栗田艦隊航海日誌

戦争とプラモと映画で頭が侵されてしまった人のブログ

映画「グラン・トリノ」(2008)

2017-01-15 01:47:41 | 映画
久々に映画のブルーレイをレンタルしてみた。
残念ながら、私のPCでは購入時から標準装備されている再生ソフトが
不具合を起こしてBDを再生できない。
再インストールしてもてんで駄目で、サポートに電話してみたところ、
「Windowsのシステムが壊れている可能性がある」とのことで、
「システムの復元を試みるか、初期化するか」の選択肢しかないようだ。
私にはPCの疫病神でも取り憑いているのだろう。今はPS3でBDを観ている。

クリント・イーストウッド監督・主演映画の「グラン・トリノ」(2008・米)。
以前から題名だけは知っていて、どんな内容なのかずっと気になっていた映画
なので、レンタルして借りて観てみることにした。

以下、ネタバレを含むレビューになるので、未見の方は読まない事を推奨する。

物語はアメリカ中西部の治安が悪化したデトロイトの住宅街から始まる。
長年付き添っていた妻に先立たれ、自身の性格故に息子の家族からも冷遇され、
古き良き時代の価値観で生きる、偏屈で保守的なポーランド系アメリカ人、
ウォルト・コワルスキー(クリント・イーストウッド)。
新しく隣に引っ越してきたモン族の家族にも「ねずみ共」呼ばわりするなど
差別意識を持っている。
そんな爺が同じモン族のギャングに絡まれる隣家の少年タオ(ビー・ヴァン)と
その姉のスー(アーニー・ハー)を偶然助け出した事から、次第にモン族の
家族と心を打ち解けていく。

劇中の登場人物は誰もが魅力的で、かつキャスティングも見事に
マッチしている。イーストウッドが演じるウォルトは、朝鮮戦争で戦い、
多くの罪を背負って生き続け、偏屈な爺だがタオを始めとするモン族の
家族に心を開き、彼らを助け、最後はタオとスーを守るために自分の身を捨てる、
そんなかっこいい爺さんなのだ。イーストウッドは本当にこの役がピッタリだ。

ギャングに絡まれ根性のない少年タオ、そんな弟を支え、ウォルトとも関わりを
深める明るく気の強い姉のスーも大変魅力的である。
BDの特典映像で知ったのだが、劇中のモン族はその多くが実際に本物のモン族の人なのだそうだ。
劇中の文化や慣習の描写も専門家を呼んで正確に描くなど、イーストウッドの
力の入れ具合がよく解る。
モン族とは中国、ベトナム、ラオスなどに住む山岳の民族で、ベトナム戦争中に
アメリカに協力した事で社会主義政権から迫害され、その多くがアメリカに
亡命したという歴史を持つ。朝鮮戦争で罪を背負ったウォルトとベトナム戦争で
故郷を追われたモン族は、戦争という点で大きく繋がっているのだ。

勇気のないタオを奮い立たせ、先も短い自分の命を捨ててでもタオとスーを
守り抜いたウォルトの姿は、かっこよくも悲しいものがあった。
彼がタオに託した1972年製のフォードのグラン・トリノは、今でも
走り続けているのだろう。

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