栗田艦隊航海日誌

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映画「フライング・タイガー」(1942) 着色版・日本語吹き替え付きパブリックドメインDVD

2017-01-29 19:54:23 | 映画
PCがやっと帰還したので、以前の記事で取り上げると宣言した、映画「フライング・タイガー」(1942)の着色版・日本語吹き替え付きパブリックドメイン(PD)DVDについて紹介しよう。

このPDDVDは、日本おいて映画公開後50年以上が経過しパブリックドメインとなった映画作品に、マックスターとミック・エンターテイメントが共同で日本語字幕と日本語吹き替え版を収録したもので、101本もの作品が販売されている。
現在はワールドピクチャーに権利が移り「名作映画DVD」として販売されているようだが、エー・アール・シー(ARC)でも「クラシック名作映画」として500円程の価格で販売されている。
私が買ったのはARCのDVDだが、ワールドピクチャーの物とディスクが共通である為、収録されている音声・映像も全く同じなのだ。

株式会社ワールドピクチャー 名作映画DVD

ARC クラシック名作映画

なお、ワールドピクチャーとARCが共同で出している日本語吹き替え付きPDDVDは、中古DVDショップやAmazonなどの通販でも購入が可能だ。字幕版のみ収録のソフトが圧倒的に多いので見つかりにくいかもしれないが、書店やホームセンターでも売っている可能性はある。

フライング・タイガー 日本語吹替版 DDC-046N エー・アール・シー

「フライング・タイガー」の日本語吹き替え版のキャストは、ジム・ゴードン隊長(ジョン・ウェイン)の声を、映画「X-MEN」シリーズでダニエル・クドモアが演じたコロッサスや、イギリス人俳優マーク・ストロングの声を演じることが多い声優の加藤亮夫が演じ、看護婦ブルック(アンナ・リー)を
兒玉彩伽、ジムの旧友ウディ・ジェイソン(ジョン・キャロル)を上城龍也、ジムの良き戦友であるハップ(ポール・ケリー)を芦澤孝臣が演じている。
(その他の吹き替えキャストはこちらを参考に→アトリエうたまる フライング・タイガー)
日本語吹き替え版を出している「フライング・タイガー」の収録ソフトは、これが唯一である。
吹き替えの質に関しては悪くはない。原語版の日本兵の片言の日本語はまともな日本語に吹き替えられ、本来台詞がない場面に台詞を挿入するなど、
吹き替え独特のアレンジがなされている。洋画の日本語吹き替えは映画の印象がだいぶ変わってくるので賛否両論はあるが、個人的にはよほど質の悪いもので無ければ吹き替えも良いものだ。

マックスター/ミックの日本語吹き替え版PDのキャストには、主に洋画や海外ドラマなどの端役の吹き替えを務める事の多い中堅声優や、舞台俳優を用いるケースが多い(名前さえも聞かない素人が吹き替えを担当するケースも多い)。
一方で知名度の高いベテランの声優を起用しているソフトも少なからず存在し、「雨に唄えば」(1952)でドン・ロックウッド(ジーン・ケリー)の声を堀川りょうが演じたり、「レベッカ」(1940)で“わたし”(ジョーン・フォンテイン)の声を本田貴子、「カサブランカ」(1942)、「誰が為に鐘は鳴る」(1943)、「ガス燈」(1944)といったイングリッド・バーグマンが演じる役の吹き替えを日野由利加が演じるなど、PDDVDといえども
吹き替えの質は侮れない。
「フライング・タイガー」同様、マックスター/ミック以外に全編日本語吹き替え収録ソフトが存在しない映画も少なくないので、
このPDDVDは貴重な存在だ。
ただし、他のPDDVD販売メーカーの例に漏れず、翻訳の質や画質に関しては正規版に劣るケースが多いので注意が必要だ。

このPDDVDは、制作元のリパブリック・ピクチャーズによって1989年に制作・販売された着色(カラーライズ)版VHSを
マスターフィルム(原盤)としている。
マックスター/ミックだけではなく多くのPDDVD販売メーカーが着色版を原盤としており、
本来の白黒版を出しているのはコスミック出版のみのようだ。
余談だが、本国アメリカではジョン・ウェインの貴重な主演作とのことで、白黒版をリマスターしたブルーレイが販売されているようだ。

1980年代は白黒映画の着色化が流行した時代であり、「カサブランカ」(1988・ターナー)、「キング・コング」(1989・ターナー)といった
多くの著名な映画作品が着色されていった。
最近でも、NHKスペシャルで「カラーでよみがえる東京~不死鳥都市の100年~」が放映された事は記憶に新しい。

リパブリック・ピクチャーズが出したジョン・ウェイン主演作品の着色版VHSのコマーシャル
John Wayne Republic colorized VHS commercial - YouTube
「硫黄島の砂」(1949)、「怒濤の果て」(1948)、「暗黒の命令」(1940)、「ケンタッキー魂」(1949)、「血戦奇襲部隊」(1944)、「西部の顔役」(1942)、「リオ・グランデの砦」(1950)といった、ジョン・ウェインが主演を務めた西部劇、戦争映画が着色化されている。

コスミック出版の白黒版とマックスター/ミックの着色版の比較がこの図だ。
VHSの映像を原盤としているため、白黒版と比較すると画質に劣り、激しい動作のシーンではVHS特有の残像が生じてしまう。
白黒版と着色版の比較を見ればわかるが、着色版はVHS収録である為、白黒版と比べると画面が少々横に伸びてしまい、上下が途切れてしまっている。アスペクト比の問題だろうか。
人物や物が鮮明に映った場面の着色は本物のカラーのように自然に見えるが、全体的に暗い場面や明るすぎる場面の着色は不自然になってしまう。
また、1989年当時はまだ着色化の技術が登場して間もない頃だったので、色の本数も少なく不完全な色合いになってしまう。
映画の着色化にはこうした不完全な部分があった事に加え、既存の映画への着色は無礼だとして反対する動きもあった。

劇中に登場するフライング・タイガースの戦闘機P-40。
機体の塗装が上面は濃い緑と薄い緑の迷彩、下面はダックエッググリーン、プロペラのスピナーは赤色に着色されている。
二段目の写真に写っている機体には迷彩塗装は施されていないようで、濃い緑(オリーブドラブか)一色となっている。
フライング・タイガース所属機の実際の塗装は、上面がダークアース(濃い茶色)にダークグリーンの迷彩、下面はダックエッググリーンといった感じであったが、着色版の塗装は着色ミスかそれとも正しい着色なのか判別がつかない。
着色は必ずしも資料に基づいた上で行われている訳ではないので、着色に史料性は無い。



東宝の「燃ゆる大空」(1940)から流用された場面も着色を施されている。
灰田勝彦や月田一郎、劇中に登場する九七式重爆や九七式戦も見事に着色されているが、一方で白黒版で暗い場面は全体的に黒ずみ、照明が明るい場面は白みを帯びてしまい、不自然な着色になってしまっている。
こうした場面の着色を見ていると、「ハワイ・マレー沖海戦」や「雷撃隊出動」、「加藤隼戦闘隊」といった我が国の戦時下の戦争映画も着色化すれば面白いのではないかという気がしてきたが、需要と費用を考えればおそらく東宝はやりたがらないだろう。



ジョン・ウェインら俳優が映っている場面。人物が映った場面の多くは鮮明なので、本物のカラーのように色合いが自然だ。
着色化されたウェインの顔はより若く映っている。


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