新・私に続きを記させて(くろまっくのブログ)

ハイキングに里山再生、れんちゃんとお父さんの日々。

僕も絶滅しそう

2022年08月23日 | 習作

三題噺、最近の近作です。

文学少女「今日のお題は『ヤンバルクイナ』『エレベーター』『理想と現実』よ!」

 

利用者ゼロのバブル期の遺物の国際会議場が、ミュージアムにリニューアルした。第一回展示は「絶滅危惧種の動物たち」。しかし準備中、地震によるエレベータの緊急停止で荷崩れが起き、ヤンバルクイナの剥製が破損してしまった。展示までに直せるだろうか。理想と現実はあまりに食い違っていた。


以下はこの小話にまつわる思い出話です。

このバブルの塔のモデルは大阪南港にある旧WTCビル(ワールドトレードセンタービル)、現在は大阪府庁の入るコスモタワーです。1995年のオープン時には、まさかニューヨークの「本家」のワールドトレードセンタービルが、アルカイダの自爆攻撃で倒壊するとは誰も予想しなかったでしょう。

しかし大阪のなんちゃってWTCに、需要などなかったわけですね。大阪の人にとって、南港とはヤクザが人を沈めにいく場所で、『鬼平犯科帳』における深川十万坪と同じような位置づけなのです(盗賊のお頭の愛人が隠れ住んでいたり殺されて埋められたりします)。大阪中心部でビジネスが完結できるのに、わざわざ不便な南港まで行こうとは思わないわけです。本社や大阪本社、研究施設を南港に移した企業もありますが、オープン早々閑古鳥が鳴いていました。

私は仕事の関係でこのコスモタワーと少し縁がありました。WTCビルの使い道のなくなった展示場スペースが、ミュージアムとして利用された時期があったのは実話です。

「ワールドトレードセンター」と名乗る以上、国際会議や国際見本市が開かれることも想定していたはずですが、しかしこのビルには致命的欠陥がありました。設計した人は何を考えていたのでしょうか。人用のエレベーターしかなく、荷物の搬入エレベーターがなかったのです。

国際会議では会議資料やパンフレットは膨大な量になります。荷物用の搬入エレベーターなら、トラックからパレットに積んだまま積荷を下ろして、ハンドリフトで一回で済むところ、人用のエレベーターだと、積み荷をバラして、台車に載せ替えて、何度も往復もしないといけません。ビジネスショーなら製品見本や什器などを運ばねばなりませんが、これも人用エレベーターで運ぶのは一苦労です。医療機器や検査機器、工作機械など大型のものになると、エレベーターで運べないものもあるかもしれません。ミュージアムにしたところで、大型の作品や彫刻作品、立体作品もあるわけで、搬入エレベーターのないコスモタワーは不適当でした。エレベーターの昇降の回数を少なくしようとして、台車にケースを積みすぎて荷崩れを起こしてしまうミスはやらかしてしまいそうです。

2003年には展望台に銀河鉄道999など松本零士作品を取り上げたアミューズメント施設「コスモワールド」がオープンするも、わずか2年で閉鎖。テナントもガラガラで、府庁移転の話につながっていくわけです。







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