日程:2014年5月3日(土)~5日(祝)二泊三日
同行:juqcho氏(おやぢれんじゃぁ隊)
GW後半は、南アルプスの聖岳東尾根もしくは単独で谷川-巻機縦走などを考えていたが、車の調達や天気の具合から微妙な状況。
そんな折、直前になってパートナーの体調不良によりjuqcho氏から不帰1峰尾根へのオファーがあり、そちらに参戦することにした。
一日目
天候:、夕方から/
行程:白馬駅11:31-昼飯-駅前発12:50-八方池山荘13:45~14:00-約2,300m地点16:00(テント泊)
今回は家の都合で車が出せず、行きはJRでアプローチ。
連休後半初日の「スーパーあずさ」は通勤ラッシュのような混雑だったが、韮崎-白馬間では座ることができた。
白馬駅到着。
本日は八方尾根上のベースまでの短い行程なので、ティファニーで朝食ならぬ「ハクバで昼食を」。
その後、バスで八方へ。
スキー宿の間の道をくねくね歩くこと15分。
ここからゴンドラとリフトを乗り継いでゲレンデの最上部、八方池山荘まで一気に上がるわけだが、ここで最初のハプニング。
ゴンドラと二番目のリフトとそれぞれ料金を払ったが、さらに三番目のリフトで1,800円と言われる。
荷物代も併せて片道で計3,200円ほど。
「むむっ、随分高いな。」と不審に思って調べてみたら、やはりダブって支払わされていた。
すぐに言って過払い分を返金してもらったが、あの係のオネーサン、ウチらが言わなかったらどうしていたのだろうか。
ちょっとプンプン
朝のうちは晴れていたが、八方池山荘から登り始めようとしたところ非情の雨。おまけに風も吹き出して視界も悪い。
幸い雨量は少ないので、ゴアの上下を着込んで出発。
事前情報で掴んでいたが、やはりここ八方尾根も今年は雪解けが早く、下部はすっかり夏道が出ている。
寒々とした灰色の景色の中、八方ケルン、八方池を過ぎ、上ノ樺辺り(?)の標高2,300m地点。ここを今回のベースとする。
そばには既に先客が一張り。
我々もテントに潜り、冷えた身体を温める。
先週の鹿島槍はワインにしたが度が弱かったので、今回は神谷バーの「電気ブラン」にした。
死んだ親父も時たま飲んでいて、自分もけっこう好きである。
今回、参考にしたのは前年同時期に登った「ぶなの会」の記録。
何と午前2時起床の3時出発。それでいてヘッデン帰りとなっていて、そんなに長いのかと半信半疑だったが、それに倣って我々も明朝は2時起きとする。
天気が良ければ唐松谷へのアプローチを偵察しておきたかったが、この悪天ではそれもできなかった。
幸い、夕方から天気は回復。
ただ夜になって風が猛烈に吹き始め、結局それが一晩中続く。
そんな時に限って私はプラティパスの水を自分のシュラフにブチまけてしまい、冷たく眠れない夜を過ごす羽目に。
テントが吹き飛ばされそうな暴風の中、隣で軽くイビキをかいているjuqcho氏が羨ましい。
二日目
天候:
行程:起床2:16-出発3:50-唐松谷・不帰谷出合5:00-1峰尾根下部のコル6:25-断壁下8:00-1峰頂上13:30-唐松岳頂上17:45~55-八方尾根ベース19:00
2時に起きるつもりが若干寝坊。
朝食を済ませ、ロープ、ガチャ類、万が一のビバーク用品を持ってテントを出る。
外はまだ星空だ。
適当に唐松谷方面へ降りていこうとしたら、隣のテント・パーティーが「1峰尾根ですか。昨日降り口にトレース付けときました。こっちです。」とわざわざ教えてくれた。
ありがたい。
しかし、出だしからかなりの急斜面。
ブッシュに頼ったり、バックステップで怖々下っていくが、広い雪の斜面に出て、後はガンガン下っていく。
途中、雪の薄い岩の陰から水が出ていて、ここで水分補給し、さらに沢床へと下ると夜明けとなった。
目指す1峰尾根を眺めると既に先行パーティーが二組。
ややマイナー・ルートかと思ったが、本日はなかなか盛況のようだ。
