新・私に続きを記させて(くろまっくのブログ)

ハイキングに里山再生、れんちゃんとお父さんの日々。

まどマギで煙草をやめた話

2019年09月07日 | まどマギ・マギレコ

 暁美ほむらの第一印象は、ツバメかペンギンみたいな女の子だなあということ。風になびくロングヘアが、ツバメの尾か、ペンギンの翼のように見えたのだ。何か悪さをやっていそうで、ネクラそうだけれど、でも、そんなところもかわいい。

 よく見ると、『マギレコ』の環いろはと同じく、ほむらも少し吊り目なんだね。かわいい。

 三ツ矢サイダーのコラボ商品のこのほむらがかわいすぎて、甘い物厳禁なのに、つい、イラスト目当てで買ってしまった。ほむら、まどか、マミさんの順で買い、全員揃えたかったが、杏子とさやかを手に入れようとした頃は、売り切れで買えなかった。この缶は、今も大事にとってある。

 昨日、『叛逆の物語』の館内ポスターの前で立ち止まった話をした(ポスターの画像はこちら)。以前から『まどマギ』には興味があり、いつか観たいとは思っていた。労組のアニメ好きの若手にも、観るように薦められていた。しかし、きっかけがない。「おっさん」が、若者たちの列に入っていくのは、ためらいや遠慮もあった。

 直接のきっかけは、親子ほど年の離れたあるフォロワーさんが、公開初日にこの映画を観に行った話を見聞きしたことだ。朝から満席で、2軒めでようやく観ることができたらしい。「ぼっち」「ヒキコ」を自称していたその人を、そこまで行動させる『まどマギ』とは、一体どんな作品なのだろう。興味を惹かれた。

 当時、私は以前書いた本の第二版の校正作業中で、頭の中は平安時代に完全移行していた。公開翌週の木曜日夕方にこの仕事が校了して、ささやかに祝杯を上げようと思ったとき、その日がハロウィンであることに気づいた。そして、「ハロウィンだし、話題の魔法少女アニメでも観に行こうか」と思い立った。上品な味付けの和食が続いたから、コンビニスイーツをむさぼり食いたい欲望に駆られたような感じだった(数時間後、コンビニスイーツどころか、ドラッグのごとき恐ろしい作品であることを、思い知ることになる)。

 私は、『まどマギ』のことは、作品名しか知らなかった。キャラクターの顔と名前が一致したのは、あの淫獣だけである。しかし、タブラ・ラサ(白紙)の状態で見たからこそ、作品を満喫することができた。

 私はこの映画をステーションシティシネマで観た。冒頭、ベルリン駅をモデルにしたらしい駅舎が出てくるが、当時リニューアルしたばかりの大阪駅のドーム天井を思わせた。「Welcome to Cinema」というアーケードのあるビルが出てきたときは、自分がリアルタイムにその画面の中にいるような、不思議な感覚を味わえた。

 黒髪ロングの「あの子」が出てこないのが少し気になった。三つ編み眼鏡ちゃんは、どこかで見た気もするが、新キャラなのだろうか。私の中で「まどか」と認識していた子が、「かなめさん」と呼ばれるのには、少し混乱した。いや、眼鏡ちゃんは「まどか」呼びだから合っているはず。「かなめまどか」がフルネームであることに気づくまで、時間がかかった。

 キリコのシュルレアリスム絵画に迷い込んだような、隣町への冒険もすばらしかった。眼鏡ちゃんは、変身しようとする赤毛ポニテちゃんの手を押さえ、後ろからそっと抱き止める。ここは、私がもっとも好きなシーンの一つになった。二人が別れた後、眼鏡ちゃんはポニテちゃんにもらったキャンディごと眼鏡を捨て去り、三つ編みをほどく。ふぁさぁ。暁美ほむら第二形態「クールほむら」爆誕の瞬間である。

 「きみだったのか!」

 そのとき初めて、「眼鏡ちゃん」と「あの子」が同一人物であることに気がついた。原作10話のショックの逆バージョンである。

 マミほむバトルには手に汗を握った。手術台の上で、シーツをかぶった黒ワンピースのほむらがめざめるシーンの美しさにも、息を飲んだ。

 私は、『まどマギ』の予備知識一切なしで見たことで、記憶ゼロから徐々に記憶を取り戻していく劇中のほむらと完全にシンクロすることができた。この映画は、のべ150万人以上の人が観たというが(実人数はその半分か1/3ほどだろうが)、こんな幸せな出会いができたのは、ごくごく一握りだろうと思う。

 ただし、この映画がいいと思ったのも、そこまでだ。あの淫獣の長台詞には、うんざりした。クルミの魔女戦で、トコトコ走るまどかはかわいらしかったが、ほむらを救おうと盛り上がる4人には、「死にたいなら死なせてやれよ」と思わざるをえなかった(冷酷非情なのだ)。悪魔まで登場したのには、「はあ?」と口あんぐりである。

 「こんなものか」と思ったら、ラストの『君の銀の庭』である。あの映像と音楽の美しさに、今まで感じていた不満やストレスが、一切合切、吹っ飛んでしまった。ナイトメアのように浄化され、天に召されるような気持ちにさせられてしまったのである。

 『マリみて』のある巻に、この世のものとも思えない超まずいお菓子も、抹茶と一緒にいただくと、とたんに美味になるというエピソードがあった。この『君の銀の庭』が、その抹茶である。少なくとも前半は良かったのだから、それは言い過ぎか。

 最初は不気味でいやで仕方なかったクララドールズも、何度も観るうちに、むしろあの不気味さがクセになり、出てくるのが楽しみになった。偉そうに演説していた淫獣も、この後、クララドールズにフルボッコにされたり、ほむら様に踏みにじられボロ雑巾のようになることを思えば、「ざまあwwww」である。

 2回めからは、人に誘われて、梅田ブルク7に通うようになった。館内にはうめ先生の愛らしいキービジュアルが飾られ、写真も撮り放題という、まさに「幸せ空間」だった。ほむらは、ほむっとしてあんなにかわいいのに、邪険で毒舌キャラなんて、そのギャップがいい。コミカライズを担当したハノカゲさんが、「ほむらちゃんに罵られたいよう」とあとがきで書いていたけれど、その気持ちよくわかる。

 結局、私は、『叛逆の物語』に31回通うことになる。最初のうちは、禁煙を始めたばかりで、ニコレットをなめていた。11月半ばから、口にするのは、普通の飴やガムになった。12月になる頃には、もう何もなしで普通に映画を楽しんでいた。私はニコチン依存症を、まどマギ依存症で克服したようなものだ。



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