新・私に続きを記させて(くろまっくのブログ)

ハイキングに里山再生、れんちゃんとお父さんの日々。

晩秋のあさがおと大和和紀さん

2023年11月01日 | 作家論・文学論
ある夜見た夢をモチーフに、いま書いている小説は、5パート構成の短編です。

小説を書くのは、ずいぶん久しぶりです。

原稿用紙換算で、10枚から20枚で収まるかなと思っていたのですが、第1パートの中半部ですでに2500字越え(6枚越え)。他者に対してすっかりこころを閉ざした気むずかしい主人公が、突然の来訪者に気を許し、過去の片鱗を見せるまでには、それだけの字数が必要になりました。もしかすると、中編くらいの分量になってしまうかも。

しかし、小説を書くのは、おもしろいですね。登場人物が、どんどん、イメージのなかで動き出して。特に女性を書くのは楽しいですね。これから私が書こうとしているのは、女性のかわいらしさや美しさや優しさや強さを集めた、ほんとうに素敵な人なんです。

逆に、少女漫画家さんは、男性を描くのが楽しくて仕方ないそうです。

ここで、少女漫画作品をご紹介。

一年前は、れんちゃんが、大和和紀さんの『眠らない街から』を紹介していました。本書は、私たちおやこの愛読書なのです。


11月の花

「冬にだって花は咲くもの。11月には冬バラが咲くもの」(大和和紀『眠らない街から』)11月になり、肌寒くなりましたね…。でも、8月に見つけた朝顔の仲間が、今朝も元気に咲いてぃ......


「冬にだって花は咲くもの。
11月には冬バラが咲くもの」
(大和和紀『眠らない街から』)

去年、11月になっても、朝顔が咲いているのには、驚きました。

今日も同じ場所に朝顔が咲いていました。さすがに、夏に比べると、花の大きさは小さくなっていますが……

朝顔に負けじと思ったのか、近くの資材置場の昼顔まで咲いているのには、ほんとうに驚きます。地球温暖化ならぬ沸騰化の影響で、必ずしもよろこんでばかりはいられないのですが。

『眠らない街から』は、私が大和和紀作品で、いちばん好きな作品かもしれません。イクメンのシングルファザー(ということばは、本作発表時の1980年代にはありませんでしたが)とともに、銀座のビルで暮らす小学生の少女が主人公です。引用したのは、彼女が、ビルに訪ねてきた、父親と何かと因縁のあるあるらしい祖母に贈ることばです。

大和和紀さんの代表作である『あさきゆめみし』は、最良の源氏の入門書であり、漫画作品としてもひたすら息を呑むほど美しい作画ですが、漫画家としての大和さんは、『はいからさんが通る』のようなギャグが真骨頂だと思うんですよね。『あさきゆめみし』で、大和さんらしさが出たギャグパートは夕霧と雲雁居の夫婦喧嘩のエピソードくらいでした。しかしこのエピソードも、あまりにも描写が現代的だったことに驚き、大和さんの創作かと思い、原典に当たると、原典に忠実だったのには驚きでした。大和さんは、現代人にも受け入れやすいように、いくつかの改変は行いましたが、おおむね原典に忠実です。同じ古典に取材した作品でも、清少納言を主人公にした『春はあけぼの殺人事件』のほうが、大和和紀さんらしさが出ていたように思いました。

しかし、これはあくまでも『はいからさんが通る』が大好きだったファン心理にすぎません。タイトルは忘れましたが、ゾッとするほど救いのないホラー系の作品もあり、ギャグがすべてだと決めつけるつもりはありません。

『眠らない街から』が興味深いのは、1970年代から80年代にかけて、作者の大和和紀さんに、男性の好みの変遷があったのではないかと思われることです。

『はいからさんが通る』の伊集院少尉も、『あさきゆめみし』の光源氏も、輝くばかりの美男子でした。

しかし、本作の主人公の父親は、同級生の友だちに「ハンサムじゃないけれど渋い」と評されています。主人公はそれを不満に思い、「渋いだけじゃなくて、ハンサムだと思うけどな」といっています。

御家人の半四郎とゆきえ夫婦を主人公にしたお江戸コメディ『にしむく士(さむらい)』で、ふたりを見守る御徒組組頭の尾花様も、この父親と同じ顔です。おとぼけキャラですが、いざとなれば、いわゆる美形の半四郎くんより、頼りがいがあるキャラなのですね。

ここで思い出されるのが、講談社漫画文庫に収録された『はいからさんが通る』の、雑誌掲載時の枠外作者メッセージです(SNSのない時代には、枠外がファンレターを送ってくれたファンとの交流の場になっていたのです)。

当時の大和和紀さんは『ガッチャマン』にハマっていて、特に「コンドルのジョー」が大好きだったそうです。「コンドルのジョー」もイケメンでしたが、ガッチャマンこと「大鷲の健」の美少年ぶりとは異なり、渋め系ではあります。読者や編集者のニーズに合わせ、伊集院少尉や光源氏や「大鷲の健」系統の美少年を描いてきたけれど、実績を積み重ね、自分の描きたいものを描けるようになったとき、『眠らない街から』のお父さんや『にしむく士(さむらい)』の尾花様のデザインが完成したのでしょうね。 

そういえば、東京でも、大阪に来てからも、ペルー人のトリオの路上ライブをよく見かけました。『コンドルは飛んでいく』が定番でしたが、ここしばらく見かけませんね。故国に帰ったのでしょうか。

小説も、できたら1970年代を舞台にしたかったのですが、そのためには、1970年代の大阪・神戸について、膨大な資料を読みこなす必要があります。

現在、私にはそこまでの余裕はなく、断念しました。そのため、韓流が大好きな中高年女性にも受け入れられそうな年の差カップルが誕生しました。私の書く話も、ペルーの三人組が東京や大阪で現役だった1980年代、90年代が舞台になりそうです。


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