対岸の小さな支尾根を右から回り込んで少々急な雪の斜面を登っていく。
日の出と共に辺りの雪が緩んで小さな落石や落氷があり、注意しながら登っていくとそこが1峰尾根取付きのコルだった。
すぐ前を行く男女三人組の後を追って我々も続く。
雪のリッジ、ちょっとした木登りをして越えていくと、右下に切れ込んだ雪壁のトラバース箇所に出た。
早くも雪が緩んで悪いのか、ここでロープを出していた先頭の男三人組に追い付く。
その最後尾にいた男、この巨体(失礼!)はもしやと思って聞いてみると、やはりK下氏(きのぽん)だった。
挨拶をし、「お先にどうぞ。」と譲ってくれたので、もう一組の男女三人組と共にロープ無しで行かせてもらう。
雪壁を越えた処で、今度は先頭でロープを引っ張っていた男性に挨拶をすると、何と常吉さん と同じ「ぶなの会」の方で「現場監督さんとjuqchoさんですか?」となぜか正体がバレている。
このろくでもない素晴らしき(山の)世界。あまりに狭いのでヘタなことはできない。
向かって右側、不帰沢側に雪庇が張った雪稜を登っていくと少し安定した場所に出て、ここで小休止。
この先、我々が先頭に出る。
細いスノーリッジを慎重に下りていくと、このルートの核心部「断壁」となる。
「断壁」の突破は二通り。
眼前のオープンブックのクラックを正面突破か、少し左下に回り込んで凹角を登るか。
juqcho氏と協議した結果、後者を選択。
正面のクラックは見た目、威圧的で魅力があったが、後続が控えているのでヘボなところを見せて時間をかけてはいけない。
しかし、左側の凹角も浮石だらけで、思ったよりもヤな感じである。
ここからロープを出す。
1ピッチ目。私のリード。
出だしから僅かな岩溝にアイゼンの前爪を差し込んで次のホールドを取りに行くのだが、ガバだと思ってもどの岩もグラグラしていそうで、実に怖い。
このところ下手ながらフリーばかりやっているので、いわゆる本チャンのぐらつくホールド、信用できない支点に対してかなりチキンになっている。
それでも何とかステミングで越えて後はボロい段差を越えていく。
右側のクラックには先ほどの男女三人組の男性が取付いてすぐ横に見えたが、タッチの差でこちらの方が先に合流点に着き、そのままさらに5mほど伸ばしてピッチを切る。
2ピッチ目、juqcho氏リード。
そこそこ立った雪壁。途中1ポイント、岩の乗越しあり。トレース跡があったのかもしれないが、ナイス・ルーファイです。
3ピッチ目、私のリード。
幅広の雪稜。途中、三角岩があり、そこの乗越しがポイント。
右側からも行けそうだったが、私は左側の岩と雪のコンタクトラインを選ぶ。
カチを拾って右足ハイステップ。ちょいとボルダーちっくな登りで楽しめた。
しかしフォローのjuqcho氏が言うには、やはりここも岩が浮いていたとのこと。
さらに4ピッチ、5ピッチ目とツルベでロープを伸ばすと、ようやく少し傾斜が緩み、見事な曲線を描いた雪稜が続く。
ロケーションとしてはここが1峰尾根のハイライトだろう。
しばらくコンテ混じりに進む。
時間の経過は良好だが、昨夜あまり眠れなかったまま朝も早かったので、いい加減疲れてくる。
でも目指す1峰の頂上はまだまだ先。長いな!1峰尾根。
今年の雪は湿っぽく、グズグズする雪壁とは時間との競争だったが、午後になると若干曇って気温がそれほど高くならなかったのは助かった。
さらに雪稜をグングン登っていくとやがてブッシュ混じりの最後の壁。
6ピッチ目、juqcho氏リード。
不安定な雪面を右から回り込んでブッシュの中を突き進んでいく。
ルート取りとしてはしかたないけど、しかしよくこんな枝の間を掻き分けていくなぁ。
7ピッチ目、私のリード。
壁は立っているが、最後のパワーで枝やらブッシュやらホールドにしてガンガン登る。
