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網野歴史学

2011年07月11日 | 革命のディスクール・断章
 「士農工商」といわなくなったのも、網野史学の影響でしょう(『私家版 差別語辞典』のレビューへの拍手コメントに)。

 百姓=農民なら、漁師はどこに入るのか。学校の先生は教えてくれなかったし、答えられなかった。「浦人」「浦百姓」といったそうです。百姓は百の姓(かばね)という意味で、本来の意味は天下万民。ありていにいえば平民のこと。

 昨日のエントリで触れた、藤田孝志先生の講演録より。

 『「士農工商」という身分制度は江戸時代にはありません。これも間違いです。では,江戸時代の身分制度はいったいどのようなものであったのか。レジュメに身分制度の概念図を書いています。江戸時代の身分は,百姓身分・町人身分に大別されます。この両者をあわせて被支配層である「平人」と呼んでいます。支配層である「武士」と「武士以外の人」という意味です。「百姓」「町人」その横に「浦人(うらにん)」と書いていますが,これが漁師です。「浦百姓」とも言います。浦に住んでいる百姓,海辺に住んでいる
百姓という意味です。仕事は農業をやりながら漁業をやっている。彼らの身分は百姓です。百姓,町人を別のように考えますが,決してそうではない。百姓,町人は江戸時代では一括りです。武士以外の人々をまとめて「平人」とか「白人(しろうと)」と呼びました。「白人」が「素人」になっていくわけです。このように江戸時代には農民という身分はない,百姓という身分が存在すると思ってください。』
す。

http://meinherz.seesaa.net/
 
 網野史学の概論は『「日本」とは何か』(講談社学術文庫)、通史は『日本社会の歴史』(岩波新書)です。後者は、網野さんの専門が中世のため、おもしろさには欠けますが、皇国史観を裏返したにすぎないスターリニストの人民史観の解毒剤にはなる。
http://www1.korea-np.co.jp/book/media/hihyou980002.htm

 左翼セクトに出会う前に『蒙古襲来』に出会い、活動家になってからも『異形の王権』『無縁・公界・楽』『日本中世の非農業民と非農業民』に学べて、本当に良かった。網野さんは立場的にはマルクス主義ですが、中沢新一のおじさんだけあって、本質的にアナキストだったと思う。

 ちなみに、網野さんの二重王権論に影響を受けて、関東武士団の研究のためサークルを作ったら、「キミも歴史を学ぶなら日本帝国主義のアジア侵略の歴史を学ぶべきだ」と敵対的TOB、でなく「オルグ」と称する恫喝に来たのが、かのセクトとの出会いだったとか、そうでなかったとか。

※2022年5月1日の追記。藤田先生のサイトのURLを新しい移転先に改めています。引用文は直リンクではありません。

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