高校政経

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どうする老後 

2007年10月30日 | Weblog
上野千鶴子『おひとりさまの老後』法研 (367.7ウ)

 著者は女性学、ジェンダー研究で有名な社会学者。
どんなに大家族であっても死ぬときはひとりです。未婚の人の老後に焦点をあてて、1章 ようこそシングルライフへ 2章 どこでどう暮らすか 3章 だれとどうつきあうか 4章 お金はどうするか 5章 どんな介護を受けるか 6章 どんなふうに「終わる」か と具体的に書かれています。
 
 ある程度動ける状態のうちから、動けなくなり要介護状態になったときに、どのように介護を受けたらいいのか、具体的なアドバイス(報酬は正規料金で払い、チップやモノはあげないなど)が書かれています。中高生には遠い将来のことでしょうが、中年になると妙にリアルで、どうするか考えさせられます。
 一般に料金が高いほどサービスが良くなりますが、介護の領域に関してはそうとは言えないようです。
 少子高齢社会において「ひとり世帯」の問題はこれからもっと顕在化されてくるでしょう。社会学、福祉、医療、法律など多くの分野に関連している内容です。
福祉分野に進みたいと思わない人でも、軽い文体で書かれているので簡単に読めると思います。

なくせ 労災隠し

2007年10月30日 | 仕事、労働
 毎日新聞大阪本社労災隠取材班『なくせ 労災隠し』アットワークス (364.5ナ)

労働災害(勤務中、通勤途上の事故、けがなど)の際は、健康保険ではなく、労災保険が適用されるのが建前です。様々な理由で、労災申請を雇い主が認めなかったりすることがありますが、労働者の立場に立つと労災保険の適用があると様々なメリットがあります。
1 治療費の負担はゼロである。健康保険ならば3割が自己負担だが、労災ならばゼロである。
2 けがや病気で休むときは、健康保険では通常もらっている賃金の60%が「傷病手当金」として支給されるが、労災ならば80%の「休業補償+休業特別支給金」が支給される。支給期間は健康保険は1年半で打ち切られるが労災保険は症状固定まで支給され期間の制限はない。
3 後遺症が残った場合も、労災は手厚く保障され、介護費用も支給される。
4 労災保険は、本人死亡の際は、遺族数に応じて平均賃金の153~245日分の遺族年金が支給される。
5 労災認定されると(認定するのは労働基準監督署)、労働者としての身分保障がある。休業期間+30日は解雇できないことになる。

アルバイトも適用され、仕事中ならば自分の不注意による事故でも適用対象です。会社が未加入だからといってきても、労働基準監督署に申請すれば受け付けてもらえます。未加入の会社は2年間にさかのぼって徴収されることになり、そのもみ消しのために「見舞金」で解決したがるかもしれません。
 このような情報は教科書に載っているのが一番望ましいのですが、詳しくは載っていません。困ったときに備えるため知っておいて、自分のためだけでなく、弱い立場の人に教えてあげられるようになってほしいと思います。

徴兵制?

2007年10月15日 | 憲法・法律
 斎藤貴男『報道されない重大事』ちくま文庫(304 サ)

 著者はフリーのジャーナリストで、『ダカーポ』『東京新聞』などに掲載したものを文庫として、この本にまとめました。以下はこの本に載っていた有力?政治家の発言。
 2002年5月3日安倍晋三・当時副官房長官「核兵器の保有も使用も憲法違反ではない」(早稲田大学での講演)
 この安倍発言を受けて当時の福田康夫官房長官(現首相)は、非核三原則の見直しを示唆。
 石破茂・自民党政調副会長(現防衛大臣)「徴兵制は違憲ではない」と発言。サンデー毎日6月23日号で、国を守ることは国民の意に反した奴隷的苦役ではないからといっていたそうです。
 1980年の政府見解で徴兵制は、憲法13、18条違反であるとしているが、解釈の問題としていつひっくり返ってもおかしくない状況に今はあります。

昭和史

2007年10月02日 | Weblog
色川大吉『昭和史と天皇』岩波セミナーブックス36 (288.41イ)

 日本は時間軸が天皇と密接に関わっています。プロ野球の選手名鑑で以前、外国人選手の生年月日が昭和○○年という表記になっていて違和感を感じたことがあります。昭和史というくくりは日本独自のものとなります。昭和についても一時代前になり、現在の高校生もすべて平成生まれになりました。
 この本は、著者が昭和史を「戦争と平和」「生活革命」「天皇と民衆」の3つの主題に分けて話をしている 講演録です。
 天皇が、第2次世界大戦のときに、どのような役割を果たしたのか、統帥権をたてに軍部が政府の制御が効かない状態に対してどのような態度をとったか、側近の日記や独白録などの資料をもとに、「天皇は平和愛好者だった」と主張する御用学者?とは異なる立場で書かれています。戦前の天皇は統治権の総覧者で主権者です。
 戦争責任をどのように考えるかという点でも参考になる本です。

 広田弘毅については、近衛文麿と一緒に「右翼的な文官」とひとくくりで、『落日燃ゆ』で書かれていた戦争を防ぐ努力には触れられておらず、立場、視点により人物評が異なることがわかりました。違った立場、異なる視点で書かれたものを読むとどっちが正しいのか考えるようになると思います。