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ことばよりも雄弁に 「魔眼」のひと 追悼・岡田嘉夫

2021年02月18日 | お悔やみ
 岡田嘉夫氏 86歳 (おかだ・よしお=画家)
 1月31日、腹膜炎で死去。葬儀は近親者で済ませた。(中略)
 神戸市出身。鮮やかな色彩と流麗な線で挿絵や絵本で活躍。作品に「田辺聖子の小倉百人一首」、作家の橋本治との共著「歌舞伎絵巻」(全5巻)など。
 (読売新聞 2021年2月17日 朝刊)


岡田先生

先生の訃報は、この新聞記事より少し早く知りました。

お亡くなりになった夜、先生が夢見に立たれた話について書いてみました。朝目覚めて、もしかして先生はお亡くなりになったのかもしれないと思いましたが、縁起でも無い、勘違いだろうということにしておきました。ある朝、インスタグラムを開くと、お亡くなりになった前の週で更新がストップしたままでした。さすがに心配になり、Aさんに連絡を取ろうとすると、本人から電話があり、先生の死を知らされた次第です。

先生の思い出が語られる「文学少女 五十鈴れんの冒険」シリーズは、あるゲームに登場する少女たちと、「お父さん」が文学について語り合うという、一種のパロディ作品です。この作品に登場する天才少女画家の「アリナ・グレイ」を、先生のファンとして登場してもらうことにしました。先生とはまた違った意味でエキセントリックな少女です。

『マルメロ草紙』の「紫の人」に関するエピソードは、研修の場などで、デザイナーの卵たちに話してきたことで、浮世絵における絵師・彫師・摺師の関係は現在のグラフィックアーツでも不変であるという話をするのに、紹介させていただいています。「鮫肌」のエピソードは、ある年に講師をお願いした「おじいさん」のモデルの一人の話ですが、結局先生にお話しすることはありませんでした。大激怒させたのはまた別の話でしたね。

ヴェルレーヌの「モノトンヌ」ならびに「グレースケール」の話題は、老いてなお鮮やかで流麗なタッチの絵筆を振るい続けた先生の魔眼の謎に迫る?科学ミステリーです。先生も、この老技師のように、グレーバランスを見ていたのではないですか? 

『マルメロ草紙』の複版または復刻について語っています。ぜひ本作について知っていただき、関係者にご検討いただきたいと思います。本作はコレクターの書架に眠らせていくだけで終わるにはあまりにも惜しい傑作です。それは美術的文学的喪失です。

それでは安らかにお眠りください……と、いいたいところですが、私の中の先生は、いつまでもおしゃべりをやめそうにないし、帰してくれそうにもありせん。あれだけ話好きだった先生は、残された作品たちと同じように物言わなくなってしまいましたが、先生の絵はどんなことばよりも雄弁です。作品がある限り、先生はまたわれわれの中に生き続けるでしょう。それではしばしお別れを。



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