BENTO EXPOの憂鬱

　お昼のNHKのお弁当番組、『BENTO EXPO』というのか。ようやく番組名を覚えたぞ。

　今年の4月から始まったらしいが、お昼の放送時間帯に放送するのは、もうやめたほうがいいと思う。

　お昼のNHKはさ、普通に地方の町を訪ねて、地元の人とタレントさんが会話して、温泉に入ったり、マグロがピチピチしていたり、ブドウを狩ったり、グルメを楽しんだりでいいんだよ。会社の食堂で見ながら、「あれうまそう」「ここ行きたい」と仲間と会話も弾むしね。


　いや、この番組も、もくもくご飯を食べながら、ボーッとしていたいお昼の時間帯に見るから、イラッとするのでね。夕方3時とか4時のすきま時間に、今夜のおかずは何にしようかなあ、買い物面倒くさいなあと思いながら、おせんべいボリボリしているときなんかに見たら、この番組も有益だと思うよ。今週やっていた香港定番の「ヨッベンBENTO」はうまそうだった。挽肉で何か作って、明日のお弁当の献立にも使い回せる。

　ここで気づいた。この番組にイラッとくるのは、誰が弁当のためだけに朝から料理するんだよ、という点かな。今日もお弁当おかずは自然解凍の冷凍食品だ。自分で作るよりおいしくて安い。夕飯の余り物や冷凍食品を使い回しながら、みんなコストと労力を抑えているわけでしょ。昔の日本の中流家庭には、三食きちんと手作りするゆとりがあったかもしれない。しかし今の日本では、朝からお弁当のためだけにキッチンに立つなんて、「どこのセレブですか」という話なんだよ。お昼にテレビを見ているやつなんて、基本的におれたちびんぼう人の情弱なんだからな！

　海外で人気らしい弁当作家マーク＆マキの実演コーナーの、外国商品の通販番組風の吹き替えも、イラッとくるね。何がヘルシーでカロリーゼロのこんにゃく麺の焼きそばだよ。1日1500kcalの指示も守れないのに、なんで1食200kcal台のやきそばで満足できると思っているんだよ。マークはスラッとしたスリムなボディをしやがって！ マヨネーズを口からミキサー車で流し込むぞ。こんにゃくはこんにゃくとしてありがたがれよ！ こんにゃくは、何かの代わりじゃないんだ。こんにゃく麺なんて、「インスタ映え」するだけで、ちっともうまくも何ともないからな。いつの間にか業務スーパーも置かなくなってしまった。

　昔の料理番組で人気のあった小林カツ代さんには、料理に失敗しても、素材をムダにしないためにどうアレンジし直すか、そういう一生役立ちそうなノウハウがあった（たいていは忘却の彼方だけどな！）。しかしマークの料理は、見てくれだけで、食欲にそそられることも、膝を打って感心することもない。まあ、あのフライパンは便利そうだけれどね（影響されやすいのだ）。
　
　各国の弁当を紹介する取材パートは、それなりにおもしろい。しかしほんの数分ほどで、後はスタジオで完結できてしまう。このチープな番組づくりも、今のNHKの劣化をよく表しているような気がする。