最後はふんぞり返りそうな雪の段差が待ち構えていたが、慎重に右にトラバースしていき、雪に深く差したピッケルを頼りにマントルで上がるとそこが終了点、不帰1峰の頂上だった。
juqcho氏はこれが三年連続でのトライ。三年目の浮気・・・じゃなかった「三度目の正直」が実って良かった。
しばし後続のパーティーを眺めながらデジカメでパノラマ撮影などで一息入れる。
頑張った甲斐あって時間も早く、これはもしかして今日中に一気に下山か?と思ったが、さすがにそれは甘かった。
その先の不帰2峰から3峰、そして唐松岳に至る稜線は、2003年の同時期におやぢれんじゃぁ隊の春合宿として白馬主稜の後に継続して歩いていてそれほどキツい印象は無い。
しかし1峰尾根を登った後、さらにはあれから10年の老化を経た後では、もうヘロヘロ。
「ビバークは嫌」という思いだけで重い足を運ぶ。
2峰では不安定な雪のトラバースなどでやはり都合4ピッチほどロープを出す。
最後はまるで八千m峰を無酸素で登っているような足取りで(登ったことないけど)、夕暮れ迫る唐松岳山頂に到着。
・・・疲れた。
終始前後していた男女三人組の方に写真を撮っていただく。
バックの剱が神々しい。
ヘロヘロの「チーム54?」(二人とも御年54歳なので。「~84」の皆さん、パクってすみません。)
後は八方尾根上のベースまでもう一頑張り。
着いたのが19時ジャストで、ほぼ15時間行動。キツかった!
不帰(かえらず)から帰ってまいりました!
三日目
天候:
行程:起床5:00-撤収6:30-八方池山荘7:30
最終日。
天気は下り坂で、朝から小吹雪。
昨日、最高の天気をものにできて良かった。
濡れて重くなったフル装備を担いで八方尾根を下山。
リフト、ゴンドラと乗り継いで、スキー客を尻目に山を後にする。
途中の「江戸彼岸桜」。風情があってよろし。
八方からはちょうどいい時間に新宿行きの高速バスが出ていて急遽これに乗り込む。
途中、渋滞にハマってしまったが、まぁ許容範囲の時間帯に帰ってこられたのでラッキーだった。
今回は天候に恵まれたのでヒリヒリするような緊張感こそなかったが、不帰1峰尾根は技術的にも体力的にも白馬主稜や鹿島槍の東尾根、天狗尾根より1.5倍はキツかったように思う。
juqchoさん、次回は正真正銘の「癒し系バリエーション」でお願いしますよ。
写真集「春の不帰1峰尾根」
(写真提供:juqcho氏)
僕も4月に雪山縦走ではありましたが、近くを通りました。
ちょうどルンゼ内を偵察してを滑ってかえったので、唐松岳近辺のバリエーションルートを本の少し垣間見ることができました。
今の僕には、どこも断崖絶壁で難攻不落の要塞でとてつもない高き壁に見えました。
僕には一生無理だなって(涙)
最近は縦走やバックカントリーをやっていても、どうしても壁に目がいってしまいます。やっぱりクライマーってすげーなって!!
いつもながら思うのですが、
現場監督さんがなされている登山やクライミングにはとてもロマンを感じます。
僕もいつかは現場監督さんがなされているような登山やクライミングに本の少しでも近づけたらと常々思ってやっていますが、いったいいつになる事やらです。
まずは下手くそすぎるので、ローギアからセカンドにはないのですが、海外遠征がひと段落ついたらまずは近所の室内ゲレンデにでも通おうと考えています。
現場監督さんのブログで、登山やクライミングへのモチベーションがさらにアップしました。
ありがとうございましたm(_ _)m
いやいやそんなことないですよ。
私など年齢からいってもはやジリ貧ですが、ぴょん太郎さんなどはまだまだ伸び代があって羨ましいです。
何より一つのジャンルにこだわらず独自の視点でいろいろチャレンジしているのがいいですね。
こちらこそモチ、上げてもらっています。
まだまだ先と思っていたお互いの夏の冒険もいよいよ迫ってきました。Wカップに挑むサムライ・ブルーの気持ちで頑張りましょう!