KU Outdoor Life

アウトドアおやじの日常冒険生活

剱岳八ツ峰Ⅵ峰フェース

2019年08月12日 | アルパイン(無雪期)
日程:2019年8月8日(木)~11日(日)前夜発三泊四日+α
同行:ヒロイ(我が社の山岳部)
 
一日目
 天候:
 行程:立山駅7:00-室堂9:00-剱沢13:00-長次郎谷15:00-熊ノ岩17:00
 
 昨年夏のⅥ峰&チンネ、今年春の北方稜線に続いて、またまた来てしまった剱岳。
 今年の目標は昨年CフェースだけだったⅥ峰のA~Dフェース継続、そしてチンネの隣に鎮座するクレオパトラニードルの登攀である。
 
 前日夕にヒロイ号で小田原を出発。
 中央道を松本で降り、岐阜回りで深夜に富山入り。そのまま富山電鉄「立山」駅前の駐車場でテント泊する。
 
 翌朝は早くから登山客で大賑わい。やはり日本人らしく「山の日」は山で、それもできれば剱のような山で過ごしたいというわけか。
 ケーブルカー、バスと乗り継ぎ、室堂入り。
 途中、あの名高い称名滝の前を通るが、時を同じくしてクライマーの中嶋徹氏がフリーソロで完登したというニュースを聞く。
 凄いなぁ。でも我々へっぽこクライマーは「クライミングJOY」でイイのである。

 
今回のファッションアイテムは麦わら帽子 (^^;)
 
 室堂到着。
 昨年はここで予想外の強風雨に見舞われ、初日からバスターミナルに監禁状態となったが、今年は爽やかな快晴。こんなに良過ぎる天気では後が怖いぐらいだ。
 荷物を整え出発。まさに「夏山JOY」のような景色の中をまずは雷鳥沢へ向かって歩き出す。
 
 
 
 雷鳥沢から別山乗越では、相方が珍しくバテ気味で途中二回小休止を入れる。
 身体の調子でも悪いのかと心配したが、何のことはない。今回張り切り過ぎて食材が多過ぎたとのこと。
 加えて暑さもあることから、ややゆっくりのペースで行く。長次郎谷出合からは自分がまたしてもテントとロープ2本持ちで熊ノ岩へ。(まったくしょうがねーな。)

 
 
 長次郎谷の雪渓登りはいつでもしんどいが、今回は特にきつかった。
 ザックの重さとしては明らかに三か月前の北方稜線の方が重かったはずだが、日頃の体力トレ不足のせいか熊の岩直下では思わず両腿が攣りそうになる。
 本日の熊ノ岩は我々を含め四張り。奥の方の良い位置を確保し、ベースとする。

  
本日の山メシ。今回、生玉子も持参する気合の入れよう。
 

二日目
 天候:
 行程:出発-Ⅵ峰Aフェース中大ルート7:00~8:10-Bフェース京大ルート(断念)-Cフェース剣稜会ルート10:20~12:00-帰着14:20
 
 未明に起きると早くもチンネを目指すパーティーがヘッデンを点けて、まだ暗い長次郎谷の上部を登っていくのが見えた。我々は明るくなってから出発。
 
 まずは手近のAフェースへ。
 雪渓を渡りガレた斜面を登り、取付きに着いたところで、相方がまさかのロープ忘れ!何か今回は浮わついてるな。
 しかたなく取りに戻るが、幸い後ろのパーティーに順番を越させることはなかった。
 
 中大ルートは自分は7年振り二度目。ピッチグレードはⅣ+だが、コーナークラック主体でちょっとクセがあり、登りにくい印象。
 相方にやらせようとしたが、ややビビリ気味なので自分からスタート。ツルベで登り、実質2ピッチ半。
 隣の魚津高ルートのパーティーより後から取り付いたが、すぐに追い越し、相方もソツなくこなして終了。懸垂下降で基部へ。

 
 
 続いてBフェース。
 トポを見ながらおそらく京大ルートに合流するラインから取り付くが、リードしようとした相方が最初の残置ハーケンにランナーを掛けようとしたところ、カラーンと音を立てて簡単に抜けてしまった。
 残置に頼るわけではないが、人気のA、Cフェースに較べると、やはりここBフェースは最近あまり登られていないようで落石も怖い。
 今回は二人とも「夏岩JOY」の方針なので、余計なリスクは避けることとし、Bフェースは却下。そのままCフェースへ移る。
 
 Cフェースは昨年夏、二人で登っているが、前回剣稜会のつもりがルートミスで途中からRCCルートに入ってしまったため、今回はきっちり剣稜会ルートをはずさないよう行くことにする。
 それでもまだ若干右寄りだったようで、リードの相方は時折カムをセットしながらロープを延ばしていく。

 
 
 途中で先行する学生らしき三人パーティーに追い付く。
 まだ午前中で、自分たちはできれば午後にはDフェースも継続するつもりだったので、「ランナーも共有しないで、ロープも交差しないよう行くから先に行かせて。」とお願いしたが、相手はちょっとムッとしたようで無言。
 黙っていたので了解してくれたものと勝手に判断し、先に行かせていただいたが、我々二人が終了点に着いても向こうはまだセカンドが下の方で見えないくらいだった。
 アルパインのルートは先に取り付いた者が全ての優先権を持つわけでなく、本場ヨーロッパでもスピードによって譲り合いのルールが通用しているので、まぁここは許してもらおう。

 
 
 下から登ってきているので同ルートを降りるわけにいかず(特に剣稜会ルートの上部はロープがスタックしやすい)、トポに従ってⅤ・Ⅵのコル側へ。
 途中、懸垂支点があったのでそれを使用。ちょうど切れ目切れ目に次の残置支点があり、これは早いと思ったら最後にロープスタックしてしまう。
 登り返しの回収で思わずタイムロス。下りてきたのはCフェースのRCCルートかと思ったら、知らない間にAフェースを下りてしまっていた。
 まだ陽は高い時間帯ではあったが、ここで欲張ってDフェースまで行くと残業になりかねないし、今日のところはここまでで終了。
 熊の岩に戻り、雪渓で冷やしたビールで乾杯。昼寝の後の山メシは相方が腕を奮ってくれて言うことなし!

 
 その夜はルートミスした残業パーティーがAフェース上部で大落石を起こしたり、Bフェース付近でヘッデン点けて右往左往しているパーティーがいたりして、物々しかった。
 我々もあの時、Cフェースで前に出ず、おとなしく後ろに付いていたらどうなっていたことか。

 
 
三日目
 天候:
 行程:出発-Ⅵ峰Dフェース富山大ルート6:00~9:30-八ツ峰上部-クレオパトラニードル12:00~15:00-池ノ谷乗越-長次郎谷-帰着19:00
 
 朝起きてみると、昨夜Bフェース付近でヘッデン残業している三人パーティーが下降しているのが見えた。
 どうやらビバークした模様だが、それってまさか昨日のCフェースの御三方?とりあえずご無事で何より。

 
 さて今日はDフェースからだ。
 長次郎谷を横切り、ガレの斜面を登って富山大ルートの取付きへ。
 初日にベースで挨拶を交わした男女ペアが既に1ピッチ目を登り始めている。
 
 我々が準備をしている間に後から若いニイちゃん二人組が到着。
 何となく12クライマーのような雰囲気だったので「ウチら遅いんで、途中で抜かしてくださいね。」と言っておく。
 Dフェースは自分も初めて。
 昨日、最初のAフェースで少しビビリ気味だった相方に「どうする?」と水を向けると、今日は「行きます!」と元気な返事。その意気や良し。
 
 1ピッチ目は少し変化に飛んだⅣ+ピッチ。
 どうかなと思ったが、外岩フリーで5.11aを登り、ボルジムで3級をやっている相方には問題無し。
 
 
 
 ソツなく登って2ピッチ目を引き継ぐ。
 核心は3ピッチ目なので気楽に構えていたが、特に途中でピッチを切る必要もなく、途中の2mほどの垂壁を越えスラブを詰めて行ったら、そのまま3ピッチ目まで続けて登ってしまった。
 せっかく核心のおいしい所は相方にリードで楽しんでもらおうと思っていたのに、すまんのう。
 ちなみに核心(Ⅴ-)は先ほどの2mほどの垂壁で、夏ならボルジムで6級程度。ワンポイントだけだ。
 
 4ピッチ目は左側のカンテに向かってバンドトラバース。
 後は5~7ピッチまで高度感のある剥き出しのカンテ、リッジが続いている。見た目、岩はちょっと風化した感じで不安を感じるが、思った以上にしっかりしていて快適。
 こちら側から見ると、あの易しいCフェース剣稜会ルートもちょっとシャモニーの針峰群を思わせる景観でなかなか絵になるロケーションだ。
 
 
 
 Dフェースの頭で八ツ峰縦走中のパーティーから祝福を受け、終了。
 DフェースはⅥ峰フェース群の中では一番長く難しいとなっているようだが、登ってみると快適で、かえってAフェースの中大ルートの方がイヤらしく感じるかも。
 
 小休止後、登山靴に履き替え、彼らの後に付いて八ツ峰上部へ進み、途中から右に分かれて我々はクレオパトラニードルへ。
 トラバース道から小ガリーを登り、着いたコルに登山靴やアイゼンをデポする。
 頭上にはニードルというよりドームのようなクレオパトラの先端に懸垂用の古いスリングがしめ縄のように何本も巻きついているのが見える。
 コルから上は特に残置は確認できず、容易なルートを取れば1ピッチで上がれそう。
 ネットで見かける最近の記録はおそらく、このコルからチャチャッと登っているのではないだろうか。
 
 何となく面白味に欠けるので、コルからさらにチンネとクレオパトラの間、沢沿いの微かな踏跡を辿って基部まで下りてみる。
 だが、途中からザレがひどくなり安全を期して途中まで。ちょうど槍の穂先のように見える位置からクレオパトラに登ることにする。
 
 様子見ながら、まずは自分がリード。ロープ一本で行く。
 這松混じりのスラブをやや左上気味に上がって行き、クレオパトラの東側リッジに着いたところでピッチを切る。
 一応、ルートに出たようで、古くあまり信用できないハーケンが辺りに数本打ってある。
 下を見るとスッキリしたリッジとフェースが1ピッチ分続いており、取り付くにもっと八ツ峰の手前から入るべきだったか。アプローチがなかなか難しい。

 
 
 とりあえず相方を迎え、頂上までの残り1ピッチをリードしてもらおうと思ったが、出だしがけっこう立っていて支点も怪しいため、相方は尻込み。自分がそのままリードする。
 そこからのピッチは変化に富み、なかなかワイルドだった。
 安全を期してなるべく弱点を突いた凹角沿いのラインを選んだが、それでも2~3か所明らかにⅤ+相当のポイントがあり、岩もやや風化気味のためデリケートな登りが要求された。
 
 慎重に時間をかけ、ようやくニードルの先端へ。いつ岩が剥がれてもおかしくないルートだったので、正直ホッとした。
 下にいる相方に声を掛け登ってきてもらう。途中で「登れないかも~。」とか「テンション」とか聞こえたような気がしたが、「A0でも何でもいいから登ってこーい。」とロープだけは張り気味にする。
 結局、A0連発だったようだが、まぁよく頑張った。

  ヘロヘロの図(^^;)
 
 クレオパトラニードルは実は双耳峰で、我々が着いたのは高い方。
 ここから懸垂支点がある低い方のニードルへはせいぜい4mほどだが、短い懸垂が必要となる。
 本来なら高い方に懸垂用の残置があってもよさそうだが、それが無いことからやはり最近は下のコルからチャチャッと低い方のニードルだけ登っているような気がする。
 低い方のニードルに移り、20mほどの懸垂でコルへ下る。
 
 クレオパトラの高い方から低いニードルへ懸垂するところ
 
 登山靴に履き替え、トラバース道を八ッ峰へ戻るが、最後、八ツ峰の最上部がややルートがわかりにくかった。
 懸垂を二回ほどして池ノ谷乗越直下の長次郎谷に出る。
 何とかヘッデン残業せずに熊ノ岩ベースに帰り着いたが、クレオパトラは予想以上に探検的要素が強く、時間がかかってしまった。
 
 熊ノ岩に戻ると、それまで四張りだったのが一気に20張以上の大テント村と化していてビックリ。
 本日もまずはビール。そしてバーボンと贅沢な山メシで充実した夜を過ごす。

 「ビストロ熊ノ岩」営業中
 
 
四日目
 天候:
 行程:出発8:40-長次郎谷左俣-剱岳本峰11:00~12:00-早月尾根-馬場島20:00
 
 いよいよ最終日。天候に恵まれ、とりあえず今回の予定はほぼ消化できた。
 本当はこの春に三ノ窓先に残してきた減価償却済みロープを回収するはずだったが、昨日思いのほか行動時間を取られてしまい断念。回収は次回へ延期する。m(_ _)m
 しかし、ベースから見るこの日のⅥ峰フェースの有様は凄かった。
 昨日一気に増えたパーティーが一気に押し寄せ、A、Cフェース共に各ピッチのテラスごとに数人ずつ、取付きなどは順番待ちのクライマーが団子状。本チャンの岩場というより混み合うゲレンデといった感じで、もしかしたらトップロープでも張って講習会でもやっているんじゃないかといった賑わいである。
 相方がささやかに「熊ノ岩清掃活動」などしてから、撤収。

 

 条件の良い長次郎谷左俣を詰め、そこからふた登りほどして三か月振りの本峰へ。
 夏の剱岳の混雑は相変わらず。他の登山者の合い間を縫って、ささっと祠の前で記念写真を撮る。
 今回、大学山岳部時代の友人である「剱人」ヤマモト先生(現・N山岳会副会長であーる)が赤谷尾根を登っているらしく、頂上で会えるかなと期待していたが、向こうは同行者の不調で一早く下山してしまったらしい。残念! 

 
 
 一通り休んでから通常の別山尾根を下って一見落着の予定だったが、ここでまさかの事態が発生。
 何と下山の「カニのヨコバイ」が大渋滞で、ディズニーランドのアトラクション待ちである。
 予備日を一日持っているのでのんびり構えても良かったが、一度気持ちが下界へ向かうと何としても今日中に下りてしまいたい。
 ここで室堂の最終バス時刻が絶望的になり、相方が判断したのがまさかの早月尾根下山という選択。
 
 結局登り返して馬場島へと長い尾根を下っていくが、途中の早月小屋まででもうヘロヘロ。
 水分不足と熱中症で、普段はケチって絶対買わないペットボトルを2本(相方は3本!)も買ってしまった。

 試練の早月尾根。相変わらず長い
 
 最後は先の北方稜線同様ヘッデン下山となる。風呂は入れたものの、またしても富山の鮨はお預け。
 高いタクシー代(馬場島-立山駅17,000円)が付き、途中、道の駅で仮眠を入れつつ翌日帰りとなる。
 やはり剱は最後まで「試練」を与えてくれるなぁ。いや、参りました。(^^;)

 


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