新・私に続きを記させて(くろまっくのブログ)

ハイキングに里山再生、れんちゃんとお父さんの日々。

さよなら 高見のっぽさん 原尞さん

2023年05月12日 | お悔やみ
お目にかかったことも、言葉も交わしたことさえないのに、こころの底から信頼している方々がいます。。

この週末は、そのうちの二人の訃報を相次いで知らされることになりました。

一人は高見のっぽさん。のっぽさんとゴン太くんに捧ぐ習作。



『できるかな』は、ほぼリアルタイム世代です。


ダンボールやガムテープを見ると、ゴン太くんのために素敵なおもちゃを作り出す、のっぽさんの魔法の手を思い出します。でも、のっぽさん自身は不器用で、材料にはスタッフがわかりやすく目印を入れるなどのサポートがあったそうです。だから、おもちゃが完成したときののっぽさんの笑顔は、「自分にもできた!」という心からの笑顔だったということです。

いま、ものづくりの現場に近い場所にいるのも、この番組の影響かな?

ことばを一言も発しないのっぽさんと、「ウゴウゴ」としか話せないゴン太くんと(クイーカというブラジルの民族楽器の音だそうです)のパントマイム劇は、「コミュニケーション」なるものを考えるときの原点になっているような気がします。たとえお互い思いが伝わらなくてもわかり合うことはできるし、わかり合えなくても思いを伝えることはできるという、希望であり、諦念です。

時代は下り……

1990年3月、それまで無言だったのっぽさんが「あー、しゃべっちゃった」というセリフを発した、伝説の『できるかな』最終回を、私はリアルタイムで視聴しました。あのときの衝撃。

私は当時発行していたミニコミに、そのショックと、のっぽさんとゴン太くんにお別れを告げるエッセイを発表しました。

私がミニコミを創刊したのも、C派が組織破防法の適用を受けたときに備えて、宣伝煽動のための印刷・出版ルートを確保してほしいと、ある人に依頼されたことがきっかけでした。私はセクトやノンセクト、ノンポリも含めた一種の人民戦線としてそのミニコミを位置づけました。しかし、何が理由だったかはわかりませんが、その人の戦線離脱に伴い、セクトの諸君は私のミニコミから去っていきました。私の「できるかな」論も、ブルジョア主義、市民主義とセクトの諸君には不評でした。

しかしのっぽさんは3・11以降、反原発、反戦平和、護憲の立場を鮮明に表明していました。どうしてこの方をオルグしようとしないのか。しかしまあ、党派テロリズム、また爆弾闘争で、無辜の民に犠牲者を出した過去を総括しきれていないC派を、のっぽさんが支持するわけがないことも明らかでした。

私は大切な人を二人亡くしたと書きましたが、いま一人はハードボイルド作家の原 尞さんです。

チャンドラーに影響を受けた文学者として村上春樹がいるけれど、春樹の比喩は特にゼロ年代以降は滑りがちです。この点、原尞さんにはそんな嫌味や臭みがない。日本の風土・社会(!)にチャンドラー的文体がマッチしている。日本におけるハードボイルドの可能性を指し示した偉大な作家だったと思います。


私に原尞氏を勧めてくれたのは、私のミニコミに、セクトメンバーとして唯一の執筆者として残ったE氏でした。

ここで昔語りになりますが……。

1980年代後半、C派は新左翼最大の過激派といわれていました。

しかし実態はどうだったでしょう。元ブントのある人いわく「最小犠牲、最大効果」ならぬ「最大犠牲、最大効果」が持説のS議長の方針により、10・20三里塚十字路戦闘、11・29浅草橋戦闘で、全学連の主たる幹部は逮捕・投獄され、学生戦線は完全に瓦解してしまいました。

80年代後半のいわゆる全学連執行部にも、10・20闘争参加者はほとんどいなかったように思います。主要なメンバーはすでに逮捕・投獄されていたか、地下に潜行するか、すでに離脱していたからです。

私はセクトとは距離をとりながらも、あの頃はE氏ら気のおけない友人たちもいて、まだ完全には関係を断っていませんでした。10・20ほかの「生きるレジェンド」だったようです。

ある日、E氏が「おまえにはこの本を読んでほしい」と持ってきた本があります。それが、原 尞 氏のデビュー作『そして夜は甦る』でした。『できるかな』最終回の翌日でした。当時はまだワープロ時代で、編集部で手書きの原稿をワープロ入力するのですが、E氏はフロッピー入稿してくれる最先端(?)の過激派でした。パソコン通信を使った宣伝・煽動活動を提起したけれど、セクトは全く無反応でした。あの感度の悪さ、右翼にだいぶ遅れをとってしまいました。


脱線するようですが……。
若いころの私はスモーカーで、禁煙する前は両切りのショートピースを愛飲していました。

ショートピースを愛飲したのも、E氏の勧めによるものでした。
沢崎シリーズの沢崎が愛飲するのが、ショートピースだったからです。
E氏も元はスモーカーでしたが、デモで息切れしてしまい、女性同志にもついていけなかったのがショックで、禁煙したのです。

「それなのにおまえは体に悪いタバコを吸い続けようとしている。それなら、沢崎を見習っていちばんニコチンのきついショートピースにしろ」

と、言い渡されたわけですね。

20年くらい、この約束を守ったのかな。

しかし私も結局、病気になり、10年前に禁煙してしまいました。

禁煙したとはいえ、いまでもタバコ吸いたいなあ、と思うことがあります。

いまタバコを吸ったら一発で解決なのに、と思う瞬間があります。
だから、ニコチン依存症を完全に抜けきったとはいえないようです。

2018年の沢崎シリーズ最終作『それまでの明日』では、沢崎もすでに60代。

あの男もすでに老々介護で。時代を感じさせる作品でした。禁煙を強いられながら、いまも生涯現役でがんばる70代、80代の沢崎の話も読んでみたかったなあ。



れんちゃんのお友達のくろちゃんです。
この不敵な面構えがかわいいでしょ?
れんちゃんが「こども」を「小さな人」と呼ぶのは、のっぽさんの影響だそうです。



「赤旗」掲載ののっぽさんのインタビューです…はぃ。

のっぽさん、原尞さん、ほんとうにすてきな人たちと出会えて、楽しい人生でした。人生の折り返し地点はとっくに過ぎてしまいましたが、残る日々も慈しんで楽しんでいきたいと思います。


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9 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
初めまして (shinogoo-blogger202238)
2023-10-11 10:49:47
初めまして、こんにちは。
初めてコメント投稿いたします。
高見のっぽさんのご冥福をお祈り申し上げます。
NHK道徳工作番組「できるかな」は、幼生時代により、リアルタイムで観ておりましたが、後継番組「ともだちいっぱい」とともにその内の工作コーナー「つくってあそぼ」のワクワクさん「久保田雅人さん」とゴロリ「声・故中村和利」の共演かけあいが自分にして印象的でした。
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再訪ありがとうございます (kuro_mac)
2023-10-11 11:58:02
コメントに感謝します。以前ご来訪いただいたときのクロスワードはお役に立ちましたか?
私は見る機会に恵まれませんでしたが、「つくってあそぼ」も名作のほまれが高いですね。
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返信 (shinogoo-blogger202238)
2023-10-12 13:10:46
kuro_macさん、こんにちは。
コメント返信のほうをありがとうございました。
あ、以前に記事へのコメントをいたしましたね。
大変失礼いたしました。
クロスワード、まだ仕上がっていませんが、時間をくださいね。
「できるかな」は、昭和45年から平成2年にかけて約20年間も放送されたのち、後継番組「ともだちいっぱい」は平成2年から平成7年まで約5年間も放送したものの、そのゾーン枠のコーナーである「つくってあそぼ」は「できるかな」の実質的後継工作道徳番組として、平成2年から平成25年まで約23年間も放送されていたそうです。
また、自分世代のできるかな主題歌は三代目のほうです。
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これはまたご丁寧に (くろまっく)
2023-10-12 22:53:02
年の離れた弟/妹たちがいたので、教育テレビは成人後も身近だったのですが、さすがにこの「できるかな」最終回のころが結節点でした。

「つくってあそぼ」そんなに長く放映されたんですね。納得ですが、驚きです。
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返信 (shinogoo-blogger202238)
2023-10-14 14:55:15
kuro_macさん、こんにちは。
コメント返信のほうをありがとうございました。
自分自体にNHK教育Eテレは幼生時代からのリアルタイム番組の多いテレビ局でした。
「おかあさんといっしょ」「みんなのうた」で始まり、ふえはうたう、うたってゴー、たのしいきょうしつ、ワンツーどん、にんぎょうげき、おはなしのくに、そして、天てれ...

「できるかな」の最終回は、放送開始以来、ほとんど喋らなかったのっぽさん「高見のっぽさん」が初めて喋ったことも有名でした。
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Unknown (くろまっく)
2023-10-15 07:33:08
「できるかな」最終回はリアルタイムで視聴しました。
このブログの看板娘の五十鈴れんも、「できるかな」DVDを見て育ったようです。
私の知識は「できるかな」までで、それ以降の教育テレビはよく知りません。
また興味を引く記事があればよろしくおねがいします。
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返信 (shinogoo-blogger202238)
2023-10-16 12:18:01
kuro_macさん、こんにちは。
コメント返信のほうをありがとうございました。
五十鈴れんというのは、以下通りの公開リンクのアニメキャラ?

https://dic.pixiv.net/a/%E4%BA%94%E5%8D%81%E9%88%B4%E3%82%8C%E3%82%93

自分のgooブログは車のブログであるため、それ以外の特定趣味のほうは、FC2ブログにて記事投稿することにしています。

https://shinofcblogger202339.blog.fc2.com/
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さあ (くろまっく)
2023-10-16 17:58:19
どうでしょう。
記事の主旨から離れてきましたので、これで最後のコメントとさせていただきますね。
またこのブログがお目に留まる機会がありましたら。
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返信 (shinogoo-blogger202238)
2023-10-19 19:51:28
そうですね。
別の記事コメントで逢いましょう。
今日はありがとうございました。
そして、忍のGooブログも記事ネタがあまりないため、更新を一旦お休みいたします。
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