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高校政経

高校政経

村上龍『盾 シールド』幻冬舎(913.6 ム)

2006年05月17日 | 仕事、労働
「やわらかで傷つきやすい心」をどうやって守ったらいいか。
自分で自分を守るとはどういうことか。

著者の村上龍は、昔の友人と数十年ぶりに会ったときに、昔と変わらず話をできる人とそうでない人がいることから、その原因は何なのかを考えてこの本を書いたそうです。

自分を守るための「盾」をどのように手に入れるかを、キジマ君とコジマ君の2人の人生を通じて書いてあります。

大企業に入ったからって、幸せはつかめない、自分のやりたいことをすべきだ、好きなことなら、やりつづけることができる、という人がいます。本当にそうでしょうか。

話の展開が、ステレオタイプな感じがしないでもないですが、これを読んだ中高生がどのような感想を持つのか知りたいけれど、感想文として宿題にするのも・・・・・。

堅い本ではなく、絵本なので1時間もかからずに、簡単に読めます。

梅崎修『マンガに教わる仕事学』ちくま新書

2006年05月05日 | 仕事、労働
 著者は法政大学キャリアデザイン学部講師で、人事労務管理論、キャリアヒストリー研究を専攻しています。人事労務管理はなんとなくわかるが、キャリアヒストリーって何でしょうね。

著者紹介で「理想の働き方と職場を見つけるため日々全国を駆け回っている」とあります。「理想の働き方」「理想の職場」ってどんなものなのか、どこかにあるのか、自分で培っていくのか、この人の講義を受けてみたい気がします。

第1章 自分の仕事を探している若者に読んで欲しいマンガ
第2章 会社の現実にぶつかったら読みたいマンガ 
第3章 会社の人間関係が複雑になってきたら読みたいマンガ 
第4章 会社以外の生活を考えるために読みたいマンガ 
第5章 仕事人生を振り返るときに読みたいマンガ  
 とマンガをとおして仕事について、働くことについて著者の考えが述べられいます。

全部で40のマンガが紹介されていて、わかった気になってしまいそうです。
実際読まずに、批評だけでわかったつもりになってもいけませんが、仕事とマンガという切り口で1冊の本にしてしまうのはたいしたものです。

第1章で紹介されているマンガは、『SHOP自分』『ラーメン発見伝』『味いちもんめ』『サラリーマン金太郎』などで、批評を読んでからマンガを読むと、自分と異なる視点から読むことが出来るので、2倍楽しめると思います。

島本滋子『ルポ解雇』岩波新書

2006年04月30日 | 仕事、労働
フランスで、つい最近、学生や若者の大規模なデモがあり、フランスのドビルパン首相は若者雇用促進策「初期雇用契約」(CPE)の撤回を発表しました。
 いったん正社員で雇うと解雇しにくいため、企業はなかなか人を雇わない。そのため政府は、10%(日本は06年3月、4.1%)近い失業率の改善のため、企業に若者を雇う代わりに、3年後に理由を問われることなく解雇(クビ)にしてもいいという法律を作ったが、若者や学生は雇用の安定化を妨げるとして、この法律導入を反対するデモをしたというわけです。

 日本の実態はどうなのか。この本では、構造改革のホンネが現れた解雇ルール、
不当解雇の実態が語るモラルの崩壊、労働裁判に見る「法の下」の不平、
クビ切りさえも溶けていく、ILO条約はなぜ批准されない? 
 の5章構成で、目をつけられた社員がいかにクビにされていくか、会社側に対抗する労働者が民事裁判でいかに大変かなどが具体的に書かれています。

 経営者の側がどのような雇用形態を望んでいるのかが、オリックスの宮内会長のインタビューとして載っています。「鉛筆型の人事戦略」として「コア社員を鉛筆の芯のように細くする一方、その周りを取り巻く木の部分は成功報酬型の社員、さらにそのまわりにパートタイマーやアウトソーシングを置く、必要に応じて芯を囲む木の厚さを調整できるようにしておく。」
 正社員は一部の幹部社員であとは雇用の調整がしやすい、契約社員やパート、アルバイトにするというわけです。
 日本の失業率が4.1%といっても正社員が95%いるわけではありません。
どのような労働政策が望ましいのか。この本を読んだ後、各政党が具体的にどのような主張をしているか、ホームページで確認してみたらいいと思います。

働くということ2

2006年04月10日 | 仕事、労働
 私が就職活動をしていたときは、バブル経済の最中で、まさに「売り手市場」で、正社員で採用されるのが当たり前のような状況でした。これは、時代状況(景気変動でピークに向かっているときだった)のせいで、私たちが優秀だったからではありません。当然NEET(ニート)なんで言葉はありませんでした。

 当時の私たちのような努力をするだけでは近年は就職が厳しく、なかなか社会に踏み出せなくなっている人もいるようです。

 玄田有史『14歳からの仕事道(しごとみち)』理論社 は専門性を身につけて、やりたいことを仕事にして・・・・という主張からは一線を画しています。

「特別な個性や専門的な能力がなくても、ちゃんと人の話を聞いて、あいさつの基本さえできていれば、生きていけるんです。必ず誰かがどこかでチャンスをくれます。」と変に力まなくても何とかなるというメッセージを私たちに与えてくれます。

確かに私も社会人になるときは不安でいっぱいでした。自分に勤まるのだろうか、失敗したらどうしよう・・・実際続けてみると、よほどの専門性の高い仕事や特殊な仕事でない限り、普通のひとが、ある程度の根気をもってつづけると、それなりの仕事はできると思うようになってきています。

著者が禁句にしたほうがいいと勧める3つの言葉・・・・・「頑張る」「忙しい」「普通」です。(詳細は本で読んでね!)

働くことが不安な人、将来何になりたいか、どうしたらいいか悩んでいる人にお薦めの本です。

働くということ

2006年04月07日 | 仕事、労働
多くの人は、会社に雇われて、自分の労働力を売り、賃金を得ています。

会社とは何かについて、一定の知識を持つことは、就職活動をしている大学生には絶対必要です。そのために新しく、参考になり、やさしく書かれているのが以下の本です。

池上彰『会社のこと よくわからないまま社会人になった人へ』海竜社 

著者は、元NHKの週間子どもニュースのお父さん役だった記者です。わからせようとする記述は私にも参考になります。
昨年NHKを退職して、民放テレビに出たり、本を書いたりしています。でも、定年前になんで辞めてしまったのでしょう?


「良い会社」「悪い会社」「今後、間違いなく発展する会社を見極める方法はあるのか」「会社で働くとはどういうことか」「日本的な経営ってどんな経営」あたりの項目は高校生にも役に立つでしょう。法律の改正(商法)で、会社のしくみが今後若干かわります。「新会社法」についても書かれているので、便利です。

大学には、行きたいがやりたいことが見つからない人、働くのが不安な人も自分にとって興味があるところだけでも読んでみてください。 

NHK あしたをつかめ―平成若者仕事図鑑

2006年04月01日 | 仕事、労働
NHKのテレビ番組を本にしたものです。

職業紹介というとその道の一流の人(つまり、多くは歳をとってしまった成功者が多くなります)が取り上げられがちですが、これは、20代の若者を取材することで、「これから、がんばる」発展途上の人を取り上げていて、好感が持てます。

図書館に入れましたので、新学期が始まったら借りてください。テレビ番組も30分と短いので、ちょっと見るには適していると思います。

仕事によるやりがいは、人それぞれです。そんなことがわかる本(番組)です。

NHKモノでいうと、もう終わってしまった「プロジェクトX」もビデオやDVDで図書館に揃えています。これは、困難を克服して達成感を仕事上で味わった人たちの物語です。あれこれ、悩むなら、1日1本見てみましょう。

靴でビールを飲ませる上司 (D過労自殺事件)

2006年03月30日 | 仕事、労働
ここは、在校生だけでなく、就職活動前の卒業生や、社会人になったOB,OGに見てもらいたい。

 日本を代表する広告代理店D社の従業員が、過労によるうつ病で自殺(24歳)したため、その両親がD社を、安全配慮義務違反による損害賠償を求めた訴訟(民事訴訟)が載っています。

裁判の記録が載っているホームページhttp://homepage1.nifty.com/rouben/saiban.htm 
ですから、パソコンから読むことが可能です。

 D社は給料が高いことでも有名ですが、その勤務の実態はすさまじいものがあります。職場のリーダーとの飲み会でも、上司の靴でビールを飲まされ、飲まないと靴のかかとで殴打されることが度々あったようです。

会社の上司に全人格的に服従しないと、会社員を続けられないのかと思ってしまいます。担当した弁護士は、「このような企業の体質のもと無定量の長時間労働が展開されていく。しかし実は、このような企業体質こそ、日本の企業社会の一つの特質」だと言い切っています。

 身の回りに会社員をしている人がいたら、その会社の状況を聞いてみてください。自分が何をして働くか、どうやって稼いだらいいのか、考えるきっかけになるでしょう。