか。」
「兄となられます〇〇親分に申し上げます。
その盃は兄・舎弟の契りを結ぶ盃でございます。
気持ちだけお飲みになりまして納めいただいてお下げ願います。」
チャララララ~ン、チャララ、ラララララ~ン♪(伴奏開始)
https://www.youtube.com/watch?v=tVTfV9xrCX0
親の血をひく兄弟よりも
堅い契りの義兄弟
こんな小さな盃だけど
男いのちを賭けて飲む
義理だ恩だと並べてみたら
恋の出てくる隙がない
後は頼むと駆け出す露路に
降るはあの娘の涙雨
俺の目を見ろ何にも言うな
男同士の腹の内
一人くらいはこういう馬鹿が
いなきゃ世間の目は覚めぬ♪♪
(伴奏、歌終わり)
「兄弟仁義」 歌:北島三郎 作詞:星野哲郎 作曲:北原じゅん
冒頭はヤクザの世界の盃事のひとこま。
サブちゃんの歌もおそらく同様だろう。
夏は蒸し暑く冬は底冷えする京都も梅雨入りするまでのほんの少しの時期の
5月の今頃だけは過ごしやすい気持ちの良さだ。
中途半端な距離に住む俺にとっては車で通り過ぎる以外、
観光気分なんてのはもういつだったか覚えていないくらいだ。
仕事を終えて向かった先は四条烏丸。
遠路はるばるD兄貴が出向いてくれると聞いては、
何を差し置いても行かなきゃなるまい。
お天道さんも後押ししてくれてるような気になってくるくらい天気も気分も最高だ。
実は兄貴には以前からとてもお世話になっていながら実際会うのは今日が初めて。
つまり今日は正式に義兄弟の盃をいただく日なのであった。
聞けば前日神戸、今日は京都と出張仕事で来ているようで、
先週突然関西に行くから良かったらと連絡をもらい
忙しい合間を縫ってわざわざ時間を空けてくれたのでした。
嬉しいのは勿論だが何だかとても緊張するぜ。
やたけたで好き勝手な性格の俺とは全く違い、兄貴は紳士そのものの方なのさ。
知的で温厚、物腰も柔らかく普段よりその言動から教えられることばかりの
こちらとすればいざ現実となればどう対応すりゃ良いのか全く判らんのよね。
酒でも飲ませて誤魔化す作戦しか思いつかないが具合が悪いことに
兄貴は凄くお酒には滅法強いと聞いている。
となれば非礼を承知で地のままで迎え、先に酔っぱらうしか手はないだろう。
向かったのは四条烏丸を徒歩3分程入った町屋の一角のとある料理屋。
百貨店を始め近代的なビルが立ち並ぶこの辺りも一歩入れば何百年と歴史のある
古い街並みに変わるのも今更ながらに古都の風情が漂いまくり。
京町屋とは江戸時代にはもうその形になっていたくらい古い作りの建物で
元々店屋と書いたくらいに住宅用というより商売をする為の家なのだ。
外観上の特徴は入口の間口が非常に狭く、それでいて奥行きはかなりある
所謂うなぎの寝床のような日本家屋と思っていただくとほぼ間違いない。
その町屋作りをを改装して作った料理屋なら
本来の姿に戻ったとも言えるのではないだろうか。
盃事には申し分ないと予約させてもらうことにしたのだった。
流石に紋付袴は憚られたが、相手が相手だけに他人から見りゃ馬子にも衣装のスーツに着替え、
普段はしないネクタイなんぞも締め俺にとっての正装で臨んだのは言うまでもない。
表からは小さな行燈だけで気がつかなきゃ行き過ごすような格子の門をくぐれば
そこには想像以上の長い石畳が続く。
舞妓や芸者が通るのが絵に合いそうな入口だなこりゃ。
入ると奥も案外広く案内されたのは4人~6人程度が座れる小さな和室。
出入り口は襖で仕切られ真ん中にテーブルがあり雪見障子の外には小さな庭が見える。
これ(小指を立てる)との逢瀬なんかにも良さそうで、
無論兄貴との差し向かいはおあつらえ向きであったろう。
長旅の出張先の仕事を終えてお疲れの兄貴は渇いた喉を潤すビールを所望。
仲居お勧めの瓶の京都地ビールだ。
痛風持ちの俺は非礼を承知で焼酎でご勘弁。
「か・か・かっか乾杯~!」
グラスを持つ手と声が震えるぜ。
終始穏やかでマイペースな兄貴はその後俺に合わせてビールから焼酎に、
その後の日本酒まで一向に酔う気配がない。
こちらは焼酎2杯目辺りからかなり記憶の一部が飛び加減、
今思い起そうとしても何をどう話したのかも定かでない。
ガズ友のご隠居やはげおやじさん、settaiさん達の話が出た気はするのだが・・・?
きっと仙台で行われるオフ会の話だったようにも思う。
会えればあれも聞こうこれも相談しようなんて思っていたはずが、
酔いに任せて俺一人が舞い上がって喋り続けた気がする。
若者なら物足りない程度の量しかない懐石だったけど、
取りあえずは酒さえあれば良かったかと考えたのもどうだったか。
その後タクシーで5分ほどにある河原町のバーに繰り出した時には
既に時間の感覚もかなり怪しくなっていた。
下車して徒歩1分の予定が約10分も掛かる始末さ。
35年以上会っていない同級生が確かバーをやっていると聞いたことがあっただけの店で
行くのも当然初めてだと言い訳するより本当に悪いのはマツモ○キヨシだと
D兄貴なら判ってくれると思うのだが・・・?
入ってからすぐに噂の通り酒の強い兄貴、
今度はシングルモルトのロックでグイグイやってましたね。
相変わらず顔だけ見れば丸っきり素面に見える。
こちらもウィスキーロックで合わせたのが運の尽き。
飛び飛びに失われた記憶が戻った時にふと時計を見ればもう終電ギリギリ。
はやこまさんには「またそうなっちゃたの?」なんて言われることだろうがな。
結局バーでは更に何を話したのか判らないままお別れとなってしまった。
千鳥足で電車に乗り込んだ俺を見えなくなるまで手を振ってくれてたDさん。
終電の車中でウトウトしてるとDさんから「お疲れ様」の優しいメールが着信。
本当に有難うございました。
またこの度の粗相は旅先での戯言と笑って済ませていただければ幸い。
書きたいことは山ほどあれど紙面の制約もありこの程度でお許しいただこう。
若隠居さんには既に長いとお叱りを受けるかも知れないが・・・?
もう皆さん薄々お判りかと思うがDさんとは大雪さんのことである。
兄貴!今後ともお見知りおきよろしゅうお頼申し上げやす。
(兄弟シリーズはこれにてお終い)
※丁度大雪さんとお会いする前日遅く突然自宅のPCが立ち上がらなくなりました。
たいしたデータはないものの少しのファイルやメール等のバックアップを
取っておらず少々焦りましたがお蔭様で本日近所のパソ〇ン工房で復旧。
原因は不明(私としてははDさんサプライズかなと)ながらバイオスや各種設定が
変わっており加えてwindows7のPCがXP用になっていたりしたようです。
TVはなくても困らない生活ながらPCは最早私にとっては必需品と実感した
ここ数日間でありました。