新・私に続きを記させて(くろまっくのブログ)

ハイキングに里山再生、れんちゃんとお父さんの日々。

いろはにほへそ ひだまりの経済学

2019年09月08日 | まどマギ・マギレコ

 昨年の冬コミに出た、うめ先生の『いろはにほへそ』ほど素晴らしい本は、そうざらにない。うめ先生が「れんぱす」(五十鈴れん)や梨花を描いてくれた、お宝ものである。天音姉妹も、みゃーことエミリーもかわいい。「おへそ」要素は、表紙だけだが、それだけでも貴重な一冊である。

 この本に収録された「いろやち」漫画が、掌編ながら、名作なのである。以下はネタバレ感想。結末まで書くのはどうかと迷ったけれど、すでに入手困難であること、そして「経済学」(!)という本論のテーマに関わる部分なので、ご容赦いただきたい。私の見た限り、古書店でも売り切れだったが、まだ手に入れようとしている人は、このエントリは読まないことをお勧めするよ。

 タイトルは「大学生と中学生。」で、まだ「環さん」呼びの頃である。食後の片付けで、やちよの髪が「ふわっ」として、「あ」と呟くいろは。「…何?」と聞かれて、「やちよさんの髪が いい匂いだなあって」と照れながら答えるいろは。かわいい。

 いろはの髪を「わしっ」として、「くんくん」するやちよ。うらやましい。シャンプーの匂いを確認したのだ。いろははお風呂にある「高級そうな」シャンプーを使っておらず、自分用のを持って入っていたと知り、「そういう遠慮はしなくていいの‼」と怒るやちよ。その夜、風呂上がりに髪を乾かしながら、ふわっとした自分の髪に、「やちよさんの匂いだ…」と頬を染めるいろは。尊死しそうだ。「…ふふ♪」と枕を抱くいろは。かわいい。

 しかし、2日後。「ばんっ」とドアを開け、「ムリです ダメです‼」と、顔面蒼白になってやちよに抗議するいろは。ティッシュを買いに行った薬局で、やちよの使っているシャンプーを偶然見つけたのだ。「¥1780」という値札を見て、「⁉」とショックを受けるいろは。「中学生が そんな値段の シャンプーは 使えません‼ 」と、いろはが買ってきたらしいのは、「シャンプー&コンディショナー(各480ml)ポンプセット ¥698」。言い出したら聞かないモードである。「中学生…なのよねぇ…」と、いろはの頭を撫でるやちよ。

 わずか6ページに、みかづき荘の生活感、じゃれ合い、マウントの取り合い、そして中学生と大学生の違い、ファンが見たいものが、すべて詰まっている。元ネタは、ボイスドラマ「うん、水徳湯に行こう!」で、いろはとさなが同じシャンプーを使い、やちよは違うっぽい?感じのセリフだそうだ。

 この本を読んで、『ひだまりスケッチ』で、「ラムール」(羊のぬいぐるみ)を欲しがるなずなのために、ひだまり荘の住人たちが、ゲーセンに遊びに出かける話を思い出した。楽しかった1日が終わると、「じゃあ ヒロさん よろしくお願いします」と、ゆのっちが頭を下げて、スーパーのレジ袋を差し出す。料理上手なヒロが作った今夜のメニューは、もやし炒め、もやしの和え物、もやしの味噌汁。お金を使いすぎたから、ひだまり荘の住人は、当分もやしメニューでがんばるらしい。

 この日はUFOキャッチャーにシューティングゲームにプリクラと大豪遊。使った金額は、せいぜいひとり数千円までだろう。しかし、仕送りで自炊する高校生には大金である。

 震災の直後に出た『ひだまりスケッチ』6巻のあとがきで、うめ先生は、「ゴハンを食べても膨らまないところを少ーし膨らますこと」が、ひだまりの役割だと書いていた。

 「ゴハン」を「セックス」と言い換えたら、少しわかりやすくなる。ゴハンやセックスは、たしかに食欲や性欲を満たしてくれるけれど、しかし、ほんとうに人を「幸せ」にするのは「愛よ」(by 悪魔ほむら)。ゴハンを食べられるのも、昔の人は神様やお天道さまのおかげと感謝したろうし、政治家なら「政治」、経営者なら「経済」と答えるだろうが、ごく普通の庶民にとっては、「愛」のなせる力だ。生活感あふれるディテールへのこだわりが、この実体もつかみどころもない「愛」のリアリティを支えているのだと思う。まあ、あとがきページでポーズを決める乃莉は、立派すぎるほど「膨らん」でいるけれどね(セクハラ)。

 おまけ。うめ先生のれんぱす。尊い。


最新の画像もっと